次に流行るお店
昭和の築地市場の食堂をイメージした、ファミリー向けの寿司の新業態
「豊洲漁港 寿し常 市場内店」
(東京・豊洲/寿司)
第161回 2006年12月15日
レトロ感のあるエントランス
「寿し常」グループでは「ラゾーナ川崎プラザ」に次ぐ、40店目の店である。
目を引く内装は、昭和30年代、40年代頃の築地市場の食堂をイメージしたもので、築地市場が将来的に豊洲に移転してくるのを見込んで、つくり込んでいる。「市場の中で長く魚屋を営んできた店主が、幼なじみの大工仲間と一緒に改装して、寿司屋を始めた…」というのが、この店のコンセプトだ。
エントランスのあたりに並んだ大小さまざまな水槽には、産地直送のいろんな魚介類が泳いでおり、寿司職人が水槽からすくって、その場でさばいて、新鮮なネタの寿司を握る。同社では、漁師から直接、魚介類を買いつける仕入れのスタイルにシフトしており、特に白身の魚はその土地でなければ手に入らない珍しいものが入荷し、「本日のおすすめ」として提供される。
魚市場のような内観
テーブル席
内装
水槽
水槽と水槽の間の路地をすり抜けるようにして、店内に入るのだが、数々のレトロな看板が市場の雰囲気を醸し出す。これは実は、古そうに見せる演出で、昔の築地市場の風景写真が載っている本や新聞を参考に、今は数少なくなった看板職人が、手書きで新しく書いたものだ。また、看板を黄ばませて古そうに見せる、特殊な加工を施している。
一部のディスプレイはオークションなどを使って入手したそうだ。天井から釣り下がっている新聞紙の束も、表紙と裏表紙の部分は、当時の新聞を使っているという。
また、テーブルには、看板群をコピーして表面に張りつけており、あえて採用したチープな椅子の効果もあって、席に座っていると、市場内の寿司屋にいるかのような気分になってくる。何でも、BGMとして流れている競りの声なども、スタッフが築地にまで足を運び、収録してきたものだそうだ。
「内装は従来にないほどお金が掛かりましたが、元々弊社としては構想にあった業態なのです。ららぽーと豊洲はキッザニア東京などもありますし、ファミリーのお客さんが多くいらっしゃると思いましたので、お寿司屋さんは金額がわからなくて恐いというような印象を持たれないように、開けっ広げな店をつくったんです」と、豊田広報宣伝部リーダーの久保敦史氏は語る。
同店は、その時々の良いネタで勝負する店だ。また、凝った空間演出で、寿司屋に対する顧客のハードルを、一気に低くする工夫をしていると言えるだろう。
メニューも特徴があり、毎日、生のまぐろを食することができる。人が集まってきた頃を見計らって解体ショーを行うので、顧客に喜ばれている。
「鮪ぶつ刺」(380円)
刺身盛り合わせ
また、「鮪ぶつ刺」(380円)は、この店にしかないメニューで、小皿が提供され、マグロブツを山盛りに盛った器から、1分間盛り放題で小皿にブツを取れるというものだ。ただし、小皿からブツがテーブルに落ちてしまった段階で、ストップとなる。ゲーム感覚で楽しめるメニューである。
一番人気は「店長おすすめ 市場にぎり」(2180円)で、中トロ、赤身、ウニ、イクラは必ず入るが、それに加えて「本日のおすすめ」など寿司一人前10カンに、まぐろのブツが付く。
店長
オープンした10月は来店客数2万人弱を記録し、「アーバンドッグららぽーと豊洲」の中のレストランでは、上位に入ると好調である。
顧客層は予想どおり、ベビーカーを押してくるバギー族を含めてファミリー層が中心だが、平日は近くの会社のサラリーマン、OLも、昼夜を通して多い。
「水曜日は、施設のシネコンがレディースデイをやっているので、女性が多いです。お客さんは近くの江東区の人ばかりでなく、練馬区や品川区、千葉県の市川、船橋の人も多いようで、遠くからも来ていらっしゃっています。ただ、車で来られる人が多いので、お酒はあまり出ないですね」と羽部貴臣店長。
このように同店は、昔の築地市場を思わせる、懐かしくも温かい感じのユニークな店舗デザインと、鮮度の良いネタ、アミューズメント性の高いマグロ解体ショーや「鮪ぶつ刺」企画によって、従来の「寿し常」のファンのみならず、新しいファンも獲得してる。
寿司業態の新境地を開拓したと、言えるだろう。
賑わう店内
【「豊洲漁港 寿し常 市場内店」】
住所 | 東京都江東区豊洲2−4−9 アーバンドッグららぽーと豊洲3F |
電話番号 | 03−6910−1421 |
営業時間 | 11:00〜23:00 |
定休日 | 無休(但し施設に準じる) |
客席数 | 59席 |
客単価 | 1900円 |
経営母体 | 株式会社豊田 |
長浜淳之介 2006年11月24日取材