第39回 2004年7月18日 | |
ご存知のとおり、この夏、実に108年ぶりにオリンピックがギリシャに帰ってくる。それに伴いあちこちでギリシャ熱が高まっている。中でもギリシャワインは意外に高品質、且つリーズナブルな価格で注目だ。ワインはフランスやイタリアだけではない、ギリシャワインの魅力に迫ってみたいと思う。 | |
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現在ギリシャに於ける3大ワイナリーは「ブタ−リ社」「クルタキス社」「ツァンタリ社」と言われていて、日本ではそれぞれサントリー、メルシャン、アサヒビールが輸入している。 いずれも今年になって急激に輸入量を増やしており、サントリーは前年比8倍、メルシャンは実に10倍以上の売上を見込んでいるという。これにはアテネオリンピック開催の期間に合わせてホテルの飲食店などで「ギリシャフェア」を開催したり、どちらかというと普段は地味な存在のギリシャ料理店が連日満席御礼となっている背景がある。 更にユーロ2004でのギリシャチームの優勝も拍車をかけ今後益々の盛況が予想される。 |
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軽やかで爽やか、ギリシャのカジュアルワイン そもそもギリシャワインの歴史は古く、紀元前5000年頃にオリエントに発したワイン造りは紀元前4000年頃ギリシャに伝えられた、とされている。だとするとイタリアやフランスより約4000年も古いことになる。 アシルティコ、マブロダフネ、コツィファリ、、、何やら呪文のような言葉であるが、いずれもギリシャの地元ブドウ品種である。「ギリシャのブドウ品種を数えるより海岸の砂を数えた方が容易である」と古代ローマの詩人に言わしめたギリシャの固有品種だけで300種類、まさに地元品種のデパートなのである。 そんな歴史あるギリシャワインだが、現在は30種類前後の地元品種から単一、もしくはブレンドして造られるカジュアルなものが多い。先に挙げた大手ワイナリーなどが、近年の醸造技術の向上もあり、上質で価格もリーズナブルなワインを大量生産出来るようになった。 地域により使われるブドウ品種も気候も異なるので一概には言えないが、大まかな特徴として、白ワインは爽やかな柑橘系の酸味が口の中に広がりボディは軽く、かなり冷たく冷やして飲んだほうが良いタイプが多い。赤ワインは糖が多めだが酸もしっかりあり、力強いが疲れない。どちらも食事の邪魔をせず気軽に楽しめるだろう。(ただし、ギリシャは赤白共に多くの甘口ワインも造っているので、そちらは食中酒に必ずしも向いているものばかりではないのでご注意願いたい) |
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一方で、世代交代した若い作り手たちや新規参入者がカベルネやメルロー、シャルドネといったインターナショナルなブドウを単一、もしくは地元品種とブレンドし、フレンチオークなどのバリック(小樽)で熟成させた高級ワインを造る、いわゆる「ブティックワイナリー」が増えてきたのも事実である。 1981年にEUのワイン法が導入され現在のギリシャワインは以下の4つのカテゴリーに分類されている。 ・O.P.A.P(フランスでいうA.O.C) ・O.P.E(秀逸な甘口ワイン) ・トピコス・イノス(ヴァン・ド・ペイ) ・エピトラペジオス(テーブルワイン) この中でもトピコス・イノスはO.P.A.Pのように地域や品種、栽培、収穫量、醸造などの規制をそれほど厳しく受けないため、より自由な発想でブレンドし、各々のワイナリーが独特のフレーバーに仕上げることが出来るのである。
ということは明らかにデイリーユースではない。消費者はハレの日に、まだ未知数のワインを選んで冒険するよりボルドーやブルゴーニュなどの老舗ブランドを選んだ方が安心ということになるのだろう。ただし、最前線のソムリエの評価は日に日に高まってきている。 先日行われたギリシャワインセミナー(ギリシャ大使館主催)では、第3回全日本最優秀ソムリエコンクール優勝者の阿部誠氏がこの4月にギリシャに訪れた際の印象は「ブティックワイナリーの造るワインの想像以上の実力にビックリした」と語った。 またいくつかのフレンチレストランでもそのような「SUPER GREECE」をサンプルで取り寄せていて、今後オンリストされる可能性は高い。まだ業界内ではあるが注目度はかなり大きいと言えよう。今後の戦略如何によっては大化けするかもしれない。 |
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ソムリエのオリンピックもギリシャで開催 「第11回世界最優秀ソムリエコンクールギリシャ大会」がまだオリンピック熱の冷めやらない10月アテネとサントリーニ島で行われる。この大会に、日本からは前出した第3回全日本最優秀ソムリエコンクール優勝者の阿部誠氏(41)が出場する。 阿部氏はホテル西洋銀座に入社後、田崎真也ワインサロン支配人、同じく田崎氏経営のレストランSなどを経て、現在コンクールに向けてラストスパートをかけている。3年に1度のこの大会は1995年には東京で行われ、このとき優勝した田崎真也氏を一躍スターダムにのし上げた。 その後1998年オーストリア大会、2000年カナダ大会(この年はミレニアムということでイレギュラー、日本代表の石田博氏が3位入賞)と続き今回になる。お気づきのように本来なら2003年に開催されるはずであった。 まず2003年8月フィラデルフィアで行われるはずが中止、10月にカリフォルニアで仕切りなおすもまた中止。同時多発テロのためと説明されているが、ASI(国際ソムリエ協会)のお家騒動という声もチラホラ。オリンピックにあやかろうと思ったのかどうかはわからないがようやく今年、ギリシャで行われることに相成ったわけである。とばっちりを喰らったのは阿部氏である。 選手は出場が決まると、次の大会から逆算してコンクール対策に励むはずであり、阿部氏の場合も2002年4月に出場権を獲得後、翌年の8月に照準を合わせていたはずである。それが1年以上ずれこんだのだ。 周囲が気を揉む中、当のご本人は「その分語学の勉強が出来てよかった」(筆記試験もテイスティングもサービス実技もすべてフランス語か英語で行わなければいけない。ちなみに阿部氏は英語で受けるそうだ)とサラリ。そんな柔軟な性格を最大限に発揮してこの大会、有終の美を飾っていただきたいものである。 今回の大会に際し、日本ソムリエ協会では「応援ギリシャ研修ツアー」を企画している。興味がおありの方は参加してみてはいかがだろうか。
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アテネオリンピック人気にあやかってリーズナブルなカジュアル・ギリシャワインが続々日本に入ってきている。「今だからこそギリシャワインを最大限楽しもう!」というテーマの下、数種類のワインを用意し、銀座「ヴァンパイアカフェ」に乗り込んだ。 ギリシャワインをどんな料理と合わせるか? 地中海料理とは、オリーブオイル、ニンニク、トマトを多用する料理であるがギリシャ料理も例外ではない。ここではギリシャの一般家庭で大量に消費されている、3つのアイテムをご紹介する。 1.オレガノ ハーブの一種。ギリシャ人曰く「日本におけるしょう油のようなもの」。とにかく何にでもふりかける。特にトマトとの相性はバツグン。 2.チーズ ギリシャは世界で1、2を争うほどのチーズ消費国だ。中でも「フェタ」という羊乳100%のチーズはギリシャ料理に欠かせない。色は白く食感はモッツァレッラチーズのよう、味はヨーグルトのような酸味を感じる。さいの目切りになったフェタのオリーブオイル漬の瓶詰めで売られていることが多いが専門店などでは塊も扱っている。 3.ジャジキ ヨーグルトときゅうりのみじん切り、ニンニク、オリーブオイル、ワインビネガー、塩を混ぜ合わせたもの。ギリシャでは一品料理として供されることもあるが、濃度を調節すればサラダのドレッシング、オムレツのトッピング、スナックのディップなど応用範囲は広い。 次はこれらを使った料理とギリシャワインのマリアージュ、の一例である。 独創的なメニューが持ち味の「ヴァンパイアカフェ」で、竹内シェフによる「既存メニューに一工夫手を加えてギリシャワインを引き立てるレシピ」を教えていただいた。 〜料理とワインのマリアージュ〜
これらのギリシャワインをすべて揃えている酒販店はおそらくないはずだ。それぞれメーカーか酒販店に問い合わせて、購入していただくのが確実である。盛夏の8月12日に開幕するアテネオリンピック。よく冷やしたギリシャワインを用意しての観戦は忘れがたい体験になるのではないだろうか。
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取材・執筆 小山田貴子 2004年7月18日 | ||
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