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フードリンクレポート


ノンアルコールカクテルもバラエティ豊かに。
低アルコール市場が加熱中。

2009.5.15
若者のアルコール離れに代表されるように、消費者の飲酒頻度低下に歯止めがかからない。健康志向の高まりや、郊外型店舗では道路交通法改正に加え、高速道路料金値引きによる車での外出増加が追い打ちをかける。そうした中、市場拡大が期待されるのが低アルコールやノンアルコールタイプのドリンクだ。飲料メーカーは低アルコール・ノンアルコールドリンクの販売を強化しており、飲食店側も魅力的な商材探しに余念がない。今回は、オリジナリティある低アルコール・ノンアルコールカクテルを提供することで集客に成功している2店舗を取材した。


カルピスより好評発売中の業務用飲料「マリアーナ」ラ・フランス450ml 580円。

ノンアルコールのハワイアン・カクテルを看板商品に

 1軒目は、代官山・旧山手通り沿いに3月26日オープンした「ALOHA TABLE Daikanyama Forest(アロハテーブル ダイカンヤマ フォレスト)」。「アロハテーブル」はゼットンが展開する人気のハワイアン・カフェ&ダイナー。4月にはワイキキ本店のオープンで“逆上陸”を果して話題となった。

 ここ代官山店は、店名通り森を思わせる緑に囲まれた何とも開放感あふれる空間。カウンターにはカラフルな酒のボトルが並び、玄米や野菜中心のヘルシーなハワイ料理に合わせ、ワイン、ビール、カクテルなどを多彩に揃えている。


「ALOHA TABLE Daikanyama Forest」 広々としたテラス席はペット同伴もOK。


ハワイアン・ミュージックが流れ、リアルなハワイのカフェ&ダイナーを再現。

 とはいえ6〜7割が女性客で、ファミリー客も多く、またパーキングが隣接していることもあって車での来店が3割弱を占める。1日を通してソフトドリンクとアルコールのオーダー比率は半々といったところで、アルコールの方も“軽く1,2杯”というお客が主流という。

 そんな同店で看板商品のひとつとなっているのが、オリジナルの「ノンアルコール・アロハカクテル」(全3種)だ。一番人気の「マンゴー・チチ」は、濃厚なマンゴー果汁入りで飲みごたえがあり、ノンアルコールの物足りなさを感じさせない。


マンゴー・チチ(右)650円など、人気のノンアルコール・アロハカクテル。

 店長の田中俊一氏は「カクテルをアルコール抜きにしてほしいというオーダーも多く、今後はノンアルコール・低アルコールの両方に対応できる商材を積極的に取り入れていきたい」と話す。

【ALOHA TABLE Daikanyama Forest】
住所:東京都渋谷区猿楽町17-10 アスロニアヴィレッジ1F
電話番号:03-5456-7033
営業時間:11:00〜23:00
定休日:不定休
客席数:47席+テラス席
客単価:3000〜3500円
経営母体:株式会社ゼットン


“二毛作商材”が注目

 こうした「アルコールでもソフトドリンクでも提供できる」、いわば“二毛作商材”が低アルコール市場で熱い注目を集めている。

 そのひとつが、カルピスが08年10月に発売した「Marianna(マリアーナ)」ラ・フランスだ。カルピスが保有する乳酸菌で発酵したラ・フランス果汁をブレンドした業務用ノンアルコール飲料で、炭酸水で希釈するほか、焼酎、泡盛、白ワインなど様々な和洋の酒や他の果汁とブレンドして提供することが可能。ラ・フランスの優雅な香りと上品な味わいが、ハイエンドな外食シーンにもマッチすると評判だ。


「マリアーナ」カクテルを漁港直送の旬魚と堪能

 実際にこの「マリアーナ」を使ったカクテルを提供している「魚米(うおべい) 新宿店」を訪ねた。

 新宿駅にほど近い飲食店密集地ながら、ビル地下にある店内は隠れ家的な寛ぎ感に満ちている。テーブルや座敷席も備える中でまず目を引くのが、イキのいい旬魚や干物が並ぶカウンター。ここは全国の漁港から毎日直送される魚介を、好みの調理法で提供する鮮魚料理が売りだ。


「魚米 新宿店」 繁華街ながら、ビル地下にあって落ち着いたムードを醸している。


カウンターに盛られたその日入荷の旬魚や干物がシズル感を煽る。

 アルコールはビールから果実酒まで幅広く揃えるが、やはり魚に合う地酒、次いで焼酎が売れ筋。新宿店は20代後半の女性客が6〜7割を占めるにも関わらず、日本酒目当ての来店が大半という。

 そんな中で同店では、昨年11月から「マリアーナ」を炭酸割りしたノンアルコールドリンクと、焼酎と炭酸を加えた低アルコールドリンクを導入している。魚料理にカクテルは意外な組み合わせにも思えるが、実際味わってみると清涼感あふれるキレのよい味わいで、カクテルにありがちな甘ったるさとは無縁。ラ・フランスの爽やかな香りが口中をすっきりとさせ、和食と実によく合う。新宿店店長の佐藤伸生氏は「最初は食前酒としてお薦めすることが多かったのですが、日本酒や焼酎の“中休み”として楽しまれる方が多いですね」と話す。


マリアーナのノンアルコールカクテル500円。ラ・フランスの風味と炭酸の爽快感がマッチ。

 マリアーナの差し込みメニューを見て興味をもったお客がオーダーし、その香りや味に引かれ、同席者がオーダーするというパターンが多いという。意外や男性客や中高年層にも好評で、「集中的にマリアーナのオーダーが入り、驚くことがあります」と佐藤氏はその人気を語る。

【魚米 新宿店】
住所:東京都新宿区新宿3-35-10 ローヤルプリンスビルB1
電話番号:03-6240-8224
営業時間:月〜土 17:00〜24:00(L.O.23:00) 
       日17:00〜23:00(L.O.22:00)
定休日:無休
客席数: 75席
客単価: 4000〜5000円
経営母体:株式会社APカンパニー


更なる「二毛作商材」の登場が酒場離れの歯止めとなる

 「魚米 新宿店」の事例は、まさに低アルコール・ノンアルコールカクテルの潜在ニーズの高さを感じさせるものである。しかし、“飲まない派”にとって、「ソフトドリンクやメジャーなカクテルは抵抗がある」という声が多いのも事実だ。

 今後はマリアーナのように業務用のみでの販売といったレア度を持った「二毛作商材」の更なる登場が、消費者の“酒場離れ”の歯止めとなる低アルコール・ノンアルコールカクテル市場の活性化に、寄与すると言えそうだ。


【取材・執筆】 金原 由佳(きんばら ゆか) 2009年4月30日及び5月6日取材


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