次に流行るお店
三ツ星の味わいと一流サービスが堪能できる、カウンタースタイルのカジュアルフレンチ
「restaurant bacar(レストラン バカール)」
(渋谷/カジュアルフレンチ)
第251回 2009年1月21日
彩りも味付けも抜群の料理の数々。
店舗外観。
オーナーの好きな黄色を配した特注の椅子が印象的なカウンター席。
昨年の12月12日にオープンした「restaurant bacar(レストラン バカール)」は全13席のカジュアルフレンチの店だ。
「ターミナル駅が最寄りでありながら、ごみごみとした雑踏にまぎれてしまわない場所。そんな条件で店舗を探し続け、実際にこの場所にたどり着くまでに1年かかりました。以前働いていたことのある松濤というこの場所の、最寄り駅が渋谷とは思えないゆったりとしながらも凛としたこの空気感が好きなんです。」そう話すのは、オーナーソムリエの金山幸司さん。
こだわりのカトラリー。
「とにかく、フランス料理というとイメージされてしまう、敷居の高さのない店をつくりたかったんです。気軽に、リーズナブルに多くの方にフレンチを楽しんでもらいたい。それが僕とシェフの共通の想いでした。」
そんな二人の想いは、店のいたるところに現れている。まず、目の前にシェフの手仕事をみることのできる、カウンター席というスタイル。また、料理はコースもあるもののアラカルトが中心で、メイン料理はスモールサイズ(一人前)とラージサイズ(二人前)が用意される。これは、フランス料理というと「おひとりさま」をしにくい、という概念を覆すものだ。また、テーブルには白いクロスがひかれておらず、おしぼりが提供される。これもよりリーズナブルにお客さまに利用してもらえるように、という工夫だ。
とはいえ、テーブルクロスを使わないことや膝にかけるクロスがないことに加えて、内装も直塗りの壁にするなどの部分でコストダウンを図っているが、椅子やカトラリーなどお客さまが快適に食事を楽しむためのことに対しては、全く妥協がない。
思わずため息がでるほど美しい皿はまるで芸術品.。
例えば、美しい料理を引き立てる皿は4大リモージュ陶器の1つと言われるフランスの「J.L Coquet(ジャン・ルイ・コケ)」、カトラリーは見た目の美しさと人工工学に基づいた持ちやすさに定評のあるポルトガルの「Cutipol(キュティポール)」と、こだわりをみせる。また、金山さんの大好きな色だという黄色いカウンターの椅子も「長く座っても疲れないように」と座面を通常より大きくした特注品だ。
オーナーソムリエの金山さんと、石井シェフ。
フランス料理の新しいスタイルにこだわる、オーナーソムリエの金山さんとシェフの石井真介さんはともに昭和51年生まれ。
シェフの石井さんは、四ッ谷の「オテル・ド・ミクニ」の三國清三シェフに師事し、その後南青山の「ラ・ブランシュ」で修行をしたあと、渡仏。本場の三ツ星レストランを経験した腕の持ち主だ。金山さんは、田崎真也氏がオーナーを務める会員制ワインバー「アルファ」をはじめ、「CHEZ MATSUO 松濤レストラン」や銀座の三ツ星レストラン「ロオジエ」などでの経験のある確かな舌をもったソムリエ。気さくなトークで、お客さまを楽しませてくれる。
旨味が濃縮されたバーニャカウダーソースは絶品だ。
ラテン語でワイングラスを意味する店名の焼印が可愛らしい、自家製ブリオッシュ。
シェフと目線が揃うように作られたカウンターの目の前の厨房から次々と提供されるのは、本格的なフランス料理をベースにシェフのセンスが光る彩りの美しい料理。
前菜でおすすめは、「日本各地から取り寄せた有機野菜と能登産ズワイ蟹とカニミソのバーニャカウダー」(1,900円)や「ランティーユと手長海老のビスク カプチーノ仕立て」(一皿1,300円/二皿1,900円)。手間隙を惜しまない、丁寧な仕事ぶりがうかがえるものばかりが揃う。特にバーニャカウダーは、こだわりの野菜を引き立てる濃厚な味わいのソースが旨さの決め手。野菜に付けきれなかったソースも、自家製のパンにつけて全部食べてしまいたい、そんな味わいだ。
本日の『意気ごみ』鉄鍋(1,300円〜)は旬の味わいが楽しめる。
店内黒板に書かれた日替わりの魚料理(一皿1,500円/二皿2,200円)をはじめ、「ブルターニュ産うずらにワイルドライスを詰めた丸ごとロースト ポルト酒薫るソース」(2,500円)など、メインも本当にリーズナブルで、ボリュームも味わいも満足いくものばかりが揃う。
そして、同店で全7品5,250円のコースでも提供される、ストウブ社のココット鍋で旬の食材とご飯をじっくりと炊き上げた「本日の『意気ごみ』鉄鍋炊き上げご飯」(1,300円〜)。冬である今の時期は、銚子産の鰯とフォアグラを炊き上げ、最後に京都の名品、原了郭の黒七味が香る〆にぴったりの必ず食したい一皿だ。
デザートまで妥協なしの極上の味わい。
これらの料理を手がける、笑顔が素敵な石井シェフ。
料理とのマリアージュを楽しみたいワインも、グラスは600円〜、ボトルも2,600円〜と嬉しい価格。確かな舌で選ばれた、リーズナブルでありながら厳選されたラインナップになっている。
「オープンしてちょうど一ヶ月。実際にやっていく中で、まだまだブラッシュアップしていきたい部分はありますが、すでにリピートしていただいているお客さまもいらっしゃいます。これは、本当に嬉しいことです。自分たちがお客さんとして訪れるのであれば、価格にしても料理にしても、こうだったら嬉しいをできる限り詰め込みました。これからもシェフと二人、多くのお客さまに愛してもらえるような店にしていきたいと思っています。」と笑顔で語る、金山さん。
以前務めていたレストランの同僚であった2人の熱い想いが3年越しで実った、カジュアルに“本物の味わい”が堪能できる同店。若い二人が今後どういう展開を見せるのか目が離せない、注目の店だ。
【restaurant bacar】
住所 | 東京都渋谷区松濤2-14-5 ヴィラ松濤1F |
電話番号 | 03-6804-7178 |
営業時間 | 18:00〜22:30(L.O.) 土12:00〜14:00(L.O.)、18:00〜22:30(L.O.) |
定休日 | 日祝、第1・第3月 |
客席数 | 13席 |
客単価 | 6,000円 |
目標月商 | |
開店日 | 2008年12月12日 |
経営母体 | 金山幸司 |
※取材当時の情報です。変更されている可能性がありますので訪問される場合は、店舗にご確認下さい。
鈴木 明日香(すずき あすか) 2009年1月15日取材