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フードリンクレポート


“ハイボール“は本格焼酎に次ぐ一大ブーム。
定着させるには、各店舗での品質維持!

2009.9.4
ハイボール・ブームを作ったのは「サントリー角瓶」。サントリーが力を入れだしたのは、2008年5月。今や、角ハイボールの扱い店は全国で4万店を超えた。そして、じわじわ伸びていた角瓶の売上は、今年6月以降一気に伸び、ワープ状態に突入。だれにも止められない状況になってきた。


9/1に横浜でオープンした、ビーフキッチンのハイボールタワー。

扱い店数は半年で目標の2倍に

 景気低迷が続く中、居酒屋にとっては救世主とも思われるハイボール・ブーム。繁華街では、角ハイボールの扱いを示す黄色い提灯を店頭にぶら下げた店をよく見る。サントリーは2009年の角ハイボール扱い2万店が目標だったが、7月には目標の倍の4万店を超えた。

 契機は、昨年5月に投入した、理想の角ハイボールが提供できるハイボールタワー。タワー設置店は「角ハイボール酒場」と名付けられ、現在、全国に300店舗ある。この店を核に、周辺にハイボールが浸透していった。

 ウイスキー角瓶の業務用売上高も昨年9月からじわじわ昇り、6月に入り「めざましテレビ」(フジテレビ)や「日経MJ」で紹介されると一気に火が付き、6月に潮目が変わり、大きな波に乗り移った。

 その要因は、30代が角ハイボールを飲み出したこと。今までは、テレビCMに感化された20代と、ウイスキー水割り時代を知る40代が主なユーザーだった。働き盛りの30代はテレビを見る時間が少なく情報が疎く、居酒屋でも決まったものを飲む傾向にあった。それが、ビジネスマン向けメディアに登場するとともに、角ハイボールを飲み始めた。


「マルギン」(銀座)のハイボールタワー。


「マルギン」(銀座)のハイボールメニュー。

 サントリーは、外食市場向けに「Do the ハッスル」キャンペーンと名付け、7/1〜8/31の2ヶ月間、角ハイボールを飲むとその場で賞品が当たる販促を全国展開。また、7/14からインターネットを使って消費者が自分で角ハイボール店をマッピングしていく「みんなで作る角ハイボールマップ」を立ち上げた。


美味しくないハイボールが怖い

 角ハイボールの扱い店が増えるとともに、扱い店同士の差別化競争が始まっている。1980年代の酎ハイ・ブームと同じく、ハイボールの種類の多さを自慢する店が現れている。炭酸の替わりにコーラやジンジャエールを使うだけでなく、カルピスやフルーツシロップを加えたりしている。

 ウイスキーと炭酸の割合を間違えるなど、美味しくないハイボールを提供する店も出始めている。ブームが冷める恐れがある。



 今回のハイボール・ブームのルーツはウイスキー角瓶。角瓶1に炭酸4の割合で混ぜ、生レモンを搾った、アルコール度数約8%のものが「美味しい」、「飲みやすい」と評判になりブームが生まれた。「とりあえずビール」の後の焼酎や酎ハイがハイボールに変わった。しかも2杯、3杯飲んでも飲み飽きない、スッキリした味。

 サントリーはこの原点を守り、角ハイボールの品質を維持するため、様々な施策を行っている。安定した品質の角ハイボールが提供できるハイボールタワー開発や、ビールディスペンサーで抽出できる10L樽詰(現在テスト販売中)。角瓶で提供する店用に、専用ハイボールジョッキに適した30mlが正確に注げるポアラー(瓶に取り付ける注ぎ口)。そして、店舗スタッフの為の作り方マニュアル。しかも、中国語版、韓国語版も用意。



 本格焼酎に次ぐ、外食市場でのアルコール飲料のヒットメニューだ。一時的なブームから、ビールや酎ハイ、焼酎、ワインのようにハイボールがドリンクメニュー表の定番ジャンルに成長するためには、各店舗が品質維持に努め、「美味しいハイボール」というお客の期待を裏切らないことが重要。ハイボールを単なるブームからドリンクの定番ジャンルに育てよう!


角ハイボールのマーケティングを担当する、サントリー酒類株式会社 奈良匠氏(スピリッツ事業部 ウイスキー部)。


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2009年8月14日執筆


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