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フードリンクレポート


神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例の施行を控え、飲食店の分煙機器設置と空間作りへの提案。

2009.8.25
8月18日から20日までの3日間パシフィコ横浜で開かれた第2回居酒屋産業展(同時開催、第1回居酒屋開業支援展)。その中で2010年4月より実施される「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」に基づき対象となる飲食店に向けた「分煙対策コーナー」が設けられた。7社が出展するこのエリアでひと際目を引いたのが株式会社トルネックスのブース。インテリアデザイン事務所ATTA(アッタ)とのコラボレーションにより、デザイン性のある空間作りで来場者を集めた。 分煙用機器の展示だけではなくそこに付随する幅広いサービスを提案するその企業の取り組みにせまった。


トルネックスはATTAとコラボし、デザイン性のある分煙空間を提案。

居酒屋をイメージした展示

 試食も可能な食品展示エリアに比べ、条例への取り組みという少々堅めな雰囲気の「分煙対策コーナー」。その中でまず来場者が足を止め興味を持ってもらいたいと考え作られたのがこのブースだ。


トルネックスの居酒屋産業展でのブース。


居酒屋の雰囲気で興味を引いた。

 パテーション全面にはATTAがデザインを手掛けた居酒屋店の内観写真を広々と使った。通路に面した角には「分煙対策 オイシイクウキ始めました」と大きく書かれた暖簾が下がる。ブース内の打合せ用のテーブルと椅子もオフィス用のそれではなく居酒屋仕様。気軽に立ち寄れる雰囲気づくりに拘り実際に立ち寄った参加者からは「雰囲気が出ている」との声も聞かれた。思惑通りに興味を引くことができたようである。

 トルネックス営業部の島田秀治氏は受動喫煙防止条例に対する来場者の興味についてこう語る。「関心を持って立ち寄られる方は多店舗展開している企業の方が多いようです。それに対し個店でレストランを運営されている方々は、まだよく分からない、知らないというケースが少なくないと感じます。そういった背景の中で、まずは足を止めていただくのに今回の演出は手ごたえを感じています。初日と二日目で200人程の立ち寄りがありました」。


空間ありきの分煙

 レストランへ来店しての満足度は料理とサービスだけではなく、空間もその一役を担うことは言うまでもない。全体のデザインを無視して分煙だけを独立して考えることは難しい。では実際に店舗デザインをする上で「分煙」はどのように捉えられ進められるのだろうか。

 元々の店舗に分煙機器を後付で設置する場合は、既に天井裏は他の設備機具で一杯というケースが多い。よって設置箇所はベストな位置からずれる場合もある。本来一番いい形はお互いに共通認識があり、こういうものを設置するというのが念頭にあること。お店作りの最初にデザイナー、厨房機器メーカー等が集まる場面で分煙機器メーカーもチームとして入り、全体で取り組んでいければベストである。それにより理想の空間作りが可能になる訳だ。これを機にこうした考え方が飲食店側にも浸透していくことが望まれる。

 物理的な分煙機器の設置から、更に踏み込んだ提案についてATTAの関口愛美氏はこう語る。「喫煙所が既にある店舗の場合、そのスペースは店内の奥の方にあって、『入って吸い終わればすぐ出たい』と感じる場合が多い気がします。壁の色も変わってしまい、ネガティブなイメージがありませんか。逆にもっと分煙をポジティブにとらえることを考えています」。ATTAのキャッチコピー「分煙=コミュニケーションツール」はこれを意味する。


ATTA資料「これからの居酒屋 分煙平面レイアウト」


ATTA代表 戸井田晃英氏。

 ATTAが提案するひとつのレイアウト事例は、分かり易く言うとレストランのバーコーナーとダイニングコーナーをそのまま居酒屋に持ってくるという考え方。入ってすぐに、スタンディングでもキャッシュオンデリバリーでもよいので、誰でも気軽に入り易い喫煙場所を一箇所設ける。その賑やかなところを通って奥はゆったりと落ち着けるような禁煙のスペースとし空間にメリハリをつけるのだ。喫煙者も食事中は禁煙でよりお食事を楽しんでいただく。そして吸いたくなったら喫煙スペースに移動する。そうすることで、お店の中に動きも出てくる。食事では席の遠いお客様が喫煙所で隣り合わせになり新しい会話やコミュニケーションが生まれることも想定されたレイアウトだ。更に店の外からは中の賑やかな雰囲気を見ることができる。


トルネックスの分煙機器が煙を吸う。

 喫煙と禁煙のエリア分けは、壁全体で完全に仕切るのではなくトルネックスのエアカーテンを部分的に使い閉塞感をなるべく避けていく。働く店舗スタッフにとっても店内を見渡せ、オペレーション面でメリットとなる。更に特筆すべきはトイレの位置である。それを考慮することで導線により動きがでる。喫煙者も禁煙者も一度は店内を一通り歩くという仕掛けで店全体の雰囲気を知ってもらう。それが次への来店動機につながることになる。

 トルネックスの島田氏は喫煙者の心理面についても分析。「煙草を吸う時は気持ちのいい環境で喫煙したいのではないかと思うのです。自分は吸っても煙いところは嫌だったり、隣が吸っていて煙がくれば嫌だったりと。喫煙コーナーでは狭い場所に入れられて外から見られていることも不満だったりします。つまりその要望をも網羅するように、飲食店に対しては分煙機器の提案にとどまらず、より細かな配慮と提案がないとお店に来店されたお客様を最終的に満足させることが難しいのだと思っています。そういった検討の中で飲食店のリメイクサービスも当社では行っています」。


トルネックス島田秀治氏(左)と、ATTA関口愛美氏。


飲食店のリメイクサービス

 分煙機器以外に付随するサービスの提案も積極的だ。分煙への取り組み始める場合、それまでの黄ばんだ壁紙やクロスをどうするのかについても当然ニーズがでてくる。まさにかゆいところに手が届くというもので、これらのサービスは他社との差別化にもなっている。

 壁紙については張り替えるのではなく、トルネックスで開発された専用塗料を塗ることでリメイクする。ソファに貼られた布のシミやニオイもきれいに落とすチェアクリーニングも可能だ。消臭スプレーも開発にも取り組み商品化している。


飲食店リメイクサービスも行う。


分煙機器設置の市場規模

 今迄、トルネックスではオフィスへの分煙機器設置がその9割以上を占めていた。飲食店はオフィスの10倍以上の店舗数があると言われ今後大きな市場になることは間違いない。オフィスへの設置とは明らかに違う点がそれぞれの店舗の客層や来店前のお客様からの見え方までも意識して取り組むことにある。様々なお客様の目線に合わせた分煙の提案が、飲食店における検討の面白い部分でもある。今回の共同出展は双方にとってその意識付けのきっかけとなったようだ。

 受動喫煙防止条例の施行は飲食店にとってお客様満足度のアップやリピーター作りという原点をあらためて考える機会となり得る。サポートする企業の取り組みがどのように飲食店に受け入れられ新しい空間作りが実現されていくのか今後に注目していきたい。


株式会社トルネックス
〒103-0024 東京都中央区日本橋小舟町6-6 小倉ビル
TEL:03-5643-5800 FAX:03-5643-5801
http://www.tornex.co.jp/

有限会社 アッタ
http://www.atta-design.com/ 
<ヘッドオフィス>
〒248-0007 神奈川県鎌倉市大町5-5-9 1F
TEL:0467-22-5894 /FAX:0467-24-7005
<東京ブランチ>
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿2-28-7 301
TEL:03-5449-5854/FAX:03-5449-5898

【戸井田晃英 Akihide Toida プロフィール】
1968年、鎌倉生まれ。
1992年、桑沢デザイン研究所スペースデザイン科卒業。
1993年、スーパーポテト入社。物販店、飲食店などの商業施設に携わる。
1997年、TYPE-Aを設立し、独立後も数々の物件を手掛ける。
2000年、グローバルダイニングに入社し、店舗の企画、設計、監理に携わる。
2004年、有限会社アッタ設立、現在に至る。

【開催】 居酒屋産業展 パシフィコ横浜にて、2009年8月18・19・20日開催
【取材・執筆】 国井直子 2009年8月21日執筆


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