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フードリンクレポート


東京コレクションの料理版
世界に最先端の料理を発信する「世界料理サミット TOKYO TASTE」
2/9〜11開催!

2009.1.5
スペインから始まった料理学会の潮流が、日本にもやってきた。ジョエル・ロブション氏、ピエール・ガニエール氏、そして「エルブリ」のフェラン・アドリア氏など世界中の有名シェフが東京国際フォーラムに会し、目の前で調理技法を披露してくれる。シェフなどプロ向けのイベント。仕掛け人、服部栄養専門学校校長、服部幸應氏に意気込みと見どころを聞いた。


「世界料理サミット TOKYO TASTE」のパンフを手に持つ、服部幸應氏。

2004年招待された、「マドリッド・フュージョン」から刺激

 現在、世界の料理の最先端はスペインと言われている。それを牽引しているのが、1998年にミシュラン3つ星を獲得した、カタルニア地方の辺境にある「エルブリ」のフェラン・アドリア氏。世界中の料理に影響を与えている。現在、白い皿が主流だが、それも「エルブリ」の影響。

「あ、これフェランの料理だなと感じることがあります。どんな良いことをやっても、フェランの真似と思われるほど影響力が強い。フェランが2004年に来日した時、柚子が素晴らしいと言ったので、柚子を瓶に詰めて持って帰らせました。そして、翌年、フランスに行ったら、皆が柚子、柚子と言うんです。さも、昔から使っているように。でも、実はフェランの影響なんです」と、服部氏は「エルブリ」の世界への影響力を実感している。

 そもそも、スペインは1939年からフランシスコ・フランコ将軍のもと軍事独裁政権下にあった。75年にフランコ将軍が亡くなり、民主化の道を進む。独裁政権下で抑え込まれていた文化が一気に自由化された。食も自由化。そして、フランスの3つ星レストラン「ポール・ボキューズ」や「トロワグロ」などに留学する料理人が現れた。帰国すると、スペインは遅れているとの危機感を持ち、各地での勉強会が盛んになった。

 この勉強会は料理学会としてアカデミックになり、シェフ同士がお互いの技術を開示して、さらに上を目指そうとする環境にある。「エルブリ」は辺境にあり、フェラン・アドリア氏は特殊な料理を作らないと、お客を呼べないと考えて、独創的な料理を生み出した。金持ちの間で面白い料理として話題に。噂を聞きつけ、ロブション氏も行くが、どうやって作るのか自分でも分からなかったという。ロブション氏は、アドリア氏のことを100年に1人の天才だと讃え、フランスで発表。「エルブリ」は全世界で一気に有名となった。

 2004年、服部氏はその料理学会の1つ、「Madrid Fusion マドリッド・フュージョン」に招待される。日本からは、中華料理「トゥーランドット」の脇屋友詞氏、日本料理「京都吉兆嵐山本店」の徳岡邦夫氏も同行。服部氏は寿司ブームで増えた生魚の扱い方を、脇屋氏は中国茶を使った蒸し物を、徳岡氏は八寸をレクチャーした。

 中でも、喝采を浴びたのが、米国から参加した「NOBU」の松久信幸氏。エスプーマや真空調理機など様々な機械を駆使してデモンストレーションするシェフが多い中、松久氏は包丁1本で舞台に上がり、会場から大きな拍手が贈られた。

 その後も、服部氏はスペインの料理学会に参加。他国でも同様の学会の開催が始まりだした。

「日本でもやらなきゃ、と思いました。アジアでは誰もやってない。年々、参加者に上海、台湾、韓国、シンガポールなどアジア人が増えてきました。でも、日本人はいない。こんなことやってると、日本人は負けちゃうなと思い、よしこれを日本でやろう決めました」と服部氏。


ポスター


有楽町・東京国際フォーラムにて、2/9(月)〜11(水)3日間開催

「世界料理サミット TOKYO TASTE」は、世界を動かすシェフと料理研究家、約20名を東京に招いて、2/9(月)〜11(水)の3日間、東京国際フォーラム地下の5千平米の展示ホールを借り切って開催される。日本最大級のプロ向け料理イベントとなる。

 展示ホールにステージを組み、厨房を設営。観客席は約1000名。世界から招待された有名シェフが各人50分の持ち時間で次々とステージに登場し調理実演。観客は大型プロジェクターを通して彼らの技術をまじかに学ぶことができる。

「TOKYO TASTE」の命名について、「皆に紹介するときに何と言えば分かりやすいか考えました。服飾の先端を作るファッション業界は、ミラノコレクション、NYコレクション、パリコレクションと呼ばれています。その料理版を作ろうということで、『東京テイスト』という名前を思いつきました。英国でも同じように『ロンドンテイスト』として料理学会を立ち上げる動きがあるそうです」と服部氏。


スケジュール(ポスターより)

 今回、ジョエル・ロブション氏、ピエール・ガニエール氏、そして「エルブリ」のフェラン・アドリア氏を始め、世界から有名シェフや研究家が参加する。

 例えば、フランスで味覚研究所を創設した味覚の権威、ジャック・ピュイゼ氏。子供の味覚教育にも傾注し、10月第3週目の1週間、フランスの全小学校で味覚教育期間を一斉にやる運動を起こした方。

 分子料理学の提唱者で物理化学者、エルベ・ティス氏(仏)。その分子料理のプリンスと言われる、グラント・アケッツ氏。アケッツ氏は舌がんで舌を無くしたシェフ。しかし、全米一のシェフにも選ばれた偉人。ベートーベンが耳が聞こえないのに作曲できるのと同じ。ハンディを持つ人に希望を与えてくれる。

 そして、英国のヘストン・ブルメンタル氏。彼のレストラン「The Fat Duck」は、雑誌「レストラン」で2005年、「エルブリ」を抜いて1位となった。

 日本人は、米国から「NOBU」松久信幸氏、オーストラリアから「Tetsuya’s」和久田哲也氏、日本から「京都吉兆嵐山本店」徳岡邦夫氏、「龍吟」山本征治氏、「NARISAWA」成澤由浩氏がステージで調理を見せる。

 参加者全員と各人の詳細は下記でご覧いただきたい。
http://www.tokyotaste.net/jp/chef/chef.html

 チケット代は、1日3万円、3日間通しで6万円など。後援・協賛企業や、調理師学校学生には割引。ちなみに、2009年1/19〜22の4日間開催される、スペインの「マドリッド・フュージョン2009」の参加費は590ユーロ、約7万5千円。世界の先端の料理技術が見られ、直ちに自分でも取り込むことができる技術を公開してくれる訳なので、非常にリーズナブルな価格と思われる。

 日本料理は世界で人気を博している。味噌、醤油、寒天、そして出汁も旨味も外国人シェフが使っている。枝豆も「edamame」として世界に知られている。「TOKYO TASTE」は、更に奥深い日本の食文化を世界に発信するチャンスだ。服部氏は世界のグルメ・ジャーナリスト60名も招待している。東京が料理の先端として世界に認知させる仕掛けも整え、世界の料理業界が待ち望む定期的なイベントとして定着することを期待したい。


世界料理サミット2009 TOKYO TASTE http://www.tokyotaste.net/
Madrid Fusion  http://www.madridfusion.net/index2.php?lang=EN

【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2008年12月22日取材


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