第23回 2004年3月27日 | |
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東京駅から36分、新宿駅から42分、電車1本で辿り着く戸塚駅に「和Dining櫓(やぐら)」がオープンした。黒い板張りの外観はまさにやぐらを連想する。木の扉を開けると竹の葉が揺れて、光を浴びる真白い暖簾をくぐると桜の活け花が目に飛び込んできた。 出迎えていただいたのは若さと誠実さを感じる三留貴彦店長。上がりかまちで靴を脱いでから、ディナーがオープンする前の昼下がりに、2階建てのお店を案内してもらった。 「全体で82席、グループのお客様は最大で20名様まで個室で対応させていただいています」 1階には炭火を前にしたカウンター席とグループ席があり、オープンキッチンの板前さんと会話を楽しむことも出来る空間になっている。木板の階段が足に優しい。2階に上がるとすべて個室になっており、廊下とは襖で仕切られている。壁から懐かしい香りが・・・。 「壁には麦芽を練り込んであり、香りが出るようにしました」
「こちらの個室をご予約いただいた方にはテラスを開放しています」とのこと。暖かい日にはテーブルを出して夜風の中で食事を楽しむことも出来るそうだ。 |
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お料理を紹介していただきながら、料理長の榎本明伸さんにお話を伺った。榎本さんは大手町の料亭や鎌倉の指月庵、サンルートホテルの和食部門と和食の1本道を歩いてきた方である。 「味付けのしっかりとした料理を用意させていただいています」 ご本人が焼酎好きということもあり、お酒の肴であることを念頭に置いてメニューを考えられている。焼酎が目当てのお客様が多いそうで、その点を意識しているそうだ。 「基本は基本です。その上で今の飲食スタイルに合う肴をつくりたいと思っています」 季節ごとにメニューの改訂をし、見た目にも楽しめる料理を作り上げる腕前はさすが料亭で腕を磨いてきただけのことはある。お皿がたくさんあることを指摘したら、 「たとえば隣りのお客様と同じ料理を頼まれたら、お皿だけは別のものをご用意して、お互いに気を遣わなくていいようにしています」 とのこと。手間暇をかけたご馳走には心遣いも含まれている。 素材の鮮度にこだわっているということで、あまり手を加えず、素材の持ち味がよく出ている料理を食べさせていただいた。
榎本料理長の話す通りどれもしっかりとした味付けの料理だ。それぞれに合わせてお酒を選ぶのも楽しみだろう。三留店長がお店に立っている日は、自らその日に入荷したおすすめや料理に合うお酒を選んでくれるそうだ。 |
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「月の中」「天使の誘惑」「萬膳」「侍士の門」「十四代 蘭引酒」・・・これらの焼酎は欠品なしの定番ということなのだが、これだけの品揃えを定番にするために総支配人の小俣さんは九州を歩き回ったという。自身が九州出身だからこそ実現できたラインナップだが、定番は定番、「メニューに載らないお酒にも力を入れいてる」ので、通ってその時々の今しか飲めない1本を探してみるのも乙であろう。 「山形に来ないと売らないよ」と言われると「今から行きます」と神奈川から山形まで買い付けに車を飛ばし、「鬼兜」も仕入れた。気鋭の蔵のアンテナショップと見紛うくらいの熱の入れように、お客様の定着率は高いという。
焼酎と和食のディナーで平均客単価は5000円。日替わりで旬のお通しも用意されている。さらには味が濃く香りも強い九州限定のたばこ「BB SLUGGER」が用意してあり、焼酎好きの常連客が好んで吸っていくという。 戸塚の駅中にも「櫓」の屋号を冠したお店を出店するということで、今後は利用層がもっと広がりそうだ。店長、料理長、そして総支配人という3人の歩んできた道が交わった「和Dining櫓」は通い続けたいお店の1軒であった。 |
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2004年3月27日 取材・執筆 山越 龍二 | ||
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