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フードリンクレポート


【緊急提言】
「神奈川分煙条例」骨子案、ちょっと待った!
中小は分煙投資できるか?

2008.9.26
神奈川県が本年4/15に発表した、飲食店を含む公共施設での禁煙条例化への反対意見が強く、9/9に半歩後退して分煙を認める骨子案を作成した。一見、安堵できる内容だが、実は落とし穴がある。神奈川県は、9/16〜10/27まで意見をメールなどで求めている。この期間に再度、議論を盛り上げよう。


分煙条例で、飲食店は分煙投資を迫られる!

「分煙」基準、秒速0.2mの風が作れるか

 9/9に発表された「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例(仮称)」骨子案の最大のポイントは、分煙を認めたことだ。条例の名称が「禁煙条例」から変わった。
*全文は下記
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/kenkou/gan/pubcom/pdf/tobacco_kosshian.pdf

 同文書4ページに書かれた分煙の具体的な方法は、
・喫煙区域と非喫煙区域とを仕切り等で分離する。
・喫煙区域にたばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出するための屋外排気設備(換気扇等)を設ける。
・非喫煙区域から喫煙区域に向かう空気の流れ(0.2m/s以上)が生じるようにする。

 タバコの煙が非喫煙席に行かぬよう、秒速0.2mの風を作ることを求めている。女性のスカートがそよぐ程度の風だが、それを作りだすには膨大な換気設備が必要。戸建の店舗なら壁に穴を開けて換気扇を設置すれば良いが、ビルインタイプの店舗はダクトの大幅な工事が必要であり、排気され続ける空気を冷やしたり温めたりするためにエアコンのパワーの見直しも必要になる。

 そもそも、秒速0.2mは、厚生労働省が2002年に健康増進法に基づいて定けられた分煙効果を図る参考値。この秒速0.2mは努力目標。分煙しているかどうかを認定する数値ではない。秒速0.2mを作りだす難しさを分かった上での努力目標だ。

 ところが、神奈川県の骨子案では、秒速0.2mが分煙しているかどうかの認定基準の1つとなってしまっている。分煙Gメンが、抜き打ちで店に現れ、秒速0.2mに達していなければ罰金、ということにもなりかねない。

 この秒速を実現させるための設備投資を中小外食企業が全店で行うには現実には難しいだろう。今のところ補助金には神奈川県は触れていない。

 設備投資ができない飲食店は、分煙ではなく全面禁煙を選ばざる得なくなる。すると、喫煙客は資本力のある分煙設備が整った大手チェーン等へ流れ出そうだ。特に、喫煙率の高い居酒屋やカフェの経営は厳しくなる。

 キャバレー、ナイトクラブ、バーなどは3年間の猶予期間が認められるが、3年後には分煙か禁煙かを突きつけられる。


横浜市長も「ノー」

 関内、中華街、みなとみらいなど繁華街を抱える横浜市。その中田宏市長は神奈川県の分煙条例に反対を表明している。飲食店が多く、重要な産業である横浜市にとって分煙は、痛手。しかも、飲食店の大半を占める個店が、チェーンに比べて不利になる。横浜市に出店しようという外食企業も減りそうだ。条例の対象エリアから横浜市は除外して欲しいとまで中田市長は話している。

 松沢成文・神奈川県知事は、禁煙条例をマニフェストとして、2007年4月に知事2期目を当選。松沢知事にとっては、何としても通したい条例。建前論では、賛成せざるを得ないような内容だが、中小企業の経済活動の破たんを招くような条例はいかがなものか。

 喫煙者が多いカフェや居酒屋業態では、この条例案に従うと、全面禁煙にするとお客が来なくなる、完全分煙にすると膨大な設備費用がかかるというジレンマに陥ってしまう。

 スターバックスでは屋内は全面禁煙だが、一部店舗ではテラス席が設けてありそこでは喫煙できる仕掛けが施されている。スターバックスでさえ、実は喫煙者を意識している。

 居酒屋は食事と酒を両方楽しめる、日本独特の業態で、しかも最も店舗数が多い業態。お客の滞在時間が長くタバコとは縁の深い業態。会社の宴会などで、喫煙者と非喫煙者が隣り合わせになることも考えられる。しかし、喫煙者の上司が無理やり非喫煙者の部下を隣に座らせる、パワーハラスメントのような行為が許される時代ではないだろう。

 ニューヨークは全面禁煙だが、歩道のところどころに大きな灰皿が設置され、店を出てきたお客がタバコを吸っているシーンをよく見かける。禁煙と非禁煙の場所が隣り合わせに用意されている。しかし、日本には歩道に灰皿はない。

 店が、喫煙できるかどうかをHPや店頭で告知することを徹底させ、店内は現状のままで、受動喫煙が厭なお客が店を明確に区別できるような手法でも十分のようにも思える。


分煙条例、賛否両論を神奈川県に届けよう!

 本件、神奈川県のメディアでは議論されているが、他府県では禁煙から分煙に収まったと理解して議論が冷めているように感じられる。このまま通れば、同様の条例が他都道府県でも採用される可能性が高い。

 外食業界の将来に大きく影響する条例。外食業界でさらに議論を盛り上げよう。下記のURLからアクセスし、メールで意見を神奈川県に届けよう。

パブリックコメント
意見応募期間:2008年9月16日(火曜日)〜平成20年10月27日(月曜日)
下記から神奈川県宛メールしてください。
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/kenkou/gan/pubcom/tobacco_pubcom02.html


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2008年9月25日執筆


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