次に流行るお店
ニューヨークの市場をイメージした、東京ミッドタウンのニュースタイル食堂
「Okawari.jp(オカワリ・ドット・ジェーピー)」
(東京・六本木/フードコート)
第175回 2007年5月11日
入口
「Okawari.jp(オカワリ・ドット・ジェーピー)」は、3月30日、六本木・旧防衛庁跡を再開発した「東京ミッドタウン」地下1階にオープンした、ニュースタイルのフードコートだ。面積250坪、席数は300席を有し、「東京ミッドタウン」のレストラン群の中では最大規模を誇っている。
コンセプトは、“SHOKUDO(食堂)”で、さまざまな食のシーンに対応できて、いろんなメニューがあり、おなか一杯食べられる、ニューヨークの市場のようなイメージで、デイリーに通えるおしゃれな食堂を目指している。日本には各地の商業施設にフードコートがあるが、ファーストフードを寄せ集めたような従来のフードコートのスタイルと決別し、イメージを一新した店である。
経営は、株式会社ちゃんと副社長より2002年に起業した、井上盛夫氏率いるソルト・コンソーシアム(本社・東京都港区)で、同社は10業態の直営飲食店を持つほか、飲食店をはじめとする各種商業空間のプロデュースを手がけている。代表作は、「六本木ヒルズ」52F展望台「ミュージアムカフェ・マドラウンジ」、大阪のテーマパーク「道頓堀極楽商店街」など。
総料理長には元株式会社ちゃんと総料理長で、03年に起業し、代官山の韓国料理店「李南河」、恵比寿のプルコギ専門店「水刺間(スラッカン)」と2店を経営する、完山要氏を迎えている。氏は料理教室、フードプロデュースなどにも、多彩な才能を示しており、ソルト・コンソーシアムとの資本提携を機に、「Okawari.jp」では全体のフードディレクションを行っている。
スタイリッシュな空間デザインは、世界的インテリアデザイナーとして時の人、森田恭通氏が担当。
ファニチャーなどディスプレイのディレクションは、目黒通りにインテリアショップ「COLT&Co.」を経営する、齋藤仁士氏。
アートディレクションは、現代美術家の中山ダイスケ氏で、壁に描かれている絵や文字は中山氏が自ら筆を執ったものだ。
メインキッチン
バーカウンター
店内
料理は“産地美食”をテーマとし、日本、そして世界にシェフをはじめとしたフードバイヤーチームが実際に足を運び、産地の食材にこだわっている。たとえば、オープンから6月までは九州の郷土料理を特集しているが、7月からは四国の郷土料理を特集するといったように、レギュラーメニューに加えて、3ヶ月毎に産地を変えた季節限定メニューが提供される。
店内は、レストランのメインキッチン、デリカテッセンのキッチン、カフェのキッチンと大きく3つのキッチンがあり、そのほかパティスリー、ジューススタンド、バーカウンター、フラワーショップが加わって、全体の空間が構成されている。
ランチタイムの11時〜15時30分は、メインキッチンとデリカテッセンのキッチンが共同で定食仕立ての8種類のランチメニュー(780円〜1500円)を提供。
18時以降、ラストまでのディナータイムは、70席がコース料理を出すレストランとして、セルフサービスのバールのスペースとは、異なったスタイルで営業するのも特徴だ。夜のレストランの単価は5000円くらい、バールの単価は2000円ほどとなっている。
また、ジューススタンドは「watta juice」の名称で展開しており、顧客が店頭で9種類のベースから好みのものを選び、フルーツ、野菜、アイスクリームなどを自由に組み合わせた、スムージーが楽しめる。このスムージーには、8種類のブースト(栄養素であるサプリメント)をトッピングすることができ、自分の好みに応じたオリジナルの味が楽しめる。
バーカウンターでは、700円から、ビール、日本酒、焼酎、梅酒、ワイン、ウィスキー、カクテルと、各種のお酒をオーダーできる。
カフェでは、ハワイ島の農園から世界最高と評されるハワイ・コナコーヒーの生豆を直接買い付けた「ムウムウコーヒー」及び、ニューヨークで圧倒的な支持を得ている「H&H BAGLES」のベーグルが味わえる。
さらに、パティスリーでは、神戸の名店「マコリーヌ KOBE」が入店し、旬にこだわったケーキなどを提供している。たとえば、「イチゴのタルト」では、イチゴをその時の旬の産地から仕入れるため、日によって産地が異なれば、値段も変動する。筆者が訪問した日には、香川県の「さぬき姫」という品種のイチゴを使い、値段は800円であった。パティシエールの河野勝子氏は、フランスの著名な料理専門学校ル・コルドン・ブルーを卒業後、フランスの外務省に勤めて各国要人をもてなした経験も持つという。
イチゴのタルト
マンゴーのタルト
ディナーメニュー
デリカテッセン
フラワーショップの「ハナサイタ」は、フラワーアーチストの大西香里氏監修で、生花と造花を組み合わせた斬新なギフトなど、多彩なニーズにこたえた新しいタイプのショップとなっている。
このような多様性を有した複合的な食の空間である。朝は7時より開店しているので、たとえば顧客はベーグルとスムージーで朝食を取り、昼は定食を食べ、夕方はちょっとケーキとコーヒーで一休みして、夜はレストランメニューのコースでちょっとリッチに過ごすといったように、1日のさまざまなシーンに応じて、デイリーに使える便利さがある。深夜24時まで空いているので、食事のあとで、軽くお酒を飲んだり、コーヒーを飲んだりして、一息つくこともできる。
現状の顧客層は3:7で男性より女性のほうが多い傾向はあるが、老若男女、幅広く集客している。
ただし、難点として、各コーナーにあるレジまでの流れがつかみにくく、何回か通って全体像を把握しておかなければ、わかりにくい一面があり、顧客にどういう店なのかを瞬時に理解させるための工夫がほしいところだ。
とは言え、現状は「東京ミッドタウン」のオープン景気もあり、特にランチタイムでは連日、常に満席が続く非常に好調なスタートを切っている。
実験的な業態だけに、今後改良を加えて、フードコートあるいは食堂の新しいスタンダードになっていくよう、定着していってほしい店だ。
【Okawari.jp】
住所 | 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンプラザB1F |
電話番号 | 03-5413-0586 |
営業時間 | 7:00〜24:00 |
定休日 | なし(東京ミッドタウン定休日に基づく) |
客席数 | 300席 |
客単価 | 昼1000円、夜・バール2000円、夜・レストラン5000円 |
経営母体 | ソルト・コンソーシアム株式会社 |
長浜淳之介 2007年4月26日取材