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暑い国やアジアの隣国では?
~猛暑×節電でも客を呼ぶ“ひんやりメニュー”~(3-2)

2011.5.25
今年の夏はかつてない猛暑と囁かれるなか、家庭で15%、オフィスでも25%の節電が求められる予定。冷房以外の手段で暑さを凌ぐために、客足を逃がさないために、どこの飲食店も必死だ。今回は夏に向けて各店が検討している「ひんやりメニュー」を探った。3回シリーズ。レポートは桜生マリコ。


もはや夏の風物詩?「棒々鶏涼麺(1,575円)」。(東京・銀座「秦淮春」)

暑い国やアジアの隣国では?

 そもそも冷たいものを食べるという文化は、日本独特と言われている。氷水など衛生上の問題もあるが、中国では冷たい料理は体に悪いという漢方医学に基づいた考えや、罪人に食べさせるものという意識が昔から根づいている。だが、私たち日本人は夏になると、“冷やし中華”を食べたいという衝動にかられ、店側も「冷やし中華、始めました」と告知するほど。中国でも昔は涼麺を冷たい水でしめていたなど、その発祥には諸説あるが、とにかく日本人の心を確実に掴んでいるメニューへと成長している。


夏の看板メニュー、「棒々鶏涼麺(1,575円)」。(東京・銀座「秦淮春」)

 高級中華料理店がひしめき合う大人の街、ここ銀座で人気を呼んでいるのが、「秦淮春」の「棒々鶏涼麺(1,575円)」。“冷やし中華”と異なるのは、具材が棒々鶏という点。ボリュームたっぷりの鶏肉に自家製のゴマだれのソースをかけ、シャキシャキとした野菜や麺と絡ませる。中華料理では氷を浮かべるほどの冷たい麺は存在しないため、麺自体は茹でた麺を氷で洗った程度の温度だ。だが濃厚なゴマだれが食欲を刺激し、夏場にはハマってしまう味だ。


濃厚なゴマだれが食欲をそそる。(東京・銀座「秦淮春」)


家族連れが多いのが中華店の特徴。(東京・銀座「秦淮春」)

 銀座の中華料理店となると、やはり客層は40代、50代以上がメイン。円卓を囲んだ大家族のグループが多く、その他は男女問わずビジネスマンなど。店の奥には個室もあり、接待用に使われることが多い。女性客のテーブルを見渡すと、どこも必ずといっていいほど「棒々鶏涼麺」を注文している。なかでも2人組だと小皿を幾つもオーダーするというより、各自で「棒々鶏涼麺」を頼み、取り分けずに食べている人たちも多い。まだ5月という夏を先取る季節にもかかわらず、既に涼しいメニューを求めている人も多いようだ。


築45年になる町工場を改装し、現地の食堂を再現。(東京・中目黒「五星鶏飯 ファイブスターカフェ」)


趣のある看板が目印。(東京・中目黒「五星鶏飯 ファイブスターカフェ」)


工場の時の古い内装を残しているため、異国情緒溢れる雰囲気。(東京・中目黒「五星鶏飯 ファイブスターカフェ」)


可愛い雑貨が並ぶカウンター。(東京・中目黒「五星鶏飯 ファイブスターカフェ」)

 中華系住民が多い常夏の都市、シンガポールでも基本的には冷たい料理はなく、室温の料理が多い。名物料理「海南チキンライス」のご飯も熱々ではなく、常温。シンガポール大使館お墨付きの名店、「五星鶏飯 ファイブスターカフェ」の「海南チキンライス(880円)」も、チキンもご飯も絶妙な茹で加減。


「海南チキンライス(880円)」はランチの一番人気。(東京・中目黒「五星鶏飯 ファイブスターカフェ」)

 中国の海南島発祥の茹で鶏とその茹で汁で炊いたジャスミンライス、鶏スープがセットになっている。ジンジャーソース、チリソース、ブラックソイソースという3種類のソースを絡めると絶品。これは熱くても食べにくく、調度いい味わいになるために調整。鶏肉は完全に火が通ったら素早く冷水につけて室温に保つなど、手間のかかる事前準備があるという。

 次に注目したいのは暑い時には熱いものを食べ、寒い時には冷たいものを食べるという習慣がある隣国、韓国。冬に冷麺、夏にサムゲタンを食べるのが通例だそう。だが最近では冷麺をはじめ、「冷たいサムギョプサル(冷しゃぶサラダ)」や「冷たいチキン」、「冷たいスンドゥヴ」、「コングクス(豆乳麺)」などの現地でも冷製メニューを出す店も増えて来たという。なかでも日本で圧倒的な人気を誇るのが、冷麺だ。

 「デニーズ」の夏季限定メニューのひとつ、「さっぱりカペリーニ冷麺風(680円)」は昨年、圧倒的な人気を呼んだ。今年は6月14日から登場する予定だが、喉ごしのいい極細パスタと、冷たいスープが絶妙にマッチするメニューだ。麺の素材にそば粉を使っていないため、どちらかというと盛岡冷麺風。さっぱりとした中にも甘みと深いコクが美味しいと評判だ。またセットにすると「ミニ牛カルビ丼(セット価格980円)」も付く。肉汁が口の中でとろけ、ジューシーな焼肉丼との相性も抜群。暑くて食欲のない日も、箸が進んでしまう一品だ。


「さっぱりカペリーニ冷麺風とミニ牛カルビ丼(セット980円)」

 「生ハムとバジルの冷たいカペリーニ(830円)」は、5月24日から登場する。爽やかな香りのバジルソースにほんのりジンジャー風味が効いて、すっきりとした味わい。スペイン産生ハムの程よい塩気が加わって、食欲がそそられるメニュー。白ワインなどとの相性もいい。暑い日に食べたい冷製パスタだ。


「生ハムとバジルの冷たいカペリーニ(830円)」

 今年の「デニーズ」の夏季限定メニューには、もうひとつ注目したい冷麺がある。一昨年人気を博し、昨年はメニューにはなかった。だが客側からのリクエストが殺到し、今年再び登場することになった「牛焼肉とキムチのビビン麺(830円)」だ。


「牛焼肉とキムチのビビン麺(830円)」

 ビビン麺は、冷麺のスープなし版。本場韓国でも冷麺、ビビンバに並びポピュラーなメニューだ。細切りの野菜にさまざまな具材を添えることで、野菜のシャキッとした歯応えが引き立つ。そこにコチュジャンの風味が合わさり、少し辛口の味わいだ。ひと皿で肉だけでなく、野菜もしっかりとれるため、栄養バランスを重視しがちな女性客にもヒット。ファミリーレストランでは1日10食オーダーが入るとヒットと言われるなか、メニュー数も多い「デニーズ」で爆発的に売れたという実績がある。


2階建ての大きくて存在感のある建物。(東京・恵比寿「ニャー・ベトナム ベトナム館」)

 では、暑い国の「ひんやりメニュー」はどうだろう。年中南国のベトナムでは、「ブン・チャー」と呼ばれる首都ハノイの郷土料理が人気だという。日本のベトナム料理屋「ニャー・ベトナム ベトナム館」でも、6月の夏季限定メニューとして登場予定だ(7月限定メニューは「フォー」の予定)。


甘辛のつけダレは病みつきになる味。(東京・恵比寿「ニャー・ベトナム ベトナム館」)

 見た目は、つけ麺のよう。「ブン・チャー」はブンというから作った白く細い麺のこと。米を砕き粉にして、水に浸けて発酵させ、それを練って熱湯で押し出して作るという。そこに「チャー」と呼ばれる肉団子やカリカリに揚げた春巻き、レタスなどが付き、つけダレに全てを混ぜ合わせていただくというメニューだ。タレには青パパイヤやニンジンが入っていて、酸味、甘みなどを感じるベトナム独特の味わい。食べているうちに香草の味がクセになってくるようだ。ベトナムではランチメニューとして人気で、フォーのように専門店がある。さっぱりとした味わい、かつ米でできた麺でヘルシー。日本でもフォーの専門店「コム・フォー」がOLさんを中心に行列ができるようになったように、オフィス街のランチとして人気を呼びそうだ。

 生温いビールなんて論外。ギンギンに冷やしたものを食べたいという文化は、日本独特だ。だが夏になるとアジアンテイストが注目を集める。その秘訣は香辛料を使ったスパイシーな味つけだけでなく、食事の“温度”にあるのかもしれない。冷たすぎず、熱すぎず、美味しく感じる温度が調整されてあるのだ。今後も“冷やし中華”や“盛岡冷麺”のように、日本の食文化に根づく「アジアのひんやりメニュー」が現れそうな予感だ。

 

【取材・執筆】 桜生 マリコ(さき まりこ) 2011年5月25日執筆