フードリンクレポート
「麒麟淡麗」樽生、取扱店が増加中。
回転率アップに貢献。
280円均一焼鳥居酒屋「鳥貴族」。淡麗樽生700mlジョッキ(左)、生ビール400mlジョッキ(右)。共に280円(税別)。
・1998年の「淡麗」発売時から樽生はあった
発泡酒「麒麟淡麗」が発売されたのは1998年。バブル崩壊後の安価な商品が求められる風潮の中、ビールと比べ酒税の低くなる、麦芽の比率が67%未満の発泡酒を各ビール会社が開発し大ヒット。ビールと合わせて、ビール系飲料という新しいカテゴリーが生まれた。
この中で、ビールシェア1位のキリンが開発した「麒麟淡麗<生>」は発泡酒ながら本格感が消費者に伝わり、発泡酒ジャンルでたちまちシェア1位を獲得。現在までその地位を守っている。
発泡酒の市場は、圧倒的に家庭用。しかし、淡麗は缶での1998年2月の発売から半年後に、外食市場に向けて樽生を投入した。そのスッキリした味が、宮崎県、鹿児島県、沖縄県の飲食店でウケ、市場のニーズに応える形で樽生が発売されたという。
モンテローザ各店でも直ちに取り扱いが始まり、全国に知れ渡った。当初は、飲み放題メニューに組み込まれ、店側のコスト削減ニーズに応えるだけの商品だった。通常の生ビールと、それより100円程度安い淡麗樽生を併記すると、販売量は9:1と生ビールが圧倒的に強かった。
しかし、昨年秋からの世界的不況とともに、昨年12月から急に「麒麟淡麗」樽生が伸びてきた。
「『ビールもいいけど、淡麗でも十分』という消費者からの強い引きがあり、肩肘はらない普段着の店での扱いと販売が増えています」とマーケティングを担当する阿部学氏(営業本部マーケティング部商品担当)。
キリンビール、阿部学氏。
・生ビールと同価格で、量を増やす
今人気の販売方法は、生ビールと同じ価格で、量を増やす提案。メニュー上でも「麒麟淡麗生<発泡酒>と明記する。すると、生ビールと淡麗樽生の販売比率は7:3と、淡麗のポイントが上がる。店側にとっても客単価は下がらない。
話題の280円均一の焼鳥居酒屋「鳥貴族」は、いち早くこの販売方法を取り入れている。同チェーンでは、生ビール400mlジョッキが280円(税別)、淡麗樽生700mlジョッキで280円(税別)。150店以上を展開し、淡麗樽生の販売量は屈指を誇る。
「鳥貴族」のドリンクメニュー。
「家庭で飲まれているお客様が、店では注ぎたてを飲めると満足されているのでは。アパレルのユニクロが人気なのと同じです。賢い消費をするお客様が増えています。お金の使い方が多種多様になっている今、景気が良くなっても淡麗の人気は変わらないのでは」と阿部氏。淡麗ブランドへの信頼感がベースとなっており、店でも周囲を気にせず、恥ずかしがらずに注文できる訳だ。
扱い店は、チェーンよりも個人店が多いという。客単価2〜3千円の店に、生ビールと同価格で販売することにより、リピーターの来店頻度を上げる商材として使われている。ジョッキの杯数は1杯の量が多いため減る可能性もあるが、その減った分で料理出数が上がる。また、飲み放題メニューに加え宴会メニュー価格を下げ、集客増に繋げる。
リニューアルした麦芽100%「一番搾り」、アルコール0.00%「フリー」とビール系飲料でヒットを飛ばすキリンビール。「分かりやすく一言で言えるものが、好調です」と阿部氏はヒットの極意を語った。
→キリンビール「麒麟淡麗<生>」