次に流行るお店
スタンダードから創作料理、懐石まで。稲庭うどんの魅力を発信
「稲庭干温飩 銀座佐藤養助」
(東京・銀座/稲庭うどん専門店)
第163回 2007年1月26日
稲庭うどん味比べ
同社としては、県外初の飲食店の出店で、47都道府県の郷土料理の銀座界隈での集積を目指す、エイチワイシステムの安田久社長と、2年前に佐藤養助商店の社長となった佐藤正明社長の間で、東京・銀座という流行の発信地で稲庭うどんの魅力をもっと広く知ってもらおうという趣旨で、行われたもので、食事の提供だけではなく、物販の拡大も狙っている。オペレーションはエイチワイシステムに委託されている。
稲庭うどんは、香川県の讃岐うどん、名古屋のきしめんと並んで、日本3銘うどんの1つと言われるが、製法が確立したのは、江戸時代初期の寛文5年(1665年)とされる。佐藤養助商店はその開発者である、稲庭(佐藤)吉左エ門を宗家としている。
稲庭の干うどんの製法は以降、佐竹藩の御用製造を申し付けられたために、代々の稲庭吉左エ門の門外不出かつ一子相伝とされたが、製法断絶防止のために、4男の2代佐藤養助(養子)が特別に製法を伝授され、幕末の万延元年(1860年)に製造を開始したのが、佐藤養助商店の起こりとなっている。
明治に入ってからは、宮内省御買上げの栄に浴したり、内国勧業博覧会に出品して褒状を受けたりといったように、全国的な名声が高まり、多くのグルメ好きの人たちを魅了し続けている。7代佐藤養助会長は、2004年に厚生労働大臣表彰「現代の名工」を受賞している、うどん職人の最高峰に立つ人物だ。
現状、全国51の百貨店と一部高級スーパーで商品が販売されているほか、直営の飲食店9店、販売店1店および、銀座と六本木の「なまはげ」、銀座「きりたんぽ」などの若干の飲食店で、購入または食することができる。
「稲庭干温飩 銀座佐藤養助」外観
内観
伝統の稲庭うどんの製法は複雑でデリケートだが、要約すれば、選び抜かれた数種類の小麦粉を混ぜ合わせた専用粉、清く澄んだ水と厳選された塩でつくる塩水を使い、丹念に手作業で専用粉を練り上げて熟成させ、3センチ幅に細く切ってさらに熟成させ、その日の気候条件を考慮しながら一昼夜乾燥させてつくる。見た目がつややかで、細くても強いコシがあり、何とも歯ごたえ、のど越しが良い。
同店のスタンダードメニューのせいろは、醤油つゆ(1,100円)とごま味噌つゆ(1,200円)があり、両方の味が楽しめる、「二味せいろ」(1,300円)もある。また、温かいうどんと冷たいうどんを食べ比べられる「味くらべ」(醤油つゆ1400円、ごま味噌つゆ1500円)や、それぞれの天ぷらをトッピングしたメニューも楽しい。
また、伝統のメニューのみを出している稲庭町の本店と異なり、創作料理や秋田の郷土料理が提供されているのも、同店の特徴。創作料理では、たとえばつけ麺で「魚介レッドカレー」(1500円)、「比内地鶏のつけ麺」(1600円)、鍋で「特選!!海鮮稲庭うどんすき」(2400円)といったものが、楽しめる。
創作料理
これらは今まで気づかなかった稲庭うどんの新しいおいしさを追求したメニューで、昨年3月に秋田市内の秋田西武にリニューアルオープンした秋田店、昨年9月に秋田市内の繁華街・川反通りにオープンした大町店といった新しい店や、地元湯沢市の「養心館」や横手市増田町の「養心庵」(佐藤養助漆蔵資料館内)では創作料理に力を入れている。
秋田の郷土料理では、「きりたんぽ鍋」(2200円)、熊笹塩で焼く比内地鶏の備長炭焼き(350円〜450円)、「子持ちハタハタの一夜干し」(850円)、「長芋とんぶり」(600円)、「こまちアイス」(580円)などが提供され、ドリンクも秋田の地酒を豊富にそろえている。
4000円〜7000円のコースも、稲庭うどんときりたんぽ鍋が味わえるもの、稲庭うどんすき、創作稲庭懐石と、予算に合わせてバラエティ豊かにそろっている。
女性を呼び込む店づくりも1つのテーマとなっており、内装にも力を入れている。壁面にスタイリッシュなウォータースクリーン、店内中央には本店名物の桜の老木をイメージしたディスプレイを配し、伝統と現代性の融合を象徴するようなデザインに仕上がっている。
顧客層は、銀座に買物に来た女性や、30代後半〜50代の会社勤めの方の姿が目立つという。
客単価は平均すれば4000円くらいで、店内には4部屋の個室(20名)も含め、70席ほどの席数がある。
一時爆発的に増えた讃岐うどんのブームは去ったが、東京の住民に讃岐うどんの認知度が高まったことは事実である。それに対して、稲庭うどんの認知度は、まだまだではないだろうか。
同店が稲庭うどん普及の最前線基地となっていけるのか。今後の動向に注目したい。
【稲庭干温飩 銀座佐藤養助】
住所 | 東京都中央区銀座6−4−17 1F |
電話番号 | 03−6215−6211 |
営業時間 | ランチ 月〜金 11:30〜15:00(L.O.14:45) ディナー 月〜金 17:00〜02:00(L.O.01:30) 土・日・祝 11:30〜21:00(L.O.20:50) |
定休日 | 無休 |
客席数 | 70席 |
客単価 | 4000円 |
経営母体 | 有限会社佐藤養助商店 |
長浜淳之介 2007年1月20日取材