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フードリンクレポート


【酒類大手4社の2009年】
角ハイボールでウイスキー復活のチャンスを掴んだ!
サントリー株式会社

2009.2.9
飲食店に、商品を供給するだけでなく情報面等でも支援を行っている酒類企業。大手4社に2009年の業務用の販売戦略を取材する4回シリーズ。第2回は角ハイボール人気で、ウイスキー復活のチャンスを掴み、勢いづくサントリーを取材した。


小雪が出演する、角ハイボールTVCMCM。

シングルモルトが先鞭をつけたハイボール人気

 ウイスキー市場の低迷の中でも、単一蒸留所のモルトウイスキーだけから作られたシングルモルトウイスキーは、ここ数年来2桁増で伸び続けてきた。同じ大麦が原料にもかかわらず、驚かされる程の香りと味のバリエーションが生まれる神秘性と、自分の好みを探す面白さが、消費者を魅了し、オーセンティックバーやホテルバーを中心に浸透、うんちくを知りたがるお客に、足を運ばせる商材として、業態を越えて取扱いのお店が増え、ますます人気に火がついたという背景がある。

 ベースのボリューム拡大もあり、昨年は5%増と伸びは鈍化したものの、シングルモルトウイスキーは特に業務用市場ではなくてはならない品揃え商品となっており、ブーム的な位置づけから、確固たるジャンル市場へと、ステージも確実に変わったようだ。それを見越して、サントリーはこれまで「山崎」「白州」「ザ・マッカラン」「ボウモア」等のシングルモルトウイスキーブランドを主力に、ウイスキー復活の尖兵として、お客様接点を拡大、ターゲット、飲酒機会開拓に力をいれてきた。


左から、「山崎12年」「白州12年」「ザ・マッカラン12年」「ボウモア12年」

 近年は新たな愛好者として女性をターゲットにしたシングルモルト啓蒙活動もスタートさせており、女性がカフェやホテルバーでチョコレートやスイーツとともにシングルモルトを楽しむシーンも見られるという。同じ原料でも土地、樽、水、貯蔵年数などで異なるシングルモルトが、シャトーワインのイメージと重なって、女性達を魅了し始めたといえるのではないか。


山崎・白州両蒸溜所で「シングルモルト&ショコラ」セミナー開催。

 さらに、食とのマリアージュの試みも始まった。ホテルでは、モルトウイスキーと料理を合わせたコースメニューまで登場。「ウイスキーは面白い!」と感じる方々が増えている。


ホテルグランヴィア京都と共催で「山崎と京料理」を開催。

 またサントリーは、ウイスキー普及には伝道師が必要と、まずは社内からウイスキーの美味しさ、奥深さを広めることのできるウイスキーのプロフェッショナルを生み出すべく、一昨年から各チャネルの営業担当者を中心に、社内向け資格「ウイスキーアンバサダー」の養成を始めた。そして、彼らが中心となり、オーナー、バーテンダー、ソムリエ等販売のプロの方々にも推奨者となっていただくべく各地域でセミナーを開催している。

 シングルモルト愛好者の増加とともに、飲み方も、ストレートやロックと言った本格的なものから、ソーダ割りへと広がり、ウイスキーとソーダの相性の良さが再認識されていった。

 こうしたシングルモルトウイスキーの流れが、昨年大ブレークした「角ハイボール」のブームへと繋がっていった。


角ハイボールでウイスキーにエントリー

 冷えたサントリー角瓶を、冷えたグラスに注ぎ、冷えたソーダを注ぐ。氷を使わない角ハイボールを古くから続けてきたバー「サンボア」。オーセンティックバーの人気とともに、こんなユニークなスタイルのハイボールもバー愛好者の間に口コミで広がり、ハイボールブームに深みを付けた。


角ハイボールのTVCM。

 消費者調査によると、ウイスキーイメージは、「若い人は飲んだことがない」、「古臭い」、「カッコつけて飲む」、「サラリーマンのうんちくの酒」、「敷居が高い酒」。しかも、最近は飲みに行っても1軒目の食事だけで終わり、しかも、そこにはウイスキ—はない。飲む場所がなくて、良さが伝わってないことが判明した。

 そこで、サントリーは幅広い層で根強い人気のある「角瓶」と「ソーダ」のハイボールに2年前から注力しはじめた。ソーダではなく、ハイボールという名称が、若い人には新鮮で、中高年には懐かしく響いた。そして、店で出された時に、薄かったり濃かったりして、水割りのイメージが低下したという経験から、角ハイボールは、ウイスキーとソーダの比率や、冷やし具合を一定にするための飲用時品質が徹底された。その究極策が、ハイボールタワー。酎ハイのように一定の比率でプレミックスされステンレス樽にいれられたハイボールを、こだわりのガス圧で、しかも特注ディスペンサーで抽出する。


ハイボールタワー。

 さらには、2008年12月、ウイスキーの発信基地として「Splitz'Aoyama(スプリッツ アオヤマ)」を東京・青山にオープンさせた。30代の働く女性をメインターゲットに「気軽にウイスキーを楽しめるお店」というコンセプトで、アルコール度数を低くした角瓶のソーダ割り「スプリッツ・バイ・カク」と名付けて紹介している。女性にも向けて、角ハイボールの訴求を始めた。


「Splitz'Aoyama(スプリッツ アオヤマ)」のバルコーナー


「Splitz'Aoyama(スプリッツ アオヤマ)」のバーラウンジコーナー


アルコール度数を低くした角瓶のソーダ割り「スプリッツ・バイ・カク」

 角ハイボールでウイスキーのイメージを、「自分たちのウイスキー」に変えようとしている。アルコール分は6〜8%と低く、口当たりが良く、爽快感がある。料理に合い、油っこいものの油を落としてくれ、お腹にたまらない。しかも、プリン体も低い。初めて飲んだ人からも「気楽に飲める」「ウイスキーというより、爽やかで美味しい」などの好評価を受けている。若者のウイスキーへのイメージが変わった。

 実際に、角瓶レギュラーサイズは昨年、前年比113%と、ウイスキーの中では異例の伸びを示した。


角ハイボールで酎ハイを狙う

 サントリーは、居酒屋で酎ハイの代わりに角ハイボールを売り込もうとしている。酎ハイを飲む感覚で、ウイスキーを飲んでもらおうとしている。

 原価面でも、チューハイほどではないが、ビールに比べて利益率が高い。しかも、お客の間で酎ハイに飽きがある点を狙っている。想定するのは420mlジョッキを使い、角瓶1:ソーダ4で割ったものを、400円前後で販売してもらう。アルコール度数は氷を入れて6%、氷なしで8%。酎ハイよりも客単価が上がり、目新しいメニューでお客も楽しんでくれる。実際に導入した店では、ドリンクの内、2〜5割が角ハイボールを占めるという。

 サントリーの各支店ごとにエリア特性を前面に打ち出して、地元の名物料理と角ハイボールを合わせるキャンペーンを展開している。例えば、北海道はジンギスカン、東京の月島ではもんじゃ、福岡はモツ鍋。
 
 ハイボールタワー(前出)の設置店は「角ハイボール酒場」と名付け、昨年は70店できた。2009年は一気に500店を狙う。さらに角ハイボールのメニューを取り入れた店は、昨年1万5千店できたが、2009年は2万店に拡大させるのが目標だ。


角ハイボール酒場、「焼もん屋かば」(東京・五反田)の店内ディスプレイ。


海外で高評価を受け出した日本のウイスキー

 最近、日本のウイスキーの評価が高い。サントリーの山崎は海外のコンペションで毎年のように賞に輝いている。昨年も、米国最大かつ国際的なコンペティションSWSC で、山崎18年が最優秀金賞を受賞した。海外の酒類展示会では山崎のブースに数多くの人が集まってくる。


英国際コンペティション「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ2008」にて、2004、2006、2007年、2008年と4回目の「最高賞」を受賞。

 山崎の輸出も増えている。昨年の日本国内での販売数は14万5千ケース、4%増。しかし、輸出は1万8千ケース、何と8割増。ヨーロッパに8千ケース、米国に3千5百ケース、中国に3千5百ケース、台湾に2千5百ケースなど、世界中に輸出されている。この海外での人気を日本人にも知ってもらいたいという。

 シングルモルトウイスキー、角ハイボール、海外での山崎人気と、ウイスキー復活への兆しが見え始めた。ビール系飲料でプレミアムモルツ、金麦をヒットさせ、2008年ビール3位に躍り出たサントリー。2009年は、お家芸であるウイスキーの復活に余裕をもって挑む。


サントリー株式会社 http://www.suntory.co.jp/

【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2009年1月22日取材


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