昨年5月、中目黒駅から3分の目黒川沿いに焼きシャブ料理の店「マタギが街へ降りてきた」がオープンした。カフェのようなインテリアでジビエを提供。20代後半からの女性を中心に人気の店となっている。
運営するのはマーケティング会社のエリカ・インターナショナル。代表の片山氏は恵比寿の立飲みバー「カサブランカ VIN-VINO」を仕掛けた創業者でもある。
「これまではジビエというと、『独特のクサミが旨みである』という認識がありました。それはもちろん間違いではないのですが、屠殺や血抜き、そして保存の技術が上がり、そうではなくなってきているのが現状です。要するに、フランス料理のような濃いソースで食べる必要がない。もともと日本人は素材そのものの味を大切する文化がありますから、鴨、キジ、鹿などの肉を薄くスライスしてさっと炙って食べていただくのが一番合ってるんじゃないかと考えてこのスタイルになりました」
「焼きしゃぶ」は焼きすぎず、肉本来の美味しさを引き出す。焼いた後は、塩でさっぱりと楽しむことを勧めているが、鹿や熊などは柚子胡椒やポン酢も用意し好みで使い分けていただいている。
どちらにしてもべっとりとしたタレではないのが特徴だ。しかし、さっぱりと味わう肉を引き立てるようにとサイドメニューには、「白いんげん豆とパルメジャーノの温サラダ」(写真・900円)など、フレンチをベースとしたしっかりとした味付けのものを用意し、食後「物足りない」と感じさせないようにバランスをとっている。
最もオーダーが多いのは「イベリコ豚」(1400円)と「岩手白金豚」(1000円)。食べ比べをするグループ客が多く、同じように鶏では「日向鶏」(700円)と「キジ」(1800円)など同店でしかできない食べ比べを楽しむ。
「女性のお客様にはさっぱりとした味わいの他に、ヘルシーであるというのも喜ばれるポイントです。ダイエット効果があるとして、羊のカルニチンは昨年話題を集めましたが、実は鹿には血液の浄化作用があると言われるリノール酸やDHAも多く含まれています。また、低カロリー高たんぱく、脂質は牛肉の10分の1、鉄分は3倍もありますからこれから注目の食材ですよね。」
男女比にすると女性が60%。男性客は食に敏感な味の分かる方が多いことが特徴だ。オープン当初、お客様の多くは珍しさに惹かれて来店していたが、半年を過ぎた現在では味の魅力にはまり、リピートするお客が定着してきた。
「私自身、ヨーロッパに居を構えて、ハンティングにも参加していた経験もありますから本場のジビエ知っていますし、ビジネスで各国を回っていましたので味覚もかなり鍛えられています。そして、マーケティングをベースにした多くのネットワークがありましたので、クオリティーの高い肉を仕入れることができたなど、オープンへの条件が自然と揃っていました。
店名の『マタギ・・』は若いときに冬山の狩猟経験から、後に世界中のジビエを楽しんだ、自分の経験を基に、中目黒にお店をオープンさせたという意味なんですよ」と片山氏は話してくれた。
ランチ需要が高い立地なので、今後は「鹿のそぼろごはん」など特徴を出したメニューで対応を予定している。
また、青山や銀座への出店も視野に入れているという。牛や豚、そして羊という焼肉メニューに、新たに鹿や熊などが加わるトレンドが同店から生まれることを期待したい。 |
カフェのようなカジュアルなエントランス。
シンプルで洗練された印象の店内。
低カロリー高たんぱくの鹿肉は
これから注目の食材だ
。
食材は本場ヨーロッパのジビエを堪能したオーナー自らが吟味して仕入れる。
「自家製ピクルス」(左・350円)
「白いんげん豆とパルメジャーノの温サラダ」(右・900円)。
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