フードリンクレポート


“あこがれられる店長”をめざして!
布施 知浩氏
「とり鉄」浜松町店 店長
第4回S1サーバーグランプリ優勝者

2009.7.15
次の外食リーダーは、現在の店長の中に潜んでいる。外食産業が発展するためには、外食企業幹部や起業家を次々と育てる仕組みが必要だ。彼らの最初の登竜門は店長。そして、今必要なのは、スタッフやお客から“あこがれられる店長”。接客日本一の称号を獲得した布施知浩氏は25歳。“あこがれられる店長”だ。


”あこがれられる店長”を目指す、布施知浩氏。25歳と若い。

店長を経ない、外食リーダーはいない

“あこがれられる経営者”は、仕事だけでなくライフスタイルも含めてゼットンの稲本健一氏を筆頭に人間的に魅力あふれる方々が多い。また、“あこがれられる企業幹部”も、理論派のユニマットクリエイティブ副社長の金井伸作氏を筆頭に有能な人材が多い。

 業態は様々ながら、彼らの共通点は店長を経験していること。アルバイトなどで外食で働き始め、人に喜ばれる仕事にのめり込み、まずは店長にあこがれたことから始まるのではなかろうか。そして実際に店長として経営や人事、教育などを学び、経営者としての能力を身につけていく。

 外食を天職にしようという人々のステップアップの登竜門が店長職となる。


まずは、周囲に流されない強い意志

 まずは外食を天職とするに当たり、大きなハードルが待ち受けている。布施氏は語る。

「大学3年生の時から『とり鉄』浜松町店で働いていました。たまたま、中学・高校・大学の先輩が店長をやっていたんです。自由な発想を認めてもらい、人を喜ばせたいという気持ちがあれば何でもやっていいと言われて働いていました。お客様に火を付けたおしぼりを出して喜ばれたりしていました。自分の中から出るアイデアを発揮できる場所で働きたかったので、就職活動は広告代理店に集中し内定ももらいました。」

「しかし、広告は消費の瞬間に立ち会えないなと思ったんです。ここ(とり鉄)では、自分の働きでお客様が喜んでくれたり、形には残らないが消費の瞬間が見られる。素敵な職業だなと思い、そのまま就職しました。」

「同級生は大手企業に就職し、『お前何で居酒屋に?』と言われましたが、気持ちはゆるがなかったです。両親も大反対しました。『自分がやりたいときのことをやっている顔と、未練を残しながら他のことをやっている顔とどっちが見たい?』と両親に汚い質問をして納得してもらいました。今では店にも来てくれますし、サーバーグランプリも見に来てくれ、もっと頑張れと応援してくれています。」

「大手企業に就職した大学の同級生と最近会うと、『お前はイキイキしてるよな』と羨ましがられたりします。彼らは愚痴が多いんです。悩んじゃうから聞きはしませんが、『それって本当にやりたい仕事なの?』と聞きたいです。やりたい仕事じゃなくて、会社のブランドだけで入っているように感じます。今は大企業でも倒産する時代です。そんな働き方ではもたないんじゃないかと心配しています。」


店長として経営を学ぶ

 布施氏はアルバイト時代から店長職にあこがれていた。

「僕はアルバイトの時、店長にあこがれていました。名刺に勝手に“店長代理”と入れていました。今のマックスコーポレーションにはアルバイトから5年働いています。その内、店長職は3年です。前店長との引き継ぎ、新店の立ち上げ店長もやらせてもらい、楽しくてしかたないです。」

 店長は、店舗の経営者。四六時中、店にいる必要は無く、他のスタッフで回し予算を達成させる仕組みを作るべき。空いた時間で勉強したり、人脈を築いたりする。そして、店舗では次の店長が育つようにする。これができなければ、店長から上には進めない。まさに、経営者としての勉強期間だ。

 布施氏は、店長勉強会“STI(スーパー店長育成会)”で活躍している。現場に入る店長のスケジュールを考え、毎月第三日曜日の午前1時から朝まで行っている。この7月で56回を迎え、初代は独立している方が多い。毎回、採用や教育、オペレーションなどテーマを決めてグループディスカッションを行う。深夜にもかかわらず30〜40名が参加している。

 また、サーバーグランプリ優勝を契機に始めた“サーバークラブ”。現在はブログでサーバー同志の横のつながりを築こうとしている。


浜松町駅ビル1階には競合居酒屋がひしめき、「とり鉄」も17:30までに入店すると90分1000円で飲み放題を行っている。接客に頼るだけでなく、様々な作戦を立て店を経営している。


若くて熱い店長が次々生まれるために

「外食業界は魅力的な人が多く、明るくてイキイキしている。興味は持ってくれても、労働時間が長くて嫌う方が多い。それ以外の所に価値がある業界と知って欲しい。人を喜ばせることと、食が学べること。お客様が喜んでくれるところが見え、そこで感性が磨ける。食が大事な時代に目の前で学べる。就労条件じゃない部分の価値を伸ばすことが地位向上に繋がる」と布施氏。

「人を喜ばせる」、「食が学べる」という価値を知らしめて、外食を天職と決め、次々に若い店長が生まれる仕組みを作っていく。それを分かりやすく世の中に知らしめるため、“あこがれられる経営者”同様に、“あこがれられる店長”を作りそれを紹介していく手法を考えたい。そして、7/21(火)にスタートする「みんなの店長会議」を契機にそんな動きが外食業界に広がることを期待したい。

 まず“あこがれられる店長”に布施知浩氏が名乗りを挙げた。


■布施 知浩(ふせ ともひろ)
「とり鉄」浜松町店 店長。第4回S1サーバーグランプリ優勝者。1983年生まれ。埼玉県出身。青山学院大学在学中から「とり鉄」浜松町店でアルバイトを開始。2005年、同店を運営する株式会社マックスコーポレーションに入社。

「とり鉄」
「S1サーバーグランプリ」
「サーバークラブ」

【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2009年7月13日執筆