東京・門前仲町に、6月6日オープンした「深川 山憲」は、飲食専門の求人情報誌「グルメキャリー」を発行する株式会社ジェイオフィス東京のプロデュース店。業態開発の手法をはじめ意欲的な試みが多くされた店である。
ジェイオフィス東京では、「グルメキャリー」発行だけではなく、培われた飲食関連情報を活かし、飲食店総合支援事業部門としてネオサポート事業部を有する。そのネオサポート事業部が新たに立ち上げたブランドが、町の魚屋を飲食店に業態転換し再生をはかる「鱗」。そして、実店舗第一弾が「深川
山憲」になる。
「全国に2万件あると言われている町場の魚屋は、時代の波に揉まれて非常に苦しい状況が続いています。しかし、飲食店をプロデュースする側から見ると好条件が揃っているんですね。物件は持っていますし、仕入れのルートも確立されている。そして魚介類に対する技術と知識は誰よりもあるわけです。経営者は50代から上の団塊の世代ですから、これから高度な調理技術を身につけてもらうのは困難ですが、活気のある魚屋のイメージそのままに、活きのいい魚介類をダイナミックに食べてもらう店作りにはぴったりなんです」
ネオサポート事業部の浜倉好宣氏は、さらにつなぐ。
「このプロジェクトは廃業を考えている魚屋の業態変更、また、団塊世代の方々に退職後、再度活き活きと輝ける雇用環境を創造するという、社会的意義のあるものにしたいのです。地域活性化にも役に立てるビジネスモデルですので、今後、この「鱗」業態モデルを全国の必要とされる方々へ販売提供していきます」。
スタッフ採用に関しては、やはり「グルメキャリー」のバックアップはあるが、飲食店経験者ではなく、団塊世代の漁師、魚屋、仲卸業経験者を積極的に採用している。それは一般の「海鮮居酒屋」にはない「魚屋」特有の活気やダイナミックさ、そしてその世代が持つ個性(人間味)が業態コンセプトの主軸となっているからだ。
来店客層の幅も広く、近郊住民を中心に、平日は近隣ビジネスマン・OL。金曜日には各方面からの目的来店者も増えるなど、着実に知名度を上げている。
グループ客ばかりではなく、一人客同士のコミュニケーションも盛んで、下町らしい賑わいを見せている。
サッポロラガー、キンミヤ焼酎、そしてホイスなど年配客には懐かしいと思わせるようなドリンクのラインナップにすることで、その懐かしさを語る世代と、そのうんちくを聞く若い世代とのコミュニケーションを促進させるのも面白い。
料理においては、「漁師のまかない飯」をコンセプトにする。メインは七輪を使った焼き物。オーダーした食材をお客様自身が自分で焼くスタイルだ。サイドメニューでは、「にゃんこ飯」(300円)や、「名物セコ汁」(400円)などワイルドなものが人気。FD比は5:5と、ドリンクの比率が高いのは、このようなメニュー構成によるものだろう。
「この店ではスタッフは全員週休2日を実現しています。体力的にも時間的にも厳しい労働ですと、人はなかなか定着しませんし、毎日同じ仕事の繰り返しが続くとマンネリ化してしまい、それがお客様にも伝わってしまいます。そういった従来の飲食店での働き方にも一石を投じたかった。スタッフのリフレッシュや自己啓発の時間も確保できるビジネスモデルとしても自慢できます」と最後に浜倉氏は締めくくった。
10月22日には、関西エリア「鱗」ブランド初号店を大阪の放出に「浪○ 松憲」と称しオープンさせ、業界再生化を進行している。「山憲」、そして鱗ブランドが飲食店での新しい働き方を定着させることに期待したい。 |
表通りから一本入った路地に現れる。
「活気ある魚屋」をイメージした店作り
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カウンター、テーブル、座敷を用意。
店内はどこも活気に溢れている
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お客様が自ら七輪で焼く魚介類。
料理は「漁師のまかない飯」をコンセプトにした。
「にゃんこ飯」(写真奥・300円)
「名物セコ汁」(写真手前・400円)
団塊世代が持つ人間味が業態コンセプトの主軸。
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