RSSフィード

フードリンクレポート


「buchi」新業態、1/9オープン。
「ハイブリッド・トラットリア」って何だ?
東井 隆氏
株式会社 東美 代表取締役

2008.12.10
2004年、渋谷・南平台の交差点に突然現れ、カップ酒と立ち飲みをブームにした「buchi」。東美の東井氏の直営1号店。そして、06年フレンチ「bongout noh」、07年和食「金菜」、スペインバル「kitchen cero」をオープン。多様な業態に挑戦し続ける東井氏。そして、不況を逆手にとって09年1月、新業態「HYBRID TRATTORIA cujorl(ハイブリッド・トラットリア クヨール)」を開店させる。


「5分間燻製した仔鴨のローストwithエスプレッソのソース」2800円(予定)

NYと各国で10年、日本人女性シェフが作る「ハイブリッド・トラットリア」

 1/9(金)にオープンさせる「ハイブリッド・トラットリア クヨール」。場所は渋谷・桜丘町、インフォスタワーの裏手の1階。24坪で30席のゆったりとしたレストラン。

「もともとこのエリアを探していた。はずれた場所。レストランを作りたかった。周囲にちゃんとした店がなくて、ランチが見込める。ランチのために最初はイタリアンを考えた」と東井氏。

 そして出会ったのが、船越雅代シェフ。船越シェフは、彫刻を学ぶために単身、米ニューヨークに渡る。その後、自分に合ったベストの表現手段として料理を選択。調理学校に通い、NYの名店「Gramacy Tavern」「WD50」、パリの「Astrance」などで働いた。その間、パリやジャカルタのレストラン、オーストラリア人富豪の所有する船でお抱えシェフとしても働く。世界中を回った経験を基に、ボーダーレスな料理を得意としている。

 船越シェフが日本に一時帰国した際、日本の飲食店で働いた経験のないため、スクーリングパッドで学んだ。そこで講師を務めていた東井氏に出会う。

「彼女が山梨の人気ワイン『ボーペサージュ』を扱っていると聞きつけて、うちの店に飲みに来てくれた。将来何をやりたい、とか話した。イタリアンの開店の話もした。彼女は、興味はあるけどイタリアンをやってきたわけじゃないし、自分の料理、NYやパリや世界各地で進化してきたフレンチだと。」


東井氏(右)と船越シェフ(左)。「buchi」カウンター前で。

「僕は、料理にはジャンルはないと思っています。新店はイタリアンでも何でもいいかもしれないと方向修正したら、彼女がやってみたいと言い出した。」

 そして生まれた新料理ジャンルを東井氏は「ハイブリッド・トラットリア」と名付けた。「トラットリア」はイタリアン、ハイブリッドは英語。パスタはあるが、フレンチを中心にイタリアンと融合したような料理です。」

食材は、「日本のワインを勉強し始めて、畑も回るようになった。これから日本の食材が面白い。できるだけ日本の食材を使おう、安全なものを出していこうと思った。オーガニックを謳うんじゃなくて、作っている方の考えが分かる食材を使っていきたい」と言う。

「彼女がニューヨークに戻ろうと思った時、日本に残ってもいいかなと思った理由は、食材。日本は食材が世界で一番美味しい。日本人はモノにこだわる。生産者は年を取ったり後継ぎがいなくて減っている。他方、今、新しく参入している人たちは作り方を工夫している。工夫した食材が日本に溢れている。また、海外でしか手に入らなかったもの、例えばハトや洋野菜も日本で作り始めた。」

 船越シェフも、「今からは日本が面白いんでは。帰ってきて日本料理店で働いた経験からも日本の食材レベルが高く、お客の料理に対する意識が非常に高いと思いました。その中でも、東井さんたちと一緒にやりたい」と働くことを決めた。

「食べに来てもらうためには、日常と一線を画した料理を提供して、良い意味で驚いてもらいたい」と言う。試作メニューを見たが、「葡萄の枝に巻きついた真蛸の炭焼きwith赤ワインのツメ」「プリンの食感を目指したフォワグラwith温かい鰹だし」「5分間燻製した仔鴨のローストwithエスプレッソのソース」「長野産鹿肉のラグーwith鹿せんべい」など、どんな見た目や味なのかワクワクさせる料理が並んでいる。さらに、ホールは2人のイタリア人。

「ハイブリット・トラットリアって何だろうな、イタリア人がサービスしてくれて、料理が出ると、何、この料理みたいなことをやってみたい」と東井氏は目を輝かせた。

 この内容で、パスタ中心のランチ1000円、ディナーは7000円の客単価を想定している。不況の中でも、手の届く憧れのレストランに仕上がりそうだ。

 店名の「クヨール」。実は、広島弁の「食いよる」をフランス語風にしたもの。「ブチ」も広島弁からきている。

全文(有料会員様専用)の見出し
広島から上京。「炉端キュイジーヌJYU」を8店、20億円に
「JYU」倒産。女将と「buchi」開店
「buchi」、黒字になるのに半年
合理的じゃないことをウリにする
(写真全8点)

■東井 隆(ひがしい たかし)
株式会社 東美 代表取締役。1964年生まれ。広島県出身。デザイナーを目指して上京。アルバイトから飲食に目覚め、「炉端キュイジーヌJYU」をプロデュース。8店舗にまで育てる。2003年「東美」を設立し、飲食店プロデュース業を始める。04年、直営1号店「buchi」をオープン。現在、直営4店、09年1月に直営5店目「クヨール」をオープンさせる予定。

「クヨール」(2009年1月9日オープン予定)
東京都渋谷区桜丘町22-8 アガタビル1F
電話03-5784-5818
営業時間11:30〜24:00

株式会社 東美 http://www.to-vi.jp/

【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2008年12月5日取材

Copyright(C) FOODRINK CO.,LTD All Rights Reserved


Page Top