男女比2:8と女性に圧倒的な人気を誇るフレンチレストランが「東京ジョンブル」だ。 同店は、地上28階・約100メートルの高さに位置し、東京駅からお台場にかけて東京を一面に見渡すことができる。特に360度光が溢れる夜景は圧巻だ。
2003年8月にリニューアルをした際には、もっと夜景を楽しんでもらおうと、以前は上野方面に向いていたラウンジを銀座、お台場方面が見える位置に移設した。同時に、インテリアをシックなものからややカジュアルにシフトさせ、メニューのコンセプトと同期。気軽に楽しむことができる女性専用のコースメニュー「淑女晩餐」(4042円)を用意。4月は「桜」など、テーマを毎月変えることで確実にリピーターを増やしている。年齢層は20代後半から40代を設定しているが、ランチには20代前半のグループ客も多く、大手町のOLをターゲットに幅広い年齢層に受け入れられている。
「東京ジョンブル」は、丸ノ内ホテルの直営レストランの1つで、丸ノ内ホテル総料理長の山口仁八郎氏が指揮をとる。山口氏は、数々のレストランで経験を積み、平成9年より丸ノ内ホテルに入社後、11年には「東京ジョンブル」料理長を経て、16年8月に丸ノ内ホテル総料理長に就任した40歳の気鋭だ。
氏のヒット作の1つに「ハヤシライス」がある。「私が就任する以前は、メニューに『ハヤシライス』があったそうで、それを復活させたいとのことでした。開発の話を聞いた時は、フランス料理なのに、なんで『ハヤシライス』なのかと正直驚きました」、「開発に当たっては、フレンチということを意識しましたので、他のレストランのハヤシライスを食べることは一切しませんでした。また、どういったスパイス、具材が使われているのかを徹底的に調べるためにレトルトのハヤシライスソースまでを研究して、食材を厳選しました。結局、ソースの味が落ち着くまでに半年から1年を費やして試行錯誤しましたが、自慢の一品になりました」と山口氏は語る。
こうして出来上がった「ハヤシライス」(2625円)は、「これはハヤシライスじゃない」と誉められるほどのものになり、現在でも人気メニュー。近隣企業のランチミーティングなどでは、コースメニューではなく「ハヤシライス」がオーダーされることも多く、ミーティングを和ませる役割も担っているようだ。
会議の他、同店はブライダル需要にも対応できようレイアウト変更が可能となっており、披露宴・パーティーまで行うことができるのも魅力。メインダイニング、ラウンジ、バンケットルーム、個室とあらゆる利用のされ方に対応する他、丸ノ内ホテル直営だけあり、ホテル並のサービスも好評だ。
さて、長きに渡ってフランス料理に携わってきた氏は、お客様のトレンドの変化をこう分析している。
「中国野菜、ハーブなど最近ではスーパーでも多くの種類が手に入るようになったからでしょうか、野菜に関して、非常に多くの知識を持っている方が増えています。同時に、そのままサラダで食べるようになったほうれん草などに対しては、味に非常にシビアになっています。しかし、健康・美容への関心が高まっているとはいえ、味の嗜好はあっさり味から、肉料理などの『こってり系』を好まれるようになっているのは、面白い傾向ですね。それと、ワインもカジュアルに飲まれるようになりましたね」と話す。日々、現場にいる山口氏ならではの分析だ。
通常の食事だけでなく、会議やブライダルまで幅広く対応できるよう、さまざまなメニュー開発に迫られるが、前述のように山口氏の的確な分析と判断で好調に運営されている。
今後、この地区には外資系ホテルの進出が相次ぎ予定されている。2006年「マンダリン・オリエンタル」(日本橋)、2007年には「ザ・ペニンシュラ」(丸の内)が開業を予定、当然レストランにも力を入れてくることは間違いなく、競争も激しくなるだろう。
山口氏は語る「以前に比べて、お客様は1つのお店に足繁く通うことは少なくなっていると思います。これだけ新しいお店が開店していますから、さまざまなお店を回遊する楽しみがあることは良いことだと思います。しかし、最終的にはお客様を大切に考えて料理を作るお店に帰ってくるのは、間違いありません。私は、食材を料理させてもらう喜びを持って、料理には真摯な態度でのぞみ、お客様に喜んでいただくよう厨房に立ち続けます」と締めくくってくれた。
志しを高く持った料理人を育てることも楽しみと話す山口氏、今後の活躍にも期待したい。
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