溜池山王駅を降りて地上に出ると一際目立つ店構えが目に留まる。切長型の提灯が整然と並び、「箱庭」の文字が浮かび上がっている。地下1階にある「CUBE
HAKONIWA」のエントランスである。
「CUBE HAKONIWA」は空間デザイン・プロデュースや運営で実績を重ねている株式会社キューブの肝煎りの店舗であり、今後FC展開することを視野に入れて店作りが行われたそうだ。特徴的な演出が数々あり、180席ある広い店内はエリア毎にイメージが違う。マッサージチェアが並ぶテーブル席、お風呂が併設された特別室(特別室は個室料として3000円/室、入浴料として2,000円/名様)等々あり、カウンター席もある。
同店の業態は和風ダイニングバーである。必ずしも新しくない業態を「なぜ、今」なのか広報の中東さんに伺ったところ、目新しさではなく「本格感で差別化している」からこそ流行に左右されずに出店したそうだ。
同店ではグランドメニューを年4回改定、常に催している「郷土巡味」のメニューについては1ヶ月半に1回改定しているそうだ。この「郷土巡味」なるものは「毎回ひとつの県を取り上げ」「長い間受け継がれてきた歴史ある郷土料理」を1ヶ月半の間提供するというもので、現在は阿波(徳島県)の郷土料理を楽しむことが出来る。阿波ならではのメニューとして「でこまわし」「冷やしそば米雑炊」などがあるのだが、このように郷土料理を1月半毎に入れ替えるのは大変な作業だ。
同店料理長の大西英亜さんは毎回現地に赴き、飲食店だけではなく一般家庭などにもお邪魔して様々な食のシーンを体験して郷土料理のメニューを取り決めているのだそうだ。大西さんは和食の道で10年以上の経験を積んでからキューブに入社、渋谷「re'
cue」白金台「CUBE SEASONS」を経て「CUBE HAKONIWA」料理長に就任した。大西料理長がどのように各地の郷土料理を取り入れているのかは同店で配られている「箱庭通信」に触れられており、いかにメニュー作りに力を入れているかが分かる。
店長の沖倉亨(おきくらとおる)さんはイタリアンレストランの店長補佐等を経て04年4月にキューブに入社、ソムリエの資格を持ち「CUBE
HAKONIWA」の全国展開を目標にお店に立っている。「すべてのお客様に驚き・感動・喜びを与え」たいとのこと。
同店の主要な客層は30歳代であり、女性の方が多い。人気の高いドリンクの梅酒は8種類用意してあり、女性の注文率が高いそうだ。最近は女性の方がお酒を飲む機会が多いようで、女性が選べるお酒を用意していることが来店客層に反映されいていると言えそうだ。
そしてなにより同社が得意とするデザイン・プロデュースが最大限発揮されていることも「CUBE HAKONIWA」の人気を高める作用をしている。同店は株式会社キューブ代表の原田康弘氏が企画・プロデュース・デザインを手掛けて、「移動式の個室」を備えている。
これは現在特許出願中であり、個室を移動することによって 4名席を8名席に、さらには個室をすべて片側に寄せることにより大型パーティに適したスペースを作り出すことも出来るのだ。
株式会社キューブとして初のFC展開を視野に入れた同店は「(180席、200坪より)小さな空間でもインテリアパーツの殆どが可動式なのでスペースを作りやすく、使い勝手がよい」(広報中東さん)。現在いくつかのFC案件を検討中だということで、パイロットショップとしても機能している赤坂の本店がどのように「進化」するのか楽しみでもある。
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(左上より)「でこまわし」「超辛パリパリキムチサラダ」「冷やしそば米雑炊」「揚げナスたたきオクラ冷鉢」
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現在の「郷土巡味 阿波」は8月31日(火)まで催されている。先に挙げた「でこまわし」「冷やしそば米雑炊」だけでなく、阿波の地酒もラインナップにある。更に同店では「おでん」と「屋台焼」の夜店屋台メニューがあり、ファーストオーダーで温かくておいしい料理がすぐに提供される。締めには不動の人気メニュー「郷土めし」がおすすめ。炊きあがるまでに30分くらいかかるので、その間にもう1杯飲もうか、おでんをつまもうか、悩ましい時間である。
株式会社キューブは現在、飲食店舗以外の様々な案件のプロデュースに携わっているそうである。同社がどのように手腕を発揮するのか、次の展開が待ち望まれる。
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