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一風変わったアイデアで勝負!
~猛暑×節電でも客を呼ぶ“ひんやりメニュー”~(3-1)

2011.5.24
今年の夏はかつてない猛暑と囁かれるなか、家庭で15%、オフィスでも25%の節電が求められる予定。冷房以外の手段で暑さを凌ぐために、客足を逃がさないために、どこの飲食店も必死だ。今回は夏に向けて各店が検討している「ひんやりメニュー」を探った。3回シリーズ。レポートは桜生マリコ。


前代未聞の人気メニュー、「冷やしかつ丼(1,500円・9月23日までの夏季限定)」。
(東京・渋谷「かつ吉 菩提樹」)

一風変わったアイデアで勝負!

 夏に美味しい冷たい料理はいろいろある。ソーメン、冷や麦、冷や奴、冷やし中華、冷やししゃぶしゃぶ、冷やしたぬき、冷やしきつね……。どれも日本の食文化として既に根づいているものばかり。調理をしている時点では熱かったものを、強引に冷やしてみたら意外にも美味しかった。というのが冷製メニュー誕生の発端かもしれない。いずれにせよ、これらはすべて「ひんやりメニュー」の“勝ち組”といえる。

 そして、近年になって急浮上してきているのが、冷やしラーメン、冷やしカレー、冷やしおでん、そして冷やしかつ丼だ。冷えた麺類を食べることには慣れているが、「熱々こそが美味しい」とされてきたかつ丼やカレーまでもが冷たくても美味しくいただけるものなのだろうか。半ば不安な気持ちを抱えながら、「冷やしかつ丼(1,500円)」が食べられるという渋谷の「かつ吉 菩提樹」へ訪れた。


都会の片隅に現れる、古き良き日本家屋。(東京・渋谷「かつ吉 菩提樹」)

 渋谷駅から徒歩3分。明治通り沿いに面しているかつ丼屋「かつ吉 菩提樹」は、昭和63年に開業。明治時代を彷彿とさせる建物が特徴だ。石畳の階段を降りると、天井が高く、広い店内へと案内される。テーブルの他、掘りごたつの座敷もあり、座席数は100席と多いが、平日のランチタイムや週末のディナータイムは混み合い、席が足りなくなる時も多いという。


お通しで出されるキャベツのてんこ盛り。(東京・渋谷「かつ吉 菩提樹」)


キムチなど三種類の漬物付き。(東京・渋谷「かつ吉 菩提樹」)

 「冷やしロースかつ丼」を頼むと、まずはお通しのキャベツのサラダ、三種類の漬物がサーブされ、最後にかつ丼が現れる。丼の上には通常あるはずの湯気もなく、不思議な感じがする。かつの上に乗っているのは、とろろにきゅうり、オクラ。さらにとろろの上には、みょうがと梅肉、刻んだ大葉が敷き詰められ、別皿にはすり下ろしたワサビが付く。かつの周囲には氷がトッピングされ、全体にかけ汁がたっぷりとかかっている状態だ。


ロースかつのまわりには氷、氷、氷……。(東京・渋谷「かつ吉 菩提樹」)

 レンゲも渡されるので、まずは出汁をすくって飲んでみる。美味しい! いわゆる私たちが知っている“かつ丼”の味つけでは決してない。けれでも、かつ丼のつゆにコンソメのような味が加わり、スープのような味わいで美味しい。鹿児島県産の鰹節や北海道産の昆布でとった特製の出汁らしい。冷やしかつ丼は、この出汁が決め手なんだと腑に落ちる。お茶漬けのように出汁にご飯を浸しながら食べるのだ。厚切りのロースかつは揚げたてのサクサク感があり、これまたジューシーで美味。出汁との相性も抜群だ。みょうがや梅肉、大場も妙に効いている。食べ終わる頃には、カラダもいい具合に涼しくなっている。今年で9年目を迎えるほど、夏の名物メニューとして定着しているのが頷ける味わいだ。


「ゆず風味つけめん(780円)」トッピングはチャーシュー、メンマ、ネギ、ナルト。
(東京・中目黒「三ツ矢堂製麺」)


麺の量の他、麺の温度が選べるというサービス。

 つけ麺好きの間では言わずと知れた専門店「三ツ矢堂製麺」では、麺の温度が選べるという。「熱もり・ぬめり落とし・冷やもり・氷締め」と4段階。硬めの茹で加減で、さらに氷水でギンギンに冷やした太麺はモチモチとして、引き締まった食感。艶やかな輝きを放っている。ツルツルとして滑らかな舌触りと喉越しのよさがあり、麺のしっかりとした歯応えは病みつきになるほど。つけ汁は定番の柚子風味。豚骨や鶏ガラをベースに魚介を加えた醤油味のスープに、強めに効かせた柚子が清涼感をプラス。甘みと酸味を感じるさっぱりとした味だ。ひとりで訪れる女性客が多いことも頷ける。「スープ割り」をお願いすると、スープ入りのポットを持ってきてくれる。


「三ツ矢堂製麺」(東京・中目黒)。もとは高田馬場にある「フジヤマ製麺」。

 「三ツ矢堂製麺」は2005年に中目黒にオープン以来、「つけ麺ブーム」の追い風もあり、瞬く間に関東近郊を中心に21店舗も展開するほど勢いがある店だ。ラーメン業界では、女性からの支持率が圧倒的に高いことでも有名。もとは高田馬場にある創業昭和32年の「フジヤマ製麺」という製麺所だったが、近所の人たちが、職人が食べている麺をみて、リクエストしたのが始まりだとか。高田馬場店も現在の本店中目黒店も、どこか昔ながらの食堂をイメージしたレトロな店内が特徴。広い店内は回転も早く、基本的に待つことは少ないが、夏場になると列ができるほどの盛況ぶりだ。


「ひんやり焼ド」が食べられる、ミスタードーナツ千駄木店。


「ひんやり焼ド」はすべて冷蔵ケースに入っている。(東京・千駄木「ミスタードーナツ」)


左/「デザートチョコ(189円)」。右/「もちもち紫イモ(168円)」は一番人気。
(東京・千駄木「ミスタードーナツ」)

 斬新なメニューと言えば5月25日(水)からミスタードーナツで「ひんやり焼ド」という新しいドーナツが登場する(店舗限定発売/関西では既に先行発売中)。これは、オーブンで焼いたドーナツを冷えた状態で食べるというもの。「もちもち紫イモ(168円)」はあんの種類によって5種類あり、ニンジン、カボチャ、トマトなどが練り込まれ、まるで大福のような食感で味わいも一風変わった和菓子のよう。「デザートチョコ(189円)」は、ブラウニーのようなしっとり感が特徴。関東では中野店ほか、計5店舗でしかオーダーできないメニューだ。


ヘルシーな野菜テイストが多数。「もちもちカボチャ(168円)」。(東京・千駄木「ミスタードーナツ」)

 猛暑×節電対策で考えられたアイデア勝負のメニューは、どれも斬新なものばかり。熱くて美味しい料理は、冷やしても美味しいとは限らない。そこには、冷やしても美味しく食べられるように研究開発された各店舗の長年の努力の蓄積が表れているのだ。「暑い日が続くと、冷やし中華が食べたくなる」。そんな夏の定番的存在になるためには、今年に限らず「ひんやりメニュー」として今後も根づくかどうかが重要。すべては、その味にかかっている。
 

【取材・執筆】 桜生 マリコ(さき まりこ) 2011年5月24日執筆