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次に流行るお店

目黒の住宅街・祐天寺に突如出現した看板のない鴨料理店
「鴨丸 祐天寺分校」
(東京・祐天寺/鴨料理専門店)

第221回 2008年6月11日

鴨葱
「鴨丸 祐天寺分校」は4月20日、東急東横線祐天寺駅より徒歩6分の住宅街の中にオープンした鴨料理専門店。

 駅から歩いていくと、周囲に飲食店も商店もない小奇麗な住宅街に突如、広い駐車場が視界に開け、その向こうに小中学校の分校のような木造のレトロな建物が見える。周囲の風景とは非常にミスマッチと感じるので、インパクトは抜群だ。その建物が、「鴨丸 祐天寺分校」である。

 店の表側に看板も掛かっていないから、夜になってライトアップされるとますます異空間に見える。


看板はない入口


店内に掲げられた「鴨丸」看板


学校を意識した木の廊下


店内

 経営するイイコの横山貴子社長によれば「ここは去年の暮れまでは看板を造っていた工場だったんです。物件が面白そうだからと知人に紹介されて、田舎の分校のような建物に見えたので、“祐天寺分校”って店名に付けてみました」とのこと。

 しかし、「中に入ったらきちんとした食事のできる店にしたかったので、学校の給食や保健室のようなノリにはしたくなかった」という。


工事前の建物

 祐天寺は東横沿線でも中目黒や代官山、自由が丘と異なり、話題の店が集積した繁華街ではない。従って目的を持ってわざわざ行く場所であり、たまたま通りがかって来てもらえるような居酒屋では難しいと、横山社長は考えた。そこで、この店を目指して食事に来てもらえるように選んだ食材が「鴨」であった。

「鴨というのは、フレンチではジビエの季節にメインディッシュで出てきたり、おそばの鴨南蛮であったりと、リッチで大人の感じがする食材だと思うんです。スーパーではまず鴨肉は売っていない、明らかに高いものですしね。コレステロール値が低いヘルシーなお肉で、毎日食べても飽きないのも、今の時代に合っています」と横山社長。

 映画「失楽園」で心中にいたる主人公の不倫カップルが、最後に食したのが「鴨とクレソンのしゃぶしゃぶ」であったというのも、ヒントになったそうだ。

 イイコでは、中目黒駅近くのガード下にあった、ユニークな町工場のような外観・内装の隠れ家居酒屋「村上製作所」が3月で再開発のため閉店となり、移転先を探していた事情もあったが、立地条件が全く異なり家賃も3倍となったので、新たにコンセプトづくりをしたといった背景もあった。

 鴨はあくまで本鴨のみを出し、合鴨は使わない。野鴨が調達できるのは11月から3月までの冬の季節に限定されてしまうので、年間を通して安定的に供給できるように、調達ルートも確保した。

 ターゲットとする客層は40歳くらいの男女で、コース料理が中心。5000円、6000円、8000円と3のコースがある。


メニュー表

 名物料理は、8000円のコースのメインに入っている、野趣あふれ味わい深い「鴨のしゃぶしゃぶ」で、肉は噛みごたえがあるがやわらかく、臭みもなくて上品な感じがする料理だ。鴨の胸肉とモモ肉を使っており、適度な脂の乗り具合も良い。野菜は、ゴボウ、セリ、ネギが盛られており、醤油とゴマの2種類のタレでいただく。


鴨しゃぶ

 また、「鴨葱」は、鴨肉とネギを特製のタレで煮込む料理で、各テーブルで鉄の小鍋を温めるロウソクが尽きて、火が消えればできあがり。ネギの甘みと苦味が鴨肉と融合し、お酒が進む大人の味である。こちらは6000円のコースのメインとなっている。


鴨葱

 単品では「鴨のしゅうまい」(900円)などアイデアに富んだ鴨の創作料理のほか、魚や野菜の料理、ご飯ものなども取り揃えているが、あくまで鴨を味わってもらう店であることを訴求している。


鴨のしゅうまい

 ドリンクはビール、日本酒、焼酎、ウィスキーとひととおりそろっているものの、中心はワイン。4000円台のボトルがよく出るが、グラスワインも650円からある。

 内装は天井の高さが特徴で、全体にウッディーなあるいはレンガを使った暖色系でまとめ、レトロ調の中に落ち着いた居心地のよさが醸し出されている。2階は今の時点では事務所として使用しているが、将来的には個室としてレストランに組み込む計画もある。

「お客さんのリピート率も低くないですし、ご近所の人が興味を持っていらっしゃってエントランスでメニューの説明を聞いて、その場で入られるケースも思ったより多いです。食材やサービスの向上に研究を重ね、日本一の鴨料理店を目指します」と、横山社長の目標は高い。


【鴨丸 祐天寺分校】
住所 東京都目黒区五本木1-6-3
電話番号 03-3710-9804
営業時間 18:00〜0:30(L.O. 23:00)
定休日 月曜
客席数 38席
客単価 7000円
目標月商 800万円
開店日 2008年4月20日
経営母体 有限会社イイコ
※取材当時の情報です。変更されている可能性がありますので訪問される場合は、店舗にご確認下さい。
長浜 淳之介   2008年5月10日取材

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