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フードリンクレポート


マイ箸、マイカップ、ゴミ減量、身近なエコに取り組む飲食店が増えている。

2008.9.3
最近の異常気象の常態化からも、地球環境が誰の目にも人為的な要因によって破壊されつつあることが、明らかになってきている。飲食店、外食企業の中でも、全面的なシステム変更は困難なものの、できるところから一歩一歩エコロジーに取り組む試みが始まっており、成果が上がってきている。果たしてエコと売り上げを伸ばす経済行為は両立するのか、飲食店は消費者と一緒になってエコ意識を高め合うことができるのか、具体的事例から検証してみた。


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マイ箸を店にキープすることで顧客の来店頻度が増えた

「愛のマイ箸1億人運動」を提唱し、「マイ箸」を持つことからエコに取り組む実践を行っているのは、「八剣伝」、「酔虎伝」、「居心伝」などの居酒屋を中心とした計719店のチェーンを全国展開するマルシェ(本社・大阪市阿倍野区)だ。

 この「マイ箸」への取り組みは環境省の『環境循環型白書』にも掲載されており、高い評価を受けている。

 マルシェグループでは、一昨年より使い捨て割り箸を止めて、再利用できるプラスチックの塗り箸に全店で切り替えた。これは、日本で使用されている割り箸の97%が中国産で、森林が国土の17%しかない中国の木を切り倒し、砂漠化に拍車をかけている現実に目を向け、環境保護に寄与しようというものだ。

 最近は西日本で、中国内陸部の砂漠地帯から飛来する黄砂の影響が問題になりつつあり、中国の砂漠の拡大は他人事では済まされなくなってきている。

 本来、森林が健全に育つには樹木の間引きを行う必要があり、その際の間伐材を割り箸に使うのならば問題ない。そうでなく軒並み森林を切り倒して割り箸にしてしまうから中国の国土が荒廃するのである。

 日本国内ではおおよそ毎年250億膳、木造住宅2万軒分の割り箸が使い捨てられている。日本人1人あたりに換算すると約200膳だ。

 そして、塗り箸を使いまわすことに抵抗感がある人に向けて、有償で「マイ箸」の利用を推奨したものだ。

「マイ箸」は基本300円で、購入とともにポイントカードをつくる。「マイ箸」を持参するごとに1ポイントを付けていき、10ポイントで500円の割引券として使える。と同時に、ちょうど50円分が、NPO法人ネットワーク『地球村』を通じて森林保護に充てられるという仕組みになっている。

 このように利用者に具体的なメリットを提示して、消費者参加型でエコに取り組むのが、マルシェの姿勢である。

 しかし、来店時に持参し忘れる顧客が多かったことから、東京都江東区のFC店「八剣伝 森下店」では、「地球にやさしい愛のマイ箸キープサービス」を一昨年の7月に始めた。これは、「マイ箸」を店内の棚で預かるというものなのだが、好評を博し、既に1200膳を越えるキープ数となっている。

「マイ箸キープを始めてからは、お客さんの名前を覚えるようになりました。お客さんがいらっしゃれば、言われなくてもさっとマイ箸を出せるように、心掛けたのです。今までと親近感が違ってきましたから、身近な接客ができるようになり、来店頻度が確実にアップしています」と、同店を経営する小沼商事・小沼義四郎社長は「マイ箸」キープの効用を語る。

 小沼氏は脱サラして「八剣伝」を始めてから20年になるが、従来は常連であっても名前を知らない顧客が数多くいたという。しかし、「マイ箸」キープを始めてからは、常連を名前で呼ぶようになり、ポイントカードから来店頻度も把握できるようになった。必ずグループでやってくる常連は、ファイルの中に一括して「マイ箸」を保管するようにして、さっと出せるように工夫した。

 34席あるが1日平均2.5回転ほどする。顧客単価は2350円で、男女比は6:4で男性がやや多い。顧客層は40代が平均で、近所の小さな工場などに勤めている人が多いが、休日は家族連れが多く、営業が始まる夕方5時で満席になる日が大半だそうだ。なので20代から80代、90代まで、顧客の幅は非常に広い。

 人気メニューは、石焼ビビンパ、石焼そばめし(共に580円)、ぶっかけキムチそうめん(480円)、ドリンクでは「オロナミンC」の焼酎割りであるパンチサワー(390円)など。

 飲食店の店員に自分の名前を覚えてもらえるのは、顧客にとって嬉しいものだ。「マイ箸」キープサービスは、今では全店規模で実施されており、「八剣伝 森下店」に続く成功例が続々出てきているという。


マイ箸キープ棚


全文(有料会員専用)の見出し
マイカップを持参すると割引に、コーヒー産地支援も
食器・包装を非石油製品に転換、生ゴミの減量化も徹底
古いユニフォームをエコバッグに、夏休みイベントで配布
フードマイレージの考え方でガソリン節約、保存剤不要
風力・太陽光発電を照明に活用する省資源提案型カフェ
屋上緑化、IH調理、有機食品とエコ満載の海の家も登場
エコノミーとエコロジーの両立を目指す真剣な取り組み
(写真全27点)

【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2008年8月26日執筆

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