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フードリンクレポート


国産初の「キユーピー ディジョンマスタード」、
フレッシュな辛さでフレンチから居酒屋にも浸透中。

2009.9.10
キユーピー株式会社が昨年8月、業務用として発売したディジョンマスタードの取扱店が増えている。本場フランスの伝統的製法で作られた国産初の商品。今まで輸入品しかなかった日本のディジョンマスタード市場が活気づいている。キユーピーの芳村和之氏(フードサービス本部 商品部 調味料・加工食品チーム)を取材した。


ディジョンハーブポテト。

マスタード発売50年を迎える技術で国産化に成功

 マスタードの歴史はその種と肉を一緒に食べることを発見した紀元前3千年にさかのぼる。その後、ローマ人がすり潰したマスタードの種をワインやビネガー、油、蜂蜜などと混ぜてソースを作り始め、ヨーロッパに広がった。中でも、ワインの産地フランス・ブルゴーニュ地方では、ワインビネガーが製造でき、土壌がマスタード栽培に適し、大量に消費する貴族の宮廷があったことなどから。ブルゴーニュの首都の名を冠した、ディジョンマスタードが誕生した。

ディジョンマスタード530g
*賞味期限は常温で10ヶ月。

ディジョンマスタード300g
*賞味期限は常温で6ヶ月。

ディジョンマスタード1kg
*賞味期限は常温で6ヶ月。

 ディジョンマスタードと呼ばれるためには、マスタードの種子、ビネガー、食塩、清水を主原料とし、辛み成分、でんぷん、増粘剤などは使用してはならない。アメリカ料理などでポピュラーなアメリカンマスタード(イエローマスタード)とは異なり、風味や辛みが強い。ちなみに世界で流通されるブラウンマスタードの種子の9割はカナダ産。現在のフランス産ディジョンマスタードも大半がカナダ産マスタードの種子を使っている。

 マスタードはフランスでは料理の味のベースを作る調味料として多用。日本人にとっての味噌や醤油に当たる。フランス人1人あたりの年間消費量は約1kgも。比べて、日本人は100gに過ぎない。

 キユーピーは、1960年から食の洋風化に合わせてマスタードを発売。2010年には発売50周年を迎える。フランスのようにマスタードを調味料として使う豊かな食文化を提案するために、08年に国産初のディジョンマスタード製造を始めた。ディジョンマスタードは限られた原料しか使えず、風味の差はビネガーに因るところが大きく、ブルゴーニュでもメーカーは必ずといっていいほど自社ビネガーを作っている。キユーピーもグループ会社でビネガーを製造しているから、国産初のディジョンマスタードが完成した。

 原材料は、カナダ産の厳選されたブラウンマスタード種子、キユーピー醸造が作ったフレッシュ感のある白ワインビネガーと熟成感のある白ワインビネガーの2タイプをブレンドした専用ビネガー、富士山の天然水を使って、山梨県富士吉田市の工場にて製造されている。

「工場のある富士吉田市では、地産地消ブランドとして愛され、市内の多くのペンションやレストランで扱っていただいています。国産なので、安心感もあり、身近に感じていただいています」とキユーピーの芳村和之氏は国産を強調する。


キユーピーの芳村和之氏。


既存のソースに混ぜて、隠し味

 ディジョンマスタードを使い慣れたフレンチのシェフは、「マイユ」など輸入物を使っている場合が多い。そんなシェフに「キユーピー ディジョンマスタード」を試食してもらうと、フレッシュな辛さに驚かれる。フランスで修行したシェフは、当時使っていたものと同じという感想が返ってくる。ディジョンマスタードは時間の経過とともに熟成が進み、辛みが弱まり、旨みが増す。船便で日本に届く輸入品は、辛みが弱まっている訳だ。キユーピーのものは、国産なので作りたての辛みを楽しめる。

 フレンチレストランだけではなく、ディジョンマスタードを使ったことのないカジュアルレストランや居酒屋でも簡単に使える。今使っているソースにディジョンマスタードを加えて混ぜるだけ、他店と異なる個性的な味に変わる。仕入れ価格は、よく使われる粗挽きマスタードの約1割程度高いが、少量使用するものなので顧客満足度を上げる費用負担としては非常に軽い。

 例えば、マヨネーズと混ぜると、上品な辛みが付きサンドイッチやポテトサラダの質が上がる。タルタルソースに混ぜると、劇的に旨みが増しフライ料理が美味くなる。カルボナーラソースに混ぜると、芳醇な香りがたつカルボナーラになる。デミグラスソースに混ぜると、甘さ控えめな大人の味になる。麺つゆなど和風だしと混ぜても面白い。総じて、グルメ向けの深みのある味に変えてくれる。


黒豚のロースト りんごとマスタードのソース。豚肉と相性の良いりんごとブルーチーズにディジョンマスタードを合わせることで、味のまとまりと、風味にアクセントが生まれる。


鯛のポワレ ハニーディジョンソース。たまねぎとハチミツの甘さがディジョンマスタードの芳醇な辛味、酸味と良くあい、鯛の旨みを引きだす。

「キユーピーは年 約13年前、シーザーサラダがほとんど知られてない中、シーザーサラダドレッシングを発売しました。それが今や、外食だけでなく家庭でも定番サラダの1つとなり日本の食文化にしっかり定着したと確信しております。。業務用の1Lドレッシングは約50種類ありますが、現在では2番目に売れている商品に育っております。」と芳村氏。

 シーザーサラダ同様に、ディジョンマスタードも10年後には一般的な調味料になっているかもしれない。10年後を先取りするメニューをお客に提案してみてはいかが。


キユーピー業務用製品


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2009年8月25日取材


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