フードリンクレポート
フラダンスブームで女性に支持されるハワイアンダイニング。
フラダンスショー
・恵比寿と湘南にハワイアンが集積したリトルハワイ出現
日本人のハワイ好きは今に始まったものではないが、なぜかハワイアンダイニングの店がじわじわと増えて確実に浸透しているような気がする。
実際にそれは気のせいではなく、「マウカメドウズ」、「アロハテーブル」、「クアアイナ」などといったチェーンが駅ビルや商業施設によく入っていて、おおむね好評を博していることからも、最近10年ほどで、支持が広がっていることが知られるのである。
その背景には女性に人気のフラダンスのブームがある。
「弊社の調べでは日本のフラダンス人口は40万人いて、さらに増えています。東京でフラの教室は電話帳に登録されているだけで115軒あり、中高年女性から若い女性へ広がっています。最近は小中高生も結構多いですよ」と語るのは、「マウカメドウズ」を展開するカフェ・マウカメドウズ・セクションマネージャーの入澤恒彰氏。
東京の恵比寿は最近、“リトルハワイ”とマニアの間で呼ばれるほどのハワイ関連のショップ、ダイニング、フラダンス教室のメッカとなっており、全部合わせれば20軒を越える集積になっている。1999年に広尾にあった老舗フラダンス教室「カフラオ・ハワイ」が恵比寿に移転したのがきっかけと言われているが、「ロコズ・テーブル・マハナ」、「ツナミ」、「ロコブルー」などといった、ハワイアンダイニングの代表店も、恵比寿にある。
一方で、湘南から東京へのハワイブームの波及という側面もある。おそらくハワイムードの店で最初にヒットしたのは、鎌倉・七里ヶ浜のカレーの名店「珊瑚礁」であり、特に1986年に海岸線の国道134号線沿いにオープンした「モアナマカイ店」は、オープンエアのテラスやたいまつを焚く、アロハシャツやムームーを着た店員が迎えるといった演出を目立つ形で世に問うた。
97年に横浜に「珊瑚礁」で修業した鈴木昌也総料理長を迎えた「サンアロハ」がオープンし、カレーのみならずハワイのローカルフードにも注力してヒット。湘南でも茅ヶ崎に98年「リキリキデリ」がオープンして、地元に元々あったサーフィンの文化と融合し、茅ヶ崎に独自のハワイアン業態の集積が生まれた。そして、2000年にサザンオールスターズの「TSUNAMI」が、同年シングルCDのトップセールスを記録する大ヒットとなって、ハワイブームが盛り上がった面もある。恵比寿のハワイアンダイニングの代表店「ツナミ」の店名が、サザンの楽曲に由来するのは明らかである。さらに、2006年には映画「フラガール」のヒットがあった。
ハワイの料理には日系人の発想が多く取り入れられていて、代表的料理の「ロコモコ」というのは要はハンバーグ丼である。ただし牛肉の肉汁からつくられるアメリカ料理らしいグレイビーソースは、ぼやけたような味になることが多く、このソースを日本人の口に合うようにどう改良するのかが、各シェフの腕の見せどころになっている。
そのほか、「スパムむすび」、もち粉を使った唐揚げ「モチコチキン」、「スペアリブ」、「ガーリックシュリンプ」、サーモンマリネの「ロミロミサーモン」、「アヒ」と呼ばれるマグロのポキ(ヅケ)、白身魚「マヒマヒ」のフライなど、ハワイ料理はどこか日本で見たことのあるような料理が多く、日本人になじみやすい面がある。
コーヒーも名産のコナコーヒー、アルコールも「ブルーハワイ」、「マイタイ」などさまざまなトロピカルカクテルがあって、女性受けしやすいと言えるだろう。
一方で、日本人のハワイへの観光客は、ハワイブームと裏腹に最近10年減り続けており、ハワイアンダイニングの中には顧客の大部分が実際にハワイに行ったことがない店も存在するのである。そのあたり、ハワイを忠実に再現するばかりが能ではなく、いかに日本人のハワイへの憧れを表現するかが重要なこの業態のポイントがある。
「ロミロミサーモン」(880円)
全文(有料会員様専用)の見出し
・平日にフラダンスショーを目当てに女性が押し寄せる店
・ハワイのローカルフードを日本人向けの味にアレンジ
・現地の食べ歩きからつかんだ食文化を伝えるべく起業
・横浜の観光客から支持される、カレーが自慢の行列店
・チャコールグリルとナチュラルハーブの提案が好感触
・ハワイアンフード強化を打ち出すコナコーヒーチェーン
・茅ヶ崎から発信する日本発パシフィック・リムとは?
・ハワイに行った気にさせる癒し空間をいかにつくるか
(写真全39点)