・賑わう“サマータイム営業”の条件。
サマータイムを導入する企業を見込み、6月からあちこちの飲食店でハッピーアワーの時間が繰り上げられている。今まで17時スタートだったのが、16時に時間変更されているのだ。
外がまだ明るい時間から盛り上がる店内。(東京・銀座)
いち早く営業時間を前倒ししたカフェ「プロント」。(東京・銀座)
全国展開をしているカフェ「プロント」もいち早く敏感に反応した店のひとつ。首都圏を中心に営業開始時間を30分早め、午前6時30に設定。夕方から始まるバーの開始時間も通常の17時30から、16時に前倒ししているのだ。
いち早く営業時間を前倒ししたカフェ「プロント」。
「プロント」店内。
店の前には、営業時間変更の看板も。(東京・新橋)
ハッピーアワーの看板につられる客は多い。(東京・八重洲)
ハッピーアワーの看板につられる客は多い。(東京・八重洲)
東京・八重洲のバーではハッピーアワーの時間を16時からに変更。17時には早くも店が仕事終わりのサラリーマンでごった返す。ビール、もしくはワイン一杯に加えて“本日のブルスケッテ”というおつまみが付いて1,000円。このハッピーアワーメニューが人気を呼んでいるのは確実。「サマータイムでお役様の流れが変わっているのを感じています。そこでハッピーアワーの時間帯を広げることにしました」というのが飲食店側の感触だ。
“アフター4”の争奪戦に名乗りを上げた、東京ミッドタウン。
各店舗には、ハッピーアワーの看板が。
小遣いの減っているサラリーマンには有り難いメニューがずらり。
ボリューム満点の唐揚げがセットになったお買い得メニュー。
前倒しのハッピーアワーに勝機がある、と施設全体でキャンペーンに出たのが、「東京ミッドタウン」。5月31日から7月15日まで、ほぼ8割の店舗においてハッピーアワーを拡大。500円でワンドリンク+おつまみ、という六本木ではありえなかった破格っぷりが話題だ。そのひとつ、スペインバル「Ba-tsu」では、ハートランドのビールにボリューム満点の鶏の唐揚げが付いて500円。17時には顔を赤くしているサラリーマンが増えたのも頷ける。
激安看板に誘われ、ついつい吸い込まれていくという。
看板があちこちに。
飲食店の「際コーポレーション」は、都内の居酒屋数店でランチとディナー間の休みをなくし、早めに帰宅するサラリーマンを取り込む作戦に出た。また、「モスバーガー」では、全国のおよそ50店舗で、朝の営業開始時間を前倒し。サマータイム導入で出社が早くなったサラリーマンたちの朝食ニーズを掴もうとしている。
16時すぎの東京・大手町の風景。
早めの入店で割引される「早割」キャンペーンも。
HUBでは、50種類以上のカクテルが半額で、190円~。
そんな中、新橋、銀座、大手町、神田とサラリーマンが行き交う街で人の流れを調査した。繁華街では、客足の少ない夕方に販促キャンペーンを手がける飲食店も少なくない。16時すぎという時間帯には呼び込みも多い。サマータイムを導入した企業が限られているのもあり、客足はちらほら。もともと17時からスタートしていた飲食店も多く、通常営業をしている店も多い。
節電を理由に営業時間を少なくした店もある。
逆にハッピーアワー制度をやめてしまう店もあった。「私たちは6月からハッピーアワーをやめました。サマータイムが導入されることで、夕方の早い時間帯にも自然と飲みに繰り出すサラリーマンが増えると思います。客足が鈍い冬とは違う」とは某飲食店の店員のコメント。自宅にまっすぐ帰る人は減ることを見込んだ、強気の営業姿勢だ。
16時にはガランとしたオフィスビルの食堂街。(東京・大手町)
16時からのハッピーアワーを実施しても、客は誰ひとり入らず。(東京・恵比寿)
全面的にハッピーアワーを中止してしまうことで客足が一気に減ることを懸念している人もいる。そこでは、ハッピーアワーの曜日を限定していたり、時間短縮をしていたりする。ただ、客足が伸びがちな木曜日や金曜日などは、ハッピーアワーを実施する店が減っているも現状だ。「震災直後は、どこも自粛ムードでお客さんが一気に減っていました。今はその時の穴埋めをするようなつもりで、ハッピーアワーをやめています」というのが正直なところらしい。
駅が近く、仕事帰りに立ち寄りやすいバーは大賑わい。(東京・八重洲)
17時近くになれば、既に店を後にする客も。(東京・八重洲)
サマータイム営業を行うことで、一気に客足を伸ばしている店は、やはりサマータイム導入した大手企業が隣接している、もしくは500~600メートル以内、はたまた駅直結のビルにあるなど、仕事帰りに立ち寄り安いという立地的な条件が左右しているようだ。大手企業だと、例えばひとつの企業で500~1000人に近い人数が16時すぎに終業。その影響が大きい。飲みに行くにははばかれるほど外は明るいものの、そのまま食事に出かける時間帯でもなく、同僚と一杯ひっかける、という流れが多いようだ。そのため、客単価はおよそ2000円前後。ちょうどハッピーアワーを実施している時間帯の売り上げが伸びているという。サマータイム営業が本格的に根づくのか。今後も企業の動向から目が離せない。