第16回 2004年2月7日 | |
97年にオープンした「オザミ・デ・ヴァン」は常連客に愛され、お客様の笑顔が絶えることのない店だ。それはオーナーでソムリエの丸山氏がしっかりとしたコンセプトを注ぎ続けてきた当然の結果である。 | |
|
「オザミ・デ・ヴァン」 車が通れない細い路地に、3階建て60席の小さなレストランがある。銀座の空気が流れ込む、路地裏のフレンチレストラン。かつて「ザガットサーベイ」にはこう書かれた。「気軽」に訪れられるが「狭い店内」には「ワインクレージーだらけ」で、「リーズナブル」なワインと食事を楽しんでいる、と。 3階はワインを楽しみたい人間が辿り着くスペースで、天窓から夜空を見上げることができる。2階はワインセラーの奥に席がしつらえてあり、カップルでの食事に適した空間だ。1階はグループ客がくつろげる空間で、キッチンの活気を目にしながらボトルワインを選ぶことができる。 わが編集部は酒の銘柄で店を選ぶくらい酒好きが集まっている。しかしワインを飲みたくなったらなにも言わずに銀座に行く。そこに「オザミ・デ・ヴァン」があるからだ。
|
||||||||
|
||||||||
|
||||||||
フランスのワイナリーが期待するオーナー丸山氏 オザミ・デ・ヴァン---ワインの友へ 上の言葉は若き頃の丸山氏がフランスで友人と別れるときに交わした有名な言葉だ。オザミグループのオーナーである丸山氏はフランスワインを豊富にそろえたフレンチレストランを経営、2万本を優に越えるワインを貯蔵している。 以前、丸山氏のシャンパン・テイスティングに同席したことがある。色、第一香・第二香、味と順に表現していくのだが、精緻な言葉を重ね、黄金色のシャンパンを透き通してワイナリーの歴史を語る姿勢にはただ聞き惚れていた。言葉で広がっていく世界が、1杯のグラスシャンパンとして完成しているという事実を目の当たりにすると、一口含んだだけで感動してしまった。 |
|||||
|
|||||
フランスを愛し、ワインを愛する人間の周囲には同じような人間が集まってくる。丸山氏はかつてパリのフレンチレストランで働き、ブルゴーニュでワイナリーを巡り歩いた。丸山氏が「オザミ・デ・ヴァン」店長に選んだのは石井さん。石井さんは箱根の「オーベルジュ・オー・ミラド」で4年間ソムリエとして働いた後、フランスに渡って自転車でのワイナリー巡りをした。帰国してからは渡仏を応援してくれた丸山氏の下で、店を切り盛りしている。そんな石井さんに「普段どんなお酒を飲みますか?」と聞いてみた。 「普段飲むのは、ブルゴーニュのワインのみです」 お酒を造っている人間の中には、自分の蔵の酒しか飲まない人間がいる。舌がぶれるのを嫌っているのだ。私の知っているブラウマイスター(ビール醸造最高責任者)は伝統的なビール以外には全く興味がなく、口にすることもない。
料理は素材の味わいがしっかりと感じられる品々。「業者や生産者をよく知ることと素材の安全性、なにより素材をいじりすぎない」ことにこだわっているので、生産者からも信頼されている。 ワインを飲みに行ったのにどうしても頼んでしまう料理といえば、「吉田さん家のジューシー豚のロースト」だ。文句のつけようがない。女性も手づかみで骨周りの肉をこそげて食べているほどに、人気のある料理である。 平均客単価は8000円。わが編集部が毎月のように通う、ワインをゆっくりと楽しむことができる「オザミ・デ・ヴァン」は今夜も銀座でワイン好きが訪れるのを待ちかまえている。 |
|||||||||||||||
|
|||
2004年2月7日 取材 執筆 山越 龍二 | |||
|
|||