RSSフィード

フードリンクレポート


小麦粉を媒介に外食に元気を提供したい。
日清製粉株式会社
フレッシュ・フード・サービス株式会社

2009.6.15
日本で消費される小麦粉の約4割のシェアを持つ日清製粉。小麦粉の用途を提案するために、子会社フレッシュ・フード・サービスで外食向け麺・ピザ生地・パン生地など小麦粉加工食品を販売し、イタリア料理店の経営も行っている。小麦粉の開発を通して、外食に元気になって欲しいという。日清製粉 吉田貴臣氏(営業本部第一営業部 営業企画課 )と、フレッシュ・フード・サービス 奈良高秀氏(商品営業部 部長代理)に聞いた。


ナポリピッツァ専用の小麦粉「ルスティカ」で作ったピッツァ。

30年前に「冷凍めん」の普及を始めた

 1978年、日清製粉は多年に渡る研究により開発した「冷凍めん」の普及のため、フレッシュ・フード・サービス(以下、「FFS」と略称)を設立した。うどんは茹で上がるのに10分ほどかかる。しかし、茹でたものを冷凍すると、解凍するだけの短時間でコシのあるうどんを提供できることがウリ。

 当時は、冷凍食品でさえ珍しく、冷凍めんを扱ってくれる外食店はわずか。そこで、1978年にFFSは直営で木鉢うどん割烹「どんど」を東京・日比谷に開店した。その後、当時としては最先端のFCシステムを導入し、約20店にまで拡大。しかし、冷凍めんの普及と共にその役割を終え、2005年には全て閉店する。

 日清製粉は、製麺会社に次の時代に向けて冷凍めんを作ろうという提案を行なうため、自ら冷凍めんを普及させようとした訳だ。現在は、冷凍めんは当たり前に使われているが、何と30年前から普及活動を行っていた。

「我々は、新しい技術を通して、お客様に元気になって頂きたいと考えています。製品提案や技術サポートをさせて頂きながら、その結果として小麦粉の市場を拡大することが我々の役割です」と、吉田氏は日清製粉のミッションを語った。

 現在、日清製粉はPBも含めて300種以上の小麦粉を販売している。輸入・国産小麦の配合、そして製粉技術の違いだけで数多くの小麦粉が生産されているのには驚かされる。その中からユニークなものを紹介する。


昔なつかしいうどんを作る「麺ノ鄙歌(めんのひなうた)」

  

 国内産小麦を100%使用。原点回帰志向に注目した、昔なつかしい小麦の味わい豊かなうどん用粉。小麦の灰分を0.55%含み、粉は黒色。

「小麦は胚乳の中心部ほど色が白く、外側になると灰分が高くなり色も黒くなります。灰分とは、小麦本来の味を感じやすい、いわゆるミネラル分です。お米は外側から製粉していきますが、小麦は固いので、まずは割って、内側から削っていきます。通常の白い小麦粉は中心部を製粉しているため、色が白くなっています。この麺ノ鄙歌は、外側の部分まで製粉しているため、色は黒い分、小麦本来の味わいを味わうことができるのです。」と小麦粉を説明する吉田氏。

 FFSでは、「麺ノ鄙歌」を使った、冷凍鄙ノ辺うどんを販売している。


きめ細かな全粒粉「スーパーファイン」

  

 小麦の表皮、胚芽、胚乳をすべて粉にした全粒粉。胚乳だけの通常の小麦粉と比べて栄養価が高い。健康志向で注目を集めている。

「今までの全粒粉は、せっかく栄養価が高くても粒が大きいため、パンへの高配合は難しく作業性も良くありませんでした。このスーパーファインは通常の小麦粉レベルまで微粉砕させたもの。他社にはありません。色は茶色。水も入り、高配合でも無理なく加工できます。今まで全粒粉が使いづらかったお客様でも使えます」と吉田氏。

「全粒粉は麺類にはつながりが悪く使えませんでした。スーパーファインは麺に混ぜることもできるので、ラーメン店でも採用するお店が増えてきています。新しいラーメンのカテゴリーができつつあります。たとえば今ブームのつけ麺の麺としてもイメージが合います」と加工商品の販売を担当する奈良氏。




デュラム小麦パンを作る「デュエリオ」

  

 パスタでお馴染みのデュラム小麦を日清製粉の独自製法で、パンに使いやすい小麦粉に仕上げた。パスタと同じく、焼いたパンは黄色くなる。

「デュラム小麦は硬質で、普通に挽くと粗引きになります。独自の製粉技術で細かく粉砕して オールパーパスにパンを焼くことができるようになりました。食感も普通の強力粉とは異なり、歯切れと口どけが良くなります」と吉田氏。

 イタリア南部では、デュラム小麦のパンが伝統的に食べられてきた。スローフードの影響で、北部のミラノでもデュラム小麦パンの人気が高まっている。

「料理人とパン職人の垣根が少し取れてきています。料理人もパンに興味を持ち始めました。パン職人も、料理の中でどうやってパンを活かしてもらおうかという考え方でパンを作る方が増えています。昔は互いに個性があり、どんなパンでも美味い料理に俺がしてやるという料理人がいましたが、今はすこし分かりあえてきています」と奈良氏。

FFSは、「デュエリオ」を使ったデュラム小麦の冷凍パンを販売している。

デュエリオパーネプリエーゼ

「日本のイタリア料理店はフランスパンを使っているところが多い。パンにまで思い入れを持っている店は少ないのが実情です。美味しい料理だからこそパンにも思い入れをいかがですか? フランスパンも美味しいですけどデュラムのパンはいかがですか? とお勧めしています」と奈良氏。


ナポリピッツァ専用粉「ルスティカ」



 FFSは、2000年からイタリア料理店「パルテノぺ」を、広尾、恵比寿、品川、横浜の4店を直営している。本物のナポリピッツァを広めるため。そこで培ったノウハウで生まれたのが、ナポリピッツァ専用の小麦粉「ルスティカ」。

「ピザはイタリア生まれですが、日本には米国から宅配ピザとして入り定着しました。90年代後半に宅配ピザの価格競争が起き、各チェーンとも疲弊してしまいました。そんなこともあり、パンと異なってピザには体系だったものがありません。パンは先生が沢山いますが、ピザは混とんとしています。厚手のアメリカンタイプをナポリピザと言ったり、薄いカリカリのものをイタリアンピザと言ったり、まちまちです。そこで、ピザ業界を活性化していこうと始めたのが、パルテノぺ。イタリアで10年修行した渡辺陽一さんに総料理長になってもらい運営しています」と奈良氏。

「外食事業で儲けようではなく、本物のナポリピッツァを普及させることがあくまで目的です。その中で商品開発して、それをまた小麦粉に生かす。何もないところでこちらが営業してもお店は聞いてくれません。お店で売れてます、お店でお客さんはこうおっしゃってます、とか話すと聞いてもらえます。」

広尾と恵比寿店は小麦粉から生地を作り、薪窯で焼いて作る本格的なピッツァの店。品川と横浜店は、冷凍生地を使い、薪窯に似せたガス釜窯で焼くことにより、より簡単なオペレーションで本格的なピッツァができる店。ピッツェリア開業希望者は、この2タイプを見学できる。

外はカリッ、中はモチッとしたナポリピッツァ。その食感を出すために、強力粉だけでなく、薄力粉を混ぜるお店もある。また、イタリアからの輸入小麦粉を使っている店も多いが、混ぜるのに手間がかかり、コストも非常に高い。そこで、高品質で安価なものをと開発したのが「ルスティカ」。

 FFSは「ルスティカ」を使った、冷凍ナポリピッツァ生地の販売を近々予定している。


日清製粉株式会社
フレッシュ・フード・サービス株式会社

【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2009年5月25日取材


Page Top