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次に流行るお店

北海道十勝地方のグルメを味わえ、素材を自宅にお取り寄せもできる店
「お取り寄せダイニング 十勝屋」
(東京・銀座/北海道・十勝料理)

第162回 2006年12月29日

ラクレットチーズ(900円)
「お取り寄せダイニング 十勝屋」は、北海道・十勝(とかち)地方より、安全・安心な食材を産地直送で取り寄せ、素材そのものを楽しんでもらうシンプルな調理法で提供するという、趣旨の店である。

 顧客は食べて気に入った食材やメニューがあれば、同店または同店のホームページを通じて、お取り寄せ、つまり自宅から通販も可能である。そこが、“お取り寄せダイニング”と名乗っているゆえんだ。

 季節柄、採れないものもあるが、常時、7割〜8割の食材は、十勝産を使っている。

 オープンは去る、2006年10月10日。場所は、銀座のダイニングを先導するスポットの1つ、「銀座コリドー街」にある。


「十勝屋」外観


テーブル席

 十勝という地名は、北海道民を除く、本州以南の住民にはイメージがわきにくいが、北海道東部にあって、農業の生産高が北海道14支庁の中でも1位といったように、日本の食糧基地とも言える、農業が盛んな場所なのである。

 中心都市は人口約17万人の帯広(おびひろ)市で、札幌からは特急で約2時間、車で約4時間の距離にあり、航空便なら羽田から帯広まで毎日直行便も出ている。ほかに支庁内に、ワインで著名な池田町、ミュージシャンの松山千春さんの出身地・足寄(あしょろ)町、優秀な競走馬を産出する大樹(たいき)町などがあり、西端には日高山脈が走りその南端は襟裳(えりも)岬に近接、東端は釧路(くしろ)支庁に隣接している。北部は大雪山国立公園の区域に属する。

 十勝支庁管内は新潟県と同じくらいの面積があるが、北部と東部の一部山岳地帯を除き、平坦な十勝平野が太平洋に面して広がっている。十勝川とその支流がつくりだす肥沃な農地は、全般に寒冷な気候ではあるが、雪はあまり降らず、日照時間に恵まれており、寒暖の差が大きい。畑作、酪農には絶好の条件を備えている。広々とした農場の風景は、本州以南の住民がイメージする、北海道の大地そのものだ。

 主な作物には、ジャガイモ、ナガイモ、ゴボウ、ダイコン、ニンジン、小麦、豆類、テンサイ(サトウダイコン)などがあり、酪農では乳製品、卵に加え、肉は豚、牛、鶏、羊とそろっている。

 また、太平洋沿岸に漁港もあり、海の幸にも恵まれている。

 農業王国十勝の中から、厳選した素材を生かした“食材料理”を提供していることもあって、同店は素材の良さに、絶対の自信を持っている。

 運営は、十勝地方の新聞でトップシェアを持つ十勝毎日新聞社と、そのグループ会社の北海道ホテルが出資したグリーンストーリーという会社。

 十勝毎日新聞社は単なる新聞社ではなく、帯広市を拠点に、ケーブルテレビ、コミュニティFM、地ビール「十勝ビール」の製造とそれを提供するレストラン、ホテル、デジタルコンテンツ制作会社、農業生産法人、さらには函館の地方新聞である函館新聞の経営にも参画する地元の一大企業グループで、十勝の経済を動かすと言われるほどの存在である。

 北海道ホテルは、シティホテルでありながら良質な温泉が湧出し、レストランの食事がおいしいと、帯広を訪れた人の間では人気の高いホテル。「お取り寄せダイニング 十勝屋」では、その北海道ホテルより、スイスで修業したシェフが出向して調理をしているので、素材の良さはもちろん味のほうも信頼できる。

 地元の有力紙が母体であるだけに、優良な生産者の情報が正確に集まり、食の安全性に裏打ちされた食材を、消費者に届けられるのが、この店の強みだ。


産直案内

長いもペペロン

 最も人気の高いメニューは、チーズを製造する時に搾りかすとして出る水溶液、ホエー(乳清)を与えて飼育した豚「ホエー豚」を使った「岩塩黒胡椒焼き」(1400円)。

「ホエー豚」は栄養価が高くて脂質の低いホエーを飲んで育っており、ヘルシーで旨味のある、やわらかい肉質が特徴。その「ホエー豚」を、アンデスの岩塩と黒胡椒をブレンドした「岩塩黒胡椒」で味つけして豪快にあぶり焼きにする。

 また、帯広名物として、全国的に知名度が上がっている豚丼を、お酒のツマミにも良いように、「豚丼押し寿司風」(1200円)にアレンジして提供している。

「開きシマホッケ」(1600円)も、関東の食卓に並ぶものより、1.5倍くらいの大きさを持っているので、インパクトがある。

 もう1つの看板メニューは、「ジャガイモ ラクレットチーズがけ」(各900円)で、ふかし立てのジャガイモに、チーズを削ってトロトロとなった状態で食する。しかも、ジャガイモは、「インカのめざめ」、「インカパープル」、「北あかり」、「メークイン」と4種を食べ比べることができ、自分の好みの味が見つけられる。

「お豆サラダ」(700円)の人気も、特に女性客に高い。

 ドリンクでは、「十勝ビール」がラガータイプ(320ミリリットル、800円)とエールタイプ(同、850円)で楽しめ、「十勝ワイン」(グラス650円〜)も各種そろえている。

 ソフトドリンクでは、雪解けの頃に白樺の木が春芽を吹くために吸い上げた樹液、「シラカンバ樹液」が、東京ではほとんどお目に掛かれない希少価値がある。キシリトールやミネラルが豊富な白樺樹液は、北欧やロシアでは健康飲料として、古くから愛飲されてきたという。「シラカンバ樹液」で、ウィスキー、焼酎、梅酒などを割っても、おいしくいただける。

 内装は、十勝の田舎風ではなく、銀座という立地に合わせてモダンに仕上げているが、壁を北海道の珪藻土に十勝の麦を混ぜて塗ったり、テーブルに十勝のミズナラを使ったり、天井から釣り下がる丸太に十勝のカラマツを使用したり、その他、入口のレンガ、床、装飾品も十勝のものを使って、随所に十勝が体感できるようになっている。

 スタッフも半数以上が十勝出身者とのことだ。

 顧客層は、30代から40代のビジネスマンが中心で、女性も4割ほどを占める。

 北海道にかつて住んでいた人、十勝出身者、北海道に出張に行ったことがある人の来店も多く、懐かしい話に花を咲かせ、“本物の十勝”の雰囲気を提供することも可能とのことだ。

 郷土料理がブームの昨今であるが、「お取り寄せダイニング 十勝屋」の場合は、食材を通販することで、これまで良い作物をつくっていても、なかなか消費者にアピールできなかった生産者に、販路開拓のチャンスを生み出していることが新しいところである。

 十勝が東京の住民にとって、意外に近いところにあることが、感じられる店だと言えるだろう。

料理長

【お取り寄せダイニング 十勝屋】
住所 東京都中央区銀座6丁目2番先 銀座コリドー街
電話番号 03−3573−7373
営業時間 17:30〜24:00(L.O.23:00)
定休日 日曜
客席数 42席
客単価 5000円
経営母体 株式会社グリーンストーリー
長浜淳之介 2006年11月25日取材

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