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フードリンクレポート


食糧自給率アップの切り札「米料理」が、小麦粉値上げで注目集める。

2008.10.3
日本人の主食といえば米だ。しかし、昭和30年代に比べると1人あたりの米の消費量は半減しており、ニーズより米が採れ過ぎて値崩れするので、政府は減反して調整しているほどだ。一方で、小麦粉の値段は急騰、食糧自給率がカロリーベースで39%に落ち込むといったように、明らかに日本の食の事情はいびつになっている。そこで米を見直し、米料理の豊かさを率先して消費者に伝え、需要増につなげるのも外食の役割ではないだろうか。そうした視点で、米料理を特集してみた。


「DONBURI CAFE DINING bowls(ボウルズ)」の「特撰刺身丼」

米料理は奥深く、まだ広大な未開発ゾーンが残されている

 日本の食糧自給率は、農林水産省の統計によれば、カロリーベースで昭和35年度には79%もあったのに、平成18年度には39%まで落ち込んでいる。

 また、米の1人当たり年間消費量は、昭和40年度には111.7キログラムあったのに、平成18年度には61.0キログラムと、ほぼ半減しており、毎年のように減り続けている。

 一方で、現状、日本の小麦粉の使用量は年間約623万トンで、うち87%を輸入に頼っている。小麦の1人当たり消費量は、統計を見ると昭和40年代と実はあまり変わっておらず、肉などのおかずを多く取るようになったから、米の消費が減ったのだが、それにしても減りすぎではないのか。

 ニーズが減っているのに対して、米が採れすぎると、価格が暴落してしまうので、政府は減反政策を取っている。

 それに対して、小麦は大産地であるオーストラリアの干ばつや、アメリカでバイオ燃料用に小麦畑がトウモロコシに転作される状況が相次ぎ、世界的に需要が逼迫している。そうした状況を受けて、政府が製粉業者に売る小麦の価格が、昨年2回、1.3%と10%引き上げられ、さらに今年4月に30%も引き上げられた。しかも、今後改善される見込みもなく、もっと上昇するだろう。

 現状、スーパーでは、米は1キロあたり400円前後で売られているのに対し、小麦は200円前後と推定されるが、見る見るうちに差が縮まって、逆転する可能性すらあるのだ。また、複雑な流通を短縮すれば、米の値段はもっと下げられるはずだ。

 三笠フーズの工業用汚染米を食用に販売した事件は言語道断だが、米の流通ルートが極めて複雑で、その値段が中間業者によっていかにつり上げられているかが、わかってきた。

 ならば、今、米料理を見直して生産者の顔の見える米を使って、米の消費をアップさせ、ひいては減反を解消して、水田を復活させるような努力を、外食もしてみてはどうだろうか。休耕田が増えれば農村の産業基盤が衰退してしまう。そこを見なおす時でもあるのだ。

 新しい傾向として、米粉パンをつくろうという動きもある。パンが膨らむのは小麦に含まれるグルテンというタンパク質が関係しているが、米粉にグルテンを足せばパンになる。ところが、グルテンは小麦の粒の中に10%ほどしか含まれておらず、米粉パンを量産すれば、グルテン製造のためにより多くの小麦粉を消費することにもなりかねない。

 しかし、静岡県にあるグルッペ・石渡食品というメーカーは、静岡文化芸術大学の米屋武文教授と共同で、グルテンの代わりに増粘多糖類を使ってパンを膨らませる、米粉100%パン開発に成功し、三島市などにある4つの自社ショップと通販で、4月より本格的に売り出している。

 まだ、米粉の原材料費が高いので、バンズ1個150円、食パン1斤500円と値段は高いが、小麦アレルギーの人などに好評。米を米粉にする機械に補助金もつく方向なので、今後米粉の生産が増えて安くなると、値段は下がるだろう。

 ラーメンの「麺屋武蔵」も、この夏、米粉で打った冷やし麺を季節限定品として提供。好評につき第2弾を検討中とのことだ。

 しかし、もっとシンプルに、ご飯のおいしさをアピールできる米料理はたくさんある。

 日本食の寿司、おにぎり、お茶漬け、牛丼、天丼、マグロ丼などの丼もの、インドのカレー、韓国のビビンパ、中国のチャーハン、お粥、シンガポールのチキンライス、ハワイのロコモコ等々。

 ヨーロッパでも、イタリアのリゾット、ピラフ、スペインのパエリアなどは典型的な米料理だ。洋食では、オムライスやハヤシライスも忘れてはならない。

 また、米からつくった麺も中国のビーフン、ベトナムのフォーなどがある。

 この多くはファーストフードとして業態開発が可能である。八十八楽(こめらく)のように従来、専門店として成り立ちにくかったお茶漬けで、新しくダイニングを構築した例もある。

 まだまだ、奥深く未開発ゾーンが数多く残る、米料理の魅力を探っていこう。


「バンズキッチン」の「エビ小悪魔オム」

全文(有料会員様専用)の見出し
鎌倉の素材を生かした、多彩な丼を創作する和風カフェ
老舗の米屋が厳選した米を、無添加スープで炊くお粥
ふんだんな野菜と十穀米で提供するヘルシー・ビビンパ
大使館員も愛用するシンガポール名物・海南鶏飯専門店
ベトナム・ハノイの麺料理フォーの味覚を東京で再現
大粒プリプリのエビ入りがうれしい新感覚オムライス
植竹隆政シェフ監修、東京駅エキナカでリゾットを

(写真全30点)

【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2008年10月1日執筆

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