フードリンクレポート
ドバイの発展でインド・中東・アフリカの「インド洋ダイニング」が勃興。
<前編>
「ニルヴァーナ ニューヨーク」ニューヨーク海老のマスタードマリネ(1900円)
・スパイスを多用する「インド洋ダイニング」が世界的に成長
極東の島国である日本にとっては、同じアジアでも中国、韓国、東南アジアは身近に感じても、インド、中東はなじみが薄く、遠い地域と感じてきたのではないだろうか。ましてやアフリカともなれば、一般の日本人はサバンナを走る野生動物のイメージくらいしか浮かばないかもしれない。
しかし、近年のインドはIT産業の発展が目覚しく一躍、21世紀の世界経済を支える中心的な国とみなされるようになった。
中東のイラン、サウジアラビア、カタール、クウェート、アラブ首長国連邦、オマーン、バーレーンなどといった国々は産油国として日本と元々関係が深かっただけでなく、サッカーの国際試合などでしばしば国の名を目にするようになってきた。そればかりでなく、原油価格の高騰と、石油が枯渇した時に備えての新産業育成を背景に、中国や東南アジアを凌ぐ経済発展をしている地域も多い。そのリーダー格が、アラブ首長国連邦のドバイである。
この地域は戦争ばかりがクローズアップされてきたが、エジプト、シリア、チュニジア、モロッコなども、石油こそ出ないが、古代から中世にかけて文明が栄えた地域であり、観光では世界中から人々が集まる文化の高い国である。
アフリカは豊富な地下資源を持ちながら停滞感の強い国も数多くあるが、いち早く発展した南アフリカ共和国で、2010年にサッカーのFIFAワールドカップが開催される予定となっており、夜明け前の状況となっている。
そして、インド・中東・アフリカ、すなわちインド洋地域30億人市場の中心に位置するビジネスセンターとして、発展目覚しいのがドバイである。
ドバイでは、1970年代に20万人だった人口が120万人にまで急増。あのベッカム選手が購入したとされる人工島の別荘地「パームアイランド」、7つ星ホテル「ブルジュ・アル・アラブ」、人工スキー場「スキードバイ」まであり、バブル絶頂の頃の日本を凌ぐ、世界一ゴージャスな都市とまでいわれるほどの勢いだ。世界一高い800m、160階建の超高層ビル「ブルジュ・ドバイタワー」も建設中である。
そうした建設工事に中心的にかかわっているのは日本企業であり、今後ドバイの食文化が日本に入ってくる可能性は非常に高い。
ドバイでは日本食はもちろん、西洋料理、中国料理、トルコ料理などあらゆる国の料理を提供するレストランがあるが、主流となっているのはインド料理であり、次いでレバノン料理、ペルシャ料理などである。
ドバイは移民と出稼ぎで人口を増やしてきた面があり、インド亜大陸のパキスタン、そしてインドの出身者が最も多くなっている。しかも、ドバイにはITでのし上がった多くのインド企業が投資している。伝統色・郷土色豊かなインド料理からスタイリッシュな新しいニューヨークスタイルまで、さまざまなインド料理が味わえる。
レバノンは1975〜90年まで長らく続いた内戦のため、多くの国民が欧米に流出。元々フランスの植民地だったため料理のレベルが高く、結果的にレバノン料理が欧米のアラブ料理の主流となるほど普及した。その勢いで、ドバイでもレバノン料理は増殖しており、一大勢力となっている。
ペルシャ料理はイランの料理であるが、イラン自体が中東ではエジプト、トルコと並んでゴールドマンサックスより、ブラジル・ロシア・インド・中国のいわゆる“BRICs”の次に大きく成長する“ネクスト11”の一角の国との高い評価を受けている。ペルシャ湾岸のイラン商人の勢力は強い。日本では中東の料理はベリーダンスのブームとともに普及しており、今後目を離せない存在だ。
さらに、アフリカの料理は、次のFIFAワールドカップが近づくにつれて、クローズアップされることになるだろう。
これらインド洋の料理は、スパイスを多用するヘルシーな料理であることに共通点があり、宗教上の理由からイスラム圏では豚肉、インド圏は牛肉を使わないことも多いが、羊肉、鶏肉、野菜、ヨーグルトなどをうまく使ったものが多い。また、「ケバーブ」、「カバブ」などといわれる串焼きが全般に普及している。お菓子は非常に甘い。
大きく分けて、インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパールなどインド亜大陸の料理と、インド料理の影響が強いアフリカの料理は香辛料主体で辛いが、アラブ諸国とイランといった中東諸国の料理は素材を生かし辛くない傾向があるようだ。
では、東京における「インド洋ダイニング」の息吹を、インド料理から順を追ってみていくことにしよう。
全文(有料会員専用)の見出し
・医食同源に基づくニューヨークスタイルの創作料理を発信
・ニューヨークの老舗インド料理店をスタイリッシュに復活
・イランの民族料理を旅行に行った気分で気軽に食せる店
(写真全26点)
<後編に続く>
Copyright(C) FOODRINK CO.,LTD All Rights Reserved |