2000年12月にオープンした渋谷松涛の「AROSSA(アロッサ)」は、オーストラリアワイン専門のワインバーとして有名店である。2005年1月に創業オーナーより現社長佐藤氏に引き継がれ、現在も変わらずの活況を呈している。
佐藤氏はヨーロッパやアジアをはじめ、世界各国で腕を磨いてきた若干31歳のシェフ。2001年にはタイでベストシェフに選ばれるなど確かな技術を持っている。同店には2003年よりシェフとして着任したが、突然代表取締役として抜擢されることとなった。
「ワインには自身がなかったので、一ヶ月間でお店のセラーにあった約400の銘柄をテイスティングして覚えました。料理人として舌は鍛えられていましたから、理解は早かったと思います。それでも、お客様はみなさんワインを飲みに来られますから、当初はかなり緊張しました」と佐藤氏は笑いながら話す。
渋谷の喧騒から離れた同店には、オーストラリアワインが飲める店として目的を持ったお客が訪れる。オーストラリア本国に住んでいたことがある、または旅行に行ったことがあるお客を中心に固定ファンも多いが、噂を聞いて来店する新規客も絶えることはない。オーストラリアワインの魅力を佐藤氏はこう話す。
「一言で言うと味わいが強く、はっきりしているのがオーストラリアワインの特徴。品種本来の味わいを堪能できることも魅力です。フランスワインを飲みなれた方の中には、一味足りないとおっしゃる方もいらっしゃいますが、それはバランス良く出来すぎていて掴みどころがないフランスワインに慣れすぎてるからではないでしょうか。オーストラリアにもいいワインがたくさんありますから、是非知っていただきたいですね」
そう言いながらも、佐藤氏はオーストラリアワインの全てを肯定するわけではない。
「オーストラリアワイン入門の一本として某ワイナリーのシラーズが勧められていた時期が長年ありました。今でもその傾向が残っているように思います。しかし、そのシラーズは2003年あたりからボトルむらが多く、クオリティーも落ちていると判断しました。お客様からのオーダーも多いのですが、当店ではお出しできる質ではないと判断して、持っていた在庫全てを料理酒にしました。このようなオーストラリアワインの現状をきちんとお伝えするのも私たちの役目だと思っています」
一方、オーストラリア料理とはどのようなものなのだろうか。
「『フリーダム』としか言いようがないんですよ(笑)。オーストラリアというのは、白人の東南アジアというのが私の印象。いろんなものが上手にミックスされているので、いろんなものが食べられるのが素晴らしい」
最後にシェフからオーナーへとなった佐藤氏に今後の豊富を伺った。
「レストランは楽しくなきゃダメ。お客さんも楽しく、スタッフも楽しく。スタッフには週休二日、そして他のレストランへ行って感想を作文にしてきたら研修費として月2万円を支給しています。安い給料で朝から晩までスタッフを酷使していては何も生まれません。スタッフに夢を持ってもらえるようにしたら、一年間で売り上げも幾倍にもなるんです。将来的に2店目の出店や他業態の展開も考えていますので、楽しみにしていただきたいですね」
この一年間で食材のロスは「魚2切れ」。確かな指示と判断が繁盛店を生むのだろう。これからの佐藤氏の活躍に期待したい。 |
「AROSSA(アロッサ)」は
松濤の住宅街の入り口付近に位置する。
キッチンの様子が目の前で堪能できるカウンター席。
2階はテーブルが用意され、ゆっくりと食事を楽しむことが出来る。
ワインは常時300本以上用意されている。
「アラボッカ」
「ホタテとシェリーヴィネガーのマリネ」
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