平日でも18時を過ぎるとすでに満席、予約にいたっては2週間先まで埋まっている。オープン以来、満席にならなかった日は一日もないという人気店が「蔵人厨ねのひ」(くろうどくりやねのひ)だ。
先月竣工したばかりの丸の内地区の新しいランドマーク「丸の内オアゾ」の6階、東京駅を見下ろすことのできるガラス張りのエントラスを正面に臨むエスカレータで昇っていくと目の前に日本酒の酒樽と「ねのひ」の暖簾が現れる。ふぅっと吸い込まれてしまいそうに不思議と安心感を与えるたたずまいだ。
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「OLD NEW、古いものは新しい。」支配人の海老原氏が同店を語る時に使った言葉だ。「昔からあるものが今の人には新鮮であると感じるように、奇をてらうのではなく、店内はもちろんお出しする肴は昔から食べられてきた料理。素材を大切にした肴で日本酒「ねのひ」を味わっていただきたい。」と続ける。
1665年に醸造業としての起業から340年あまりの伝統を持つ蔵元「盛田」、その直営店ならではの食に込められた愛情はやはり深い。
赤だしの味噌汁の味噌はもちろん、醤油も盛田製を使用する。豆一粒からの製品作り、その全てに携わることで生まれる自信と味、そして安心を届けるのが同店だ。こだわりの調味料を厨人の技で家庭とは違う料理に仕上げている。
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若く活気のあるキッチンを取り仕切るのは、小澤料理長。
「きんぴらごぼうを如何に美味しくするか」など基本を徹底的に叩き込まれながら腕を磨いて来た。先日、料理長の師匠が同店を訪れ「素晴らしい」と言い残して帰っていたというエピソードもあるお墨付きの味である。
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蔵元「盛田」直送であるだけに盛田ブランドの中でもさらに厳選されたものだけが同店には並ぶ。なかでも是非おすすめしたいのが「超特撰大吟醸原酒」(一合1890円)。この店でしか味わえない原酒は、愛好家にはもちろんのこと、日本酒が苦手だという女性にも飲みやすいと好評。
日本酒は温度を逃がさず雑味をとりより味をひきたてるスズの器で提供され、見た目にも満足させてくれる。この規模の店舗では同店以外でお目にかかれない逸品だ。
また、焼酎がお好みなら麦焼酎「六花」(りっか)がお薦めだ。
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酒蔵をイメージさせる店内、オープンキッチンに威勢良く動き回る厨人が印象的なフロアに85席が用意されており、さらにオアゾでは珍しくガラス張りの壁面からは外の景色が望め、開放感がある中でゆっくりと食事を楽しむことができる。
カウンターにはアフリカから取り寄せた樹齢1000年のブビンガーという木が使われ独特のアクセントを与えている。このブビンガー現地にももうないらしく、次の出店の時はどうしようかと海老原支配人は冗談で笑っていた。
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蔵人厨ねのひの歴史は、昭和44年銀座にソニーの創始者盛田昭夫氏が実家の酒を味わってもらう為に開店した「ねのひ寮」に始まる。より多くの方に「ねのひ」を知っていただくために「ねのひ寮」を閉め、日本の中心である東京、さらに人が東西南北から集まってくる東京駅のそばにオープンキッチンを携え、開かれた空間として出現した「蔵人厨ねのひ」。多くの人々を楽しませて、中心丸の内、東京駅から日本全国へ逆にファンを広げていくことだろう。
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