フードリンクレポート
酔いたい人も酔いたくない人も一緒に楽しめる「キリンフリー」、
0.00%が、新たなノンアルコール市場を切り開いた。
キリンフリーを開発した梶原美奈子氏(営業本部 マーケティング部 商品開発研究所 新商品開発グループ)。
・ゴルフ場で扱うと、ビールも売れた
今までのノンアルコール飲料は、0.1%未満ながらもアルコールを含んでいたため、店側もお客側もすんなりとは受け入れていなかった。平成19年9月に施行された改正道路交通法では、酒類提供者にも罰則が及ぶこととなり、微量とは言え、店側も積極的に勧めることが出来なかった。そんな中、店やお客から全くアルコールを含まないものを求める声がキリンビールに寄せられ、そして2年の歳月を経て開発されたのが、完全にアルコールなしの「キリンフリー」。
「4月の発売以降、大手スーパーでの扱いが始まり、休肝日やバーベキュー、運動会など飲めない場や、妊産婦の方などに好評です。この夏は凄い勢いで、外食からの引き合いが増えています」とキリンフリーを開発した梶原美奈子氏(営業本部 マーケティング部 商品開発研究所 新商品開発グループ)。
家庭市場が先行し、350ml缶の売上が販売数量全体の8分の7約85%を占めている。徐々に扱いが広がる外食向けには小びん瓶334mlが用意されている。ビール感覚で飲みたいという消費者の声を受けて、9/16には、500ml缶と中びん瓶500mlも発売される。
キリンフリーのラインナップ。
運転者など酒類が飲めない方向けのビール代替飲料として開発され、飲食店ではさらにプラスの効果が現れている。
「ゴルフ場では、運転者も安心してビール感覚でキリンフリーを2杯、3杯と飲め、同伴者も運転者に気兼ねなくビールを飲むことが出来、売上アップに繋がった所が多いです。あるファミレス飲食チェーンでは、運転者であることを告げると、200円でキリンフリーを提供するキャンペーンを行ったところ所、キリンフリーの売上が10倍になりました。今まではソフトドリンクを飲んでいた運転者がキリンフリーに替わるだけで、売上もアップします」と梶原氏。
ランチ時に“ランチフリー”としてキリンフリーを提供し、売上げを伸ばしている店もある。
・「私は今日、ノンアルコールで行きます」
「キリンフリー」はキリンビールが製造販売するから、清涼飲料水という正式なジャンルながら、ビールのような感覚が消費者に伝わる。年配の方から「昔のキリンビールの味がする」との声もあるそうだ。酸味と苦みがキリンラガーに近い。「病気で飲めなかったが、これで昔のように味わえるようになった」と嬉しい手紙がキリンビールに届いている。
酔いたいのに酔えない方の飲料という消極的な理由でノンアルコール飲料が選ばれていたが、キリンフリーの登場で時代が変わりそうだ。
「酔いたくない」、「酔い過ぎたくない」と考える方々が徐々に増えているという。そんな積極的な理由で、キリンフリーが選ばれる。宴会時に、酔いたい方と酔いたくない方が共存できるドリンクという訳だ。酔いたくない方も、ビールのような飲料を飲むことで場の雰囲気を壊さず楽しめる。神奈川県のタバコの受動喫煙防止条例で、吸いたい方は気兼ねなく吸えて、吸いたくない方は受動喫煙を防げる環境を作ろうという主旨に近い。
キリンビールでは誤飲防止のために、キリンフリー専用のグラスや紙コップを有償で用意している。酔いたくない方が、間違ってアルコール入りビールを手にしないようにする措置だ。
キリンフリーの差し込みメニュー。「運転できる!」と明記。
繁華街立地の居酒屋でのグループ客にも、このビール感覚で飲めるソフトドリンクのニーズはありそうだ。酔いたい方も酔いたくない方も気兼ねなく飲め、売上アップにもつながるだろう。この秋から、アサヒビールもこの市場にアルコール0.00%「ポイントゼロ」を9/1に投入。サントリーも「ファインゼロ」を9/29に、サッポロビールも「スーパークリア」を9/30に発売。新たなノンアルコール市場は、競合を加えて、過熱するだろう。
→「キリンフリー」