株式会社デュアルウェーブが、恵比寿に立飲み店「Q」(きゅー)をオープンさせた。およそ1年前よりスタートしたこのプロジェクト、ロケーションにおいては、恵比寿から西麻布を視野に入れたと言うが、2005年8月4日にJR恵比寿駅東口より徒歩3分の距離、人目につきにくい隠れ家のような場所にオープン。
設計は、アパレル系ブティックや、プロダクトデザインも手掛ける有限会社エルマー代表の津野大氏。そのシンプルだが印象的なファサードは、恵比寿の裏路地にあっては注目を集めるに充分な存在感を持つ。大きな開口部が無いうえに、雑誌「LIVINGDESIGN」のエディトリアルデザインなども行う、ダイナマイトブラザーズシンジケートの野口孝仁氏による「Q」のロゴも、ファサード上部に控えめに輝くのみで、外からはどのような店なのかを判断することが難しいだろう。
「通常の立飲み店ですと、扉を大きく開けて店の中をアピールし、来店を誘いますが、当店では扉を開けることはありませんし、引き戸ではなく、わざわざ開き戸を採用しています。夜になると外から見て、光の向こう側にかろうじて飲食店であることが判る程度。初めてのお客様には多少の緊張感を持たせてしまいますが、思い切ってドアを引いていただくと、賑やかなバールが現れるという演出になっています」と店長の山田氏は話す。
同店のコンセプトの1つである、「気取りもなく、なんとなく居心地の良い、立飲み空間」の実現には、デュアルウェーブ社から4人のスタッフが選ばれ、運営にあたる。四角い店内には、コの字型のカウンターが設置され、調理などの全てがカウンター内で行われる。お客様とスタッフが常に近い距離にあるために、コミュニケーションに長け、賑やかな雰囲気を創り出せるスキルを持つスタッフが必要とされたという。
「スタイリッシュなデザインですが、接客や作業にまでスタイリッシュさは求められていません。いらっしゃったお客様にはリラックスして楽しんでいただくように心掛けています」と山田氏は話す。
現在、来店客層は20代半ばから40代のビジネスマンが中心、男女比は5:5となっている。ピークタイムは21時だが、周辺エリアには深夜に営業する競合店が少なく、今後は深夜の来店も期待される。
一般にバールスタイルの立飲み店は、和風立飲み店に比べ滞在時間が短いのが特徴とされているが、同店ではワインをボトルでオーダーするお客様もあり、比較的滞在時間が長いという。
料理に関しては、デュアルウェーブ社の総料理である柴田氏がコーディネートし、フレンチテイストの小皿料理をリーズナブルな値段で提供しているほか、メニューにはないものもフレキシブルに対応する。また、自家製ベーコンの燻製などは無料で振舞われるというのも嬉しい。
生ビールは、「アサヒ」、「キリン」、「サッポロ」、「サントリー」の4社が揃った生ビールが、海外から取り寄せられたディスペンサーで提供される。
「お客様は『生ビール』とオーダーされますが、4社揃えていると伝えるとやはり驚かれます。銘柄指定でオーダーされる方は、リピーターの方だと判る嬉しさがありますし、オペレーションにミスがないように、オーダー毎に銘柄を声に出しますから、店が活気づくという利点もありますね」と山田氏は話す。
生ビールに次いでは、サングリアに人気があるのも同店の特徴。特に白ワインのサングリアは、飲み口のすっきりとして女性に好評とのことだ。
昨年より都内で出店が続く立飲み・バール業態だが、「Q」の登場で1つの転機を迎えたのではないだろうか。今後出店する立飲み店は、ハードとソフトの両面、店舗のグランドデザインにおいて、同店のリアクションになる可能性が充分にある。今後の立飲み店の行方を占う上でも、同店の展開を楽しみしたい。 |