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次に流行るお店

地域住民に愛されるカウンター中心の家庭料理の店
「はじめの一歩」
(東京・自由が丘/家庭料理)

有機野菜と虹豚の炭火焼を味わう新感覚イタリアンバル
「縁LAVIDA」
(東京・自由が丘/イタリアンバル)

第256回 2009年2月24日

「はじめの一歩」 ホットペッパーチキン830円
 東急東横線・大井町線自由が丘駅より徒歩5分。「はじめの一歩」は個性的な店がひしめく自由が丘にあって、気取らない個性的な創作メニューで、幅広いファン層に支持されている家庭料理の店だ。

 一期一会社長、石垣創氏は学生時代の居酒屋アルバイトを皮切りに、ホテルのバーテンダー、沖縄料理店の店長などといった、飲食店のキャリアを10年以上積んだ後、独立を決意。たまたま紹介された、おでん居酒屋として7年間営業していた店舗物件が気に入り、それまで一度も来たことがなかった自由が丘での起業を決意した。そうして居抜きで始めたが、内装費は1年後のプチリニューアルを含めても、100万円ほどしかかからなかったという。


「はじめの一歩」 ファサード


表札

 その店「はじめの一歩」はカウンターを中心とした29席の店で、500万円弱を売る繁盛店に現在は成長した。顧客は30代をコアに、自由が丘周辺に住んでいる人たちが主流。男女比は4:6で女性のほうがやや多い。

「お客様の顔を見ながらつくった料理は、ストレートに伝わると思うんです。その意味で、接客しながら出せるカウンターの店が理想でした。最初は渋々下見に行ったお店でしたが、入った瞬間に気に入ってしまいました。改めて契約に来た日には、駅からの距離も知らなかったほどですが、意外と近くてほっとしました」と、石垣氏は笑う。


「はじめの一歩」 カウンター


「はじめの一歩」 テーブル席。

 店を始めてから気づいたのは、自由が丘の顧客が、ホテルのレストランの顧客と似ているということ。お金の使い方に明確な意図がある点が、新宿や渋谷のような巨大ターミナルの街の店とは異なっているそうだ。

 そこで店の特徴を出すため、現料理長が沖縄出身であるので、夏は「ゴーヤチャンプルー」などの沖縄料理をフィーチャーしている。冬は創作和食で彩られる。


「はじめの一歩」 本日のおすすめ料理 煮豚


「はじめの一歩」 シェフの気まぐれサラダ

「はじめの一歩」名物とも言える「ホットペッパーチキン」(830円)は、鶏の唐揚げの上に50本ほどの真っ赤な炒めた唐辛子が乗っかっている、非常にインパクトのあるメニューで、オープン以来ずっと一番人気のメニュー。

 ところが唐辛子をかき分けて鶏の唐揚げを食べてみると、激辛ではなく、ほど良く甘辛い味になっている。見かけと味のギャップを楽しむ料理で、常連が初めて訪れる友人・知人を連れてきた時に、話のネタとして自慢げに語るような光景がよく見られる。

 味付けを考えれば唐辛子は5つもあれば足りるが、あえて大量50個ほどを盛り付けることで、カウンターと顧客のコミュニケーションを円滑にする効果も、もたらしている。

 お酒は焼酎一升瓶のボトルキープ(7000〜8000円)を行っていて、約100本分がキープされている。グラス売り(600円〜800円)もよく出る。また、1年ほど前から月替わりで季節に合った日本酒(一合900円)を10種類ほど提供しており、オーダーが増えている。冬だとお燗、秋だと冷おろしといった具合だ。

 客単価は4000円ほどだが、最近は日本酒が売れるので上昇しているという。


「はじめの一歩」 ボトルキープ用焼酎棚。

「自由が丘は住宅街なので、社用の宴会は少ない代わりに、親戚一同の集まりやご近所さんの飲み会が多いです。なので、お客さんの好みに合わせてメニューにない料理も提供するなど、できる範囲でわがままを聞いてあげる店でありたいです」と石垣氏。

 顧客の誕生日にはスタッフで歌って踊って、ケーキをサービスして盛り上げる。これは同じ自由が丘の「てっぺん」に学んだ演出である。

 一方で「はじめの一歩」のすぐ裏手の路地に、昨年12月10日にオープンしたのが、系列の新店「縁LAVIDA(エン・ラヴィーダ)」である。“エン・ラヴィーダ”をイタリア語で訳すと“人生の中で”の意 。


「縁LAVIDA(エン・ラヴィーダ)」 ファサード

 コの字型のモダンなカウンター席のイタリアンバルで、炭火焼で焼く野菜とワインがメインの店である。24席あって月商300万円を目標としてきたが、現状はそれをはるかに上回る500万円のペースで推移しており、出足順調だ。

 その背景として「はじめの一歩」の人気がすでに確立していて、2店を行き来する顧客もいるが、「縁LAVIDA」の顧客は女性が圧倒的で8割を占めている。

 石垣氏が、福島県いわき市の有機農業を営む農家のグループと出会い、収穫を手伝ったりしながら、その一生懸命さに心打たれたのが店舗を企画したきっかけだという。彼らは脱サラして4、5年前に農業を始めた人たちだ。

 野菜のシンプルなおいしさを伝えるために、炭火焼という業態を選んだ。

「葉物、根菜、キノコとどれも普通の野菜で、品質も一定ではないですが、生産者の思いが乗っているので本当においしいです」と、石垣氏は野菜の味に太鼓判を押す。

 また、秋田県で肥育されていて、年間500頭ほどしか出荷されない、「虹豚」のスペアリブも売りとしており、脂身が多いのにしつこくないのが特徴だ。

 ちなみに主なメニューの価格は「有機野菜の炭火焼盛」(1040円)、「特製炭火焼スペアリブ」(490円)となっている。

 ドリンクはイタリアンワインが中心で、グラスで600円から、ボトルで2800円から飲める。

 店長と料理長は、それぞれ石垣氏がホテルで働いていた頃の後輩と先輩で、ホテルの品質の味とサービスが、街場のバルで受けられるのも魅力だ。

 内装はモノトーンを基調としたシックでモダンな表現である。客単価は4500円。

 石垣氏は「はじめの一歩」を出店して軌道に乗ったことで、自分の夢は叶ったとして、今後は独立せずとも社員のやりたいことを、実現するような店舗をつくっていきたいという。

 カウンターで接客しながら料理を出すスタイルにこだわる石垣氏の店づくりは、これまでの2店を見る限り成功している。これはホテルでのバーテンダーの経験に基づくようだが、社員のモチベーションを保っていけば、自由が丘の顧客にずっと愛されていくのではないだろうか。


石垣社長(中央)と愉快な社員

【はじめの一歩】
住所 東京都目黒区自由が丘2-14-5 館山ビル1F
電話番号 03-5701-0039
営業時間 17:30〜翌1:00
定休日 無休
客席数 29席
客単価 4000円
目標月商 500万円
開店日 2006年3月1日
経営母体 株式会社一期一会

【縁LAVIDA】
住所 東京都目黒区自由が丘2-14-20 第7千陽ビル1F
電話番号 03-6459-5757
営業時間 16:00〜翌1:00
定休日 無休
客席数 24席
客単価 4500円
目標月商 300万円
開店日 2008年12月10日
経営母体 株式会社一期一会
※取材当時の情報です。変更されている可能性がありますので訪問される場合は、店舗にご確認下さい。
長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ)     2009年2月4日取材

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