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今はや ~今流行っているお店~
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小さな驚きの連続が心地よさを創り出すおしゃれエリアの隠れ家。
「なるきよ」
(東京・渋谷/和風居酒屋)

第24回 2011年6月8日

今流行っている店は、どんな店?なぜ流行っているのか?実際に営業中に店を訪れ検証。「次に流行る店」=“次はや”に対して“今はや”。流行りの店の秘密をレポート!


新鮮な魚料理と豊富な日本酒・焼酎が人気

 料理が美味しくて、とにかく流行っている。お酒好きの人たちや常連の間では立ち飲み居酒屋として親しまれている。そんな評判を耳にし、週前半の早い時間に予約をしてみた。電話での応対は居酒屋特有の威勢のよいトーンではなく、丁寧で落ち着いた感じである。開店直後の18時なら予約を取らなくても大丈夫かというこちらの質問に、座敷で座って飲むなら取った方がよいと丁寧に勧めてくれた。


青山学院大学西門側の路地を入ったところにある。知らなければ通り過ぎてしまいそう。開店直後、従業員が熱心に窓ガラスを拭いていた。

 店に入るとすぐに予約した座敷席へ案内される。「よろしかったら使ってください」と勧められたのが、なんと座椅子。そしてこの日は若干肌寒かったのだが、ひざ掛けも勧めてくれた。奥に座った連れの男性には勧めなかったので、外気を感じる土間側に座る人用かまたは女性向けサービスのようだ。居酒屋“らしからぬ”サービス力に早速心をつかまれそうになる。


カフェのようなおしゃれなひざ掛け。座椅子は正座の苦手な人にはありがたい。


開店直後ガラガラだった座敷、実はすべて19時半以降の予約が入っていた。


7-8名用のテーブル席。少人数の落ち着いた宴席向き。

 常連に人気だというカウンターは入ってすぐ左手、調理場をぐるっと囲むようにしてある。立ち方にもよるが、10名ほどでいっぱいになりそうだ。座敷は4テーブル・12-14名ほどのスペースで、さらにその奥に7-8名用のテーブル席がある。気分や用途に応じて使い分けできる造りになっている。


お通しは茄子の味噌炒め煮。素材は新鮮、甘辛の程良い味付け。


お通しの正体は熊本特産の大長茄子。九州地方の物産に力を入れている。

 お酒のメニューを頼むと二番目の驚きが。「料理メニューはありますが、お酒のメニューはありません。日本酒、焼酎芋・麦・米、ワイン、ビール・・・種類を言って下さればお持ちします」とのこと。座椅子に引き続き、小さく驚きの声を上げてしまった。これはお酒の知識が豊富で、お客の好みを見抜く目のある店員がいなければ出来ないサービス、下手をすれば客の信頼を失ってしまいかねない。値段が不透明であることに不信感を覚える客もいるはずだ。しかし口コミではこの店のお酒セレクトは非常に評判がよい。お客は店員を信頼しているのだ。信頼関係の下、お店にいる間中「次はどんなお酒を勧めてくれるのかな」とワクワクした気持ちで過ごすのはかなり楽しいひと時だ。


麦焼酎のお湯割りを注文、出て来たのは「ふしぎ屋」。柔らかい口あたりで1杯目にふさわしい。

 そして料理のメニューを持ってきてもらい、三度びっくり。噂には聞いていたが“巻物”のメニュー表なのだ。冒頭に日付が入っており、お造り、本日のお勧め、お食事まで、毎日書き下ろしている様子。もちろん定番メニューも少なくないだろうが、何しろ立ち飲み常連客の多い店、“本日のお勧め”や日付入りメニューで当日感を演出するのは粋な心遣いだ。


テーブルから垂れてもなお続く!大ぶりの踊るような字が心を浮き立たせてくれる。


五月ではなく“皐月”なのも古風な味わい。

 まずはお造りと本日のお勧めから、いわしの刺身と地ダコポンズを注文。すぐにいわしが運ばれて来た。きりっと冷え肉厚、脂ののった非常に美味しい刺身だ。生ダコも歯ごたえよく美味しい。添えられたゆず胡椒は香りが高く、市販のものより一段レベルが高いのではと感じた。

 店員の注文の取り方、料理のサーブの仕方、素材や食べ方の説明など、まだ早い時間帯だからかもしれないが、接客は終始落ち着いていて丁寧だ。スタッフ数は、厨房3名ホール3名ほどだが、どの店員に質問しても、マニュアル通りの話し方ではなくあくまで自分の言葉で、きちんとお客の個性を見て答えてくれる。無理して会話しているのではなく、お客と交流するのが好きだという雰囲気が感じられる。立ち飲みについて質問すると、利用者は常連ばかりとは限らずふらっと来てさっと飲んで帰る人も多いから、ぜひ気兼ねせずに利用してほしいとにこやかに勧められた。


いわしのお造り。脂がのってツヤツヤ。900円


地ダコはゆず胡椒でいただく。こちらも新鮮。1100円


座敷側に飾られている一升瓶はディスプレイ用、本物はカウンターにずらり。

 お造りの後は、モツ煮と谷中生姜の豚肉巻きを注文。モツ煮はスムーズに出てきたが、谷中生姜は出て来るまでやや時間がかかり、またなぜか揚げたてではなかった。完全に冷たくなっていたわけではなく、ちょっとしたオペレーションミスかもしれない。料理としては、普通は生でいただく谷中生姜をフリットにし、しかも初夏の訪れを知らせる谷中生姜と、タラの芽などの春の山菜が一度に楽しめるおもしろい趣向で、盛り付けの美しさも含め再び小さな驚きを感じた。


モツ煮は名古屋の土手鍋風ビジュアル、どことなくビーフシチュー的なコクと旨みがある。800円


風味の違う塩二種類で味わう。器も、立体的な盛り付けも非常に美しい。900円。


2杯目に芋焼酎を頼むと、「宝山」で有名な鹿児島・西酒造の「白豊印」が。軽い口当たりを好む筆者の好みに気づいてのセレクトか。

 ここまでいろいろ頼んで来て、これは間違いないと感じたのが、店主の器へのこだわりである。同じ形の器でよいはずのお酒ですら、次の杯は違う形・色の器で供される。ちょっとした取り皿、小分け用の器まで、ひとつとして同じものは出てこない。しかも微妙な質感が完全に統一されており、趣味の良さ、レベルの高さを感じる。料理も飲み物も、使用する器の質感で味が変わるもの。お造りも料理も、何を食べても美味しくレベルの高さを感じたが、器へのこだわりも一役買っているかもしれない。窯元などぜひ聞きたかったが、丁度店が混んで来てしまい、情報を得ることが出来なかった。


小皿に至るまで気を抜かず、こだわりの器が並ぶ。


予約客の中には近隣で働く外国人の姿も。


この日、カウンターでは外国人の女性二人連れが立ち飲み。珍しくない光景だそうだ。

 19時半を回ると座敷が混んできた。ここで座椅子の謎が判明。表参道という場所柄、お客はファッション・アパレル関係に携わる人が多く、外国人客は珍しくないそうだ。来日したファッションモデル含め、打ち上げや接待として利用されることもあり、「なるきよ」を体験した人が帰国して仕事仲間に伝え、それを聞いた人が新たにやってくる、というサイクルが成立しているらしい。「僕らは英語が話せないんですが、料理を出すパターンも決まっているので、なんとかなってます(笑)」と気さくに説明してくれた。かっこいい言い方をするなら、“料理で会話”が出来てしまうのだろう。遠くから見ていた限りもめている様子も全くなかったので、話せないとはいえ片言くらいはOKなのではないか。

BGMはジャズ、クラブ系などさまざま、かつどんどん曲調が変わる。ROKYOKUと書かれたCDも。


和風の居酒屋に似つかわしくない?充実の音楽。

 店の内装は100%和風の落ち着いた造りだが、店内を流れるBGMは非常にポップで、通路などにサブカル風ポスターが貼ってあったり、フランス映画など文化系イベントのちらしが置いてあったりと、アートな雰囲気漂う部分もちらほら。店員たちのヘアスタイルは坊主または長髪をひとつに結んで、流行りの大ぶり黒縁めがねをかけたりとユニフォーム姿ながらおしゃれ感がある(ちなみにEXILE風のイケメンぞろい)。そう、なんといってもこの店は表参道にあるのだ。街に合った店の佇まい・雰囲気は重要である。


締めのお食事、ちゃんぽん。九州のちゃんぽんよりも甘さ控えめのさっぱり味。具材も多く非常においしい。1300円。


お会計を待っている間にさりげなく緑茶のサービス。食事中に供された柔らかいお茶と違い、きりっと濃い目。

 カウンター席ならば店長や他スタッフともっと会話ができ、九州の食材・料理にこだわる理由、食材の調達ルート、器やお酒の話などいろいろ聞けたに違いない。今回は敢えての座敷席で、常連客的ではなく一般客目線でお店を利用してみた。座椅子やひざ掛けの心遣い、「次は何が来るだろう」と期待させるお酒のサービス方法、巻物状のメニュー、趣味の良い器の数々、一見も常連も分け隔てない心地よい接客。

 料理やお酒が美味しいことはもちろん、その他の点で小さな工夫・気遣いがいくつも重なり、「また来よう」と確実に背中を押してくれる。“とにかく流行っている”所以は一見地味なところに隠されていた。

 20時を過ぎると後は深夜まで、座敷もカウンターも混みっぱなしだそうだが、閉店時間は「だいたい1時くらい。お客さん次第」。これから夏に向けて、店に入りきらないお客さんは入り口の階段に座ってのんびり飲むこともあるそうだ。細かな心遣いだけでなく、美味しいお酒と料理を愛する人々らしい、おおらかな心遣いも魅力だ。

■店舗情報
なるきよ
渋谷区渋谷2-7-14中村ビル B1F
電話:03-5485-2223
営業時間:18:00~翌0:30
不定休

【取材・執筆】 小長光 あかね(こながみつ あかね) 2011年6月7日執筆


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