第60回 2004年12月11日 |
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BYOが海外初出店、「えん」がついにニューヨーク進出 「EN」 |
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スシがアメリカで初めて花開いたのは1970年代のこと。それ以降、スシ・レストランは全米中に増えていき、2000年頃からは第二次スシ・ブームが到来している。今回のブームではスシ市場の裾野がデリやスーパーにも総菜として並ぶまでに広がり、また韓国人や中国人が日本食レストランの経営に参入し安価なスシを提供、またスシを主体にした高級かつモダンな日本食レストランが次々に登場していることが特徴として挙げられる。今やアメリカのスター・シェフたちのお気に入りのレストランにも真っ先に日本食レストランの名前が挙がり、2004年版ザガット誌(NY市)に取り上げられているだけでも日本食レストランの数は89軒。アメリカン、イタリアン、フレンチに次ぐキュイジーヌとなっている。最高得点28のノブを筆頭にトップ50に中には7軒の日本食レストランがランキングされている。 ニューヨークのレストラン業界で現在、最も勢いがあるのは日本食である。ゲイシャ、リンゴ、マツリ、メグ、オノと大型店舗が次々に誕生。日本からの進出はフードスコープ社のメグに次ぎ、えんが構想から4年という歳月を経て2004年の秋に開業した。約300万ドルを投資したえんは(株)ビー・ワイ・オー(代表・楊文慶氏)による海外初店舗である。「立地としてウエスト・ビレッジを選んだのは、ミートマーケットやトライベッカといった流行の地区から少し外れていることで独自性を保てると考えた。日本の店舗との違いはレストランにラウンジとバーを付加したこと」とえんNYの共同経営者である楊レイカ氏は言う。アルコール販売は利益率が高いこと、アメリカ人は飲んでからテーブルにつくという習慣があり、ニューヨークではレストランにラウンジとバーという三位一体型が当たり前となっている。ドリンクは人気の日本酒とポスト日本酒としてブームに火がつきそうな焼酎をライナップ、さらにシソや柚子といった日本の素材を混ぜたカクテルも充実させた。 えんには他の日本食レストランにない特徴が2つある。ひとつは日本から同社の常務取締役で総料理長の中野耕治氏ら調理スタッフ4人をNYに呼び、日本の店舗でのメニューをほぼそのままにNYで提供している。つまりアメリカ人向けに味を修正していないということだ。次にスシを主力商品にしていないこと。ただしまだまだ一般的なアメリカ人にとってはスシ、天ぷら以外の日本食には馴染みが薄い。営業利益の点からはスシをメニューから外すことはリスクが大きいことから、日本の店舗にはない握り寿司を加えてある。キッチンで調理される日本料理はこれから流行ると私は見ているが、その先駆けとなったのがこのえんだ。ただ多くの日本料理は醤油と出汁を基本にしているため、フレーバー(風味)の点でバラエティに欠けるという弱点がある。とくにニューヨークのようなありとあらゆる国の料理が百花繚乱している場所では、フレーバーのバリエーションに人々の舌は慣れ親しんでいる。その点ではえんの料理はある程度のフュージョンになっていかないと客に飽きられるのではとも考えれらる。 人気のメニューは海老しんじょう(10ドル)、銀だらの粕漬け(14ドル)、豚の角煮(16ドル)、フォアグラと煮た大根に酢味噌ソース(18ドル)など。メニューの構成は日本では焼き物、煮物となっているが、それをアメリカ人にわかりやすくするために「スモール」、「ラージ」としてポーションによって区別し、また手作りの豆腐と湯葉、釜飯スタイルのライス・ポット、ロール寿司、刺身、スシ(セットメニューのみ)といったカテゴリーに分けている。 取材・執筆 撮影 |
海老しんじょう
(写真上・10ドル) フォアグラと煮た大根に酢味噌ソース
(18ドル) 豚の角煮(16ドル)
オープンキッチン
メインダイニング
楊レイカ氏
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取材・執筆 福家成子, Photo by Miguel Cardona 2004年12月11日 |
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