大人も若者も気軽に足を運ぶ近未来のバーのスタイル
不景気といわれる世の中にありながら、飲食業界ほど活性化している業界も珍しいのではないだろうか。特に都市部では、ここ1、2年にかけて異業種企業からの参入が相次ぎ、テレビ・雑誌でも何かにつけて飲食店がらみの企画が目に付く。お客様のフトコロ次第の商売だけに、景気がよくも悪くもその影響をダイレクトに受けながら、スタイルを変えて変遷していくのがこの業界の特質だともいえる。
その傾向が顕著に出ている業態の一つがバーだ。かつてバーといえば、暗めに落した照明、静かな音楽、寡黙なバーテンダー、シックで重厚なインテリアとほぼ相場が決まっていた。賑やかな会話を楽しむというよりは、酒の味と時の流れにゆったりと身をゆだねる場。カジュアルな日常着ではなく、できればオーダーメードのスーツがふさわしいだろう。その重い扉を初めて押すときには、だれもが居住まいを正し、やや緊張した面
持ちで足を踏み入れた、成熟した大人の安らぎの場でもあったのである。
そうした紳士、淑女に愛される老舗も今だに健在ではあるが、このごろはバーの定義そのものが大きく変わってきている。カラオケバーなどというのは論外にしても、90年代初めから続々と登場したダイニングバーが好例。また、既存のバーの面
持ちを色濃く残しながら、空間づくりの相違工夫によって敷居の高さを排除した、新鮮なインテリアの店舗の出現が目立つ。
お客様が足を運ぶことを誇れるスタイリッシュなバー。それでいてカジュアルな感覚に溢れ、大人にも若者にも違和感のないバー。この要素を満たした店舗が近未来のバーの形とも言えそうだ。
橋本夕紀夫YUKIO HASHIMOTO
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