大森駅から徒歩五分、繁華街から少し離れたところに「ジンギスカン倶楽部」はオープンした。羊肉は、ダイエット効果も期待できることから健康志向の女性を中心に人気のある食材。各地にお洒落なインテリアの店ができ女性客で賑わっているが、ジンギスカン倶楽部はファミリー層をターゲットにしている。

「ジンギスカン倶楽部は、地域のお客様に楽しんでいただくお店です。ジンギスカンに限らず今流行りの焼肉店は、暗くて狭くてとても家族で楽しく食事ができるような雰囲気ではありません。当店はもっとざっくばらんに食事してもらいたいですね。」
ジンギスカン倶楽部を運営する株式会社オフィスジェーの田中代表取締役はそう語る。1998年には同じ大森に焼肉店「ホルモン倶楽部 波浪苑」をオープンさせ、すでにファミリー層を中心に繁盛店に成長している。ゆっくりとくつろいで長く店内にいてもらうよう店内は明るく、通路は広くとっているのが愛される理由だと田中氏は分析している。
両店とも平日は、やはりサラリーマンの利用が多いが土日は増え続ける近隣のマンションの住人などのファミリーで店内は埋め尽くされる。昔ながらの地域内の結束が強い大森では、地域に貢献することを忘れては大森で飲食店はやっていけない。大森で生まれ育った田中は、地元で遊ぶ楽しさを今大森で暮らす人達に伝えたいと考えている。

「苦労したのは、肉とタレ。それだけ。」
今回のオープンの直接のきっかけは、系列の焼肉店のお客様から「ジンギスカンが食べたい」と言われたことだった。運良く場所もいいところがあった偶然もあり発案から2週間でオープンにこぎ付けたというから驚きだ。
その間の2週間で質の良い肉を捜すために数多くの問屋を廻ったが、一定したクオリティーの羊肉を提供できる所が見つけられずに、結局は独自のルートを開拓することによって目当ての羊肉を仕入れるに至った。また、タレに関しても「焼肉店の経験から肉に合うタレのノウハウはあった」が、東京の人間である氏自身の舌を信じずに北海道や東北出身の協力者の味見による試作を続けた末、ニンニクを弱めにしてリンゴを多めにすることによりまろやかな絶妙の味に仕上がった。それ以外のハード面などには、他にも事業を持つ氏には何の苦労もなかったと笑いながら答えてくれた。

人気のメニューは「生上ラム肉」（1100円）。「生ラム肉」（880円）よりもジューシーで香りがまろやかなのが喜ばれる理由。また、系列の焼肉店で大量に作られる3種類のキムチ（白菜、大根、小松菜）380円もコクのある辛さで飽きがこない味だ。そして、特製ゴマドレッシングで食べるサラダも人気がある。
17時からオープンして、オープン2週間で客単価は「まだまだ落ち着かない」という。20坪、32席の店内はシンプルで広く感じるようなレイアウトがされておりゆとりがある。

現在の中心客層はなんと40代前後。「毎日来る方もいるんですよ」と田中氏は言うが、お客さんから教わったところによると、ジンギスカン好きは情報の伝達が早いらしく新しくオープンした店はすぐに見つけられるネットワークのようなものがあるとのこと。事実、ジンギスカン倶楽部も年末12月26日にオープンして間もない上に、1月は試運転期間として広報活動は一切していないのに遠くからも来店する方が少なくない。恐るべきマニアの力だ。

現在、店には料理長の三浦氏と田中氏が中心となって店を切盛りしている。
「私がまずお店に入ってからでないと、伝えられないものがやっぱりあるんです。」氏の人材教育への考え方が垣間見れる発言だ。命令するのではく信用し、責任を持たせて仕事をしてもらうことでスタッフは自然と育っていくものだと言うのが持論。焼肉店や他の事業も同じようにやっており、それぞれが順調な展開をしている。
今後の田中氏の後を受けたジンギスカン倶楽部はどのようなお店になるのかとの質問に氏は、「女の子だけのスタッフで元気に盛り上がりたいね。」と答えた。
大森で華やかにジンギスカンを食す、そんな楽しみ方ができるのも近そうだ。