大阪に本社を置く千房商事株式会社が、2004年10月25日、東京に新たに出店したのが「千房 有楽町ビックカメラ支店」だ。同店はその名の通りに「ビックカメラ有楽町店」が地下2階から6階まで入居するビルの6階に位置する。ビックカメラからの要請があり、出店が決まったという。
「ほとんどのお客様が『千房』目的で来店されており、ビックカメラのお客が流れてくることは少ないようです。」と話すのは、同店スーパーバイザーの岡田氏。ビックカメラとしても、自身のお客を流すのではなく、「千房」のお客がビックカメラへ流れるような相乗効果を期待し、店自体に集客能力がある飲食店を望んでいたということのようだ。開店から約4ヶ月、平日は予約客でほぼ満席というのだから「千房」の出店は成功と言える。
「千房」は、平成6年の恵比寿ガーデンプレイスでの成功を皮切りに、同8年には池袋店、12年には銀座コリドー店と着実に出店を続けている。大阪企業が東京で発展していくことに何か苦労はなかったのだろうか。
「大阪では、『千房』は地域密着のお好み焼店という位置づけです。なので、大阪から出張などで東京にいらしたお客様が、『千房』の名前を見つけて来店されると『なんでこんなに気取ってるんだ?』とびっくりされることがありました。」写真をご覧いただくと分かるが、インテリアは黒を基調にして、照明も明るすぎない程度に抑えられいる。さらに、ジャズのBGMにより一段とアダルトな雰囲気に仕上がっているのが、東京の『千房』なのだ。岡田氏は続ける「大阪で昭和53年〜平成元年まで放送されていた深夜のラジオ番組に『ぬかるみの世界』というのがあります。笑福亭鶴瓶さんと新野新さんがパーソナリティーを務める人気番組でしたが、その番組のスポンサーが『千房』だったんです。なので、30代の方々には『千房』というと地元大阪のお好み焼店というイメージが根強い。東京出店の際に、高級感のある店作りにしましたので、大阪からのお客様には『これは、千房じゃない』なんて言われることもありましたね。」と岡田氏は笑う。1973年に食通の店が立並ぶ大阪の千日前から始まった「千房」は、大阪文化とともに発展してきた由緒正しいお好み焼店として広く知られているということだろう。
さて、ゆっくりと鉄板焼が楽しめるお店として繁盛する同店であるが、56席を有し、客単価は4000円で目標月商である1500万円をクリアする。客層は、20代後半からのビジネスマンが中心。特にランチの時間帯には、ほぼ100%ビジネスマンとなっている。ホットペッパーなどの販促の効果でカップル客が多く、男女比はほぼ同数となっているのも特徴だ。
ランチでは、「焼そばセット」、「お好み焼セット」といった1000円前後のメニューが中心だが、ディナータイムでは「特選和牛サーロインステーキ」(100g・3000円より)などが人気で、客単価に大幅な違いが出る。また、同店は、鉄板を設置したカウンター席も用意されている。「目の前で調理すると大変喜ばれます」と料理人の小林氏が言うように、ジュージューと肉が焼かれていく様子をライブで見ながら食することができ、カップルには人気の席ということだ。その他、「エビマヨ」(800円)、豚肉、イカ、牛肉、小海老が入ったミックス山芋焼(1300円)は、大和芋と長芋による絶妙なハーモニーが楽しめるとして人気メニューとなっている。
「大阪では知らない人はいない」という「千房」であるが、東京では4店目にあたる「有楽町ビックカメラ支店」の成功に続き、2005年6月下旬には横浜SOGOへの出店が決定している。また、今後は新宿など都心部を中心に活発な展開。大阪同様に東京でもその名を定着させようと、「千房」の侵攻は静かに、そして着実に進んでいるようだ。
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