フードリンクレポート
「ヒューガルデン ホワイト」取扱スタートして1年、
アサヒビールは販売量を追わず、じっくり育てる。
マーケティングを担当するアサヒビール、山本明太郎氏。
・ベルギービール全体の活性化をめざす
アサヒビールが輸入販売を開始したベルギービールは、世界最大のビール会社、アンハイザー・ブッシュ・インベブのブランドだ。その歴史から、ベルギーという国のたくましさが見える。
1366年に創業した「ステラ・アルトワ」が中心となり、ベルギーの地元醸造所をいくつか買収や統合して、1987年にインターブリューInterbrew社を設立。現在の傘下である「ヒューガルデン」「レフ」「ベル・ビュー クリーク」も所有。そして、カナダの「ラバット」ビールを買収して海外に進出。
そして、2004年、ブラジルのビール会社、アンベブAmBev社を買収して、インベブInBev社と社名変更。世界30ヶ国以上に販売拠点を持ち、130ヶ国以上で販売し、販売量世界1位に躍り出た。さらに、2008年には世界第3位のビール会社、「バドワイザー」を製造するアンハイザー・ブッシュ社を何と約520億ドル(5兆円)で買収。アンハイザー・ブッシュ・インベブAnheuser-Busch InBev社に社名を変更した。世界1位の座を強固にした。
アサヒビールが、ベルギービール3ブランドの日本での販売権を取得したのは、インベブ社がアンハイザー・ブッシュ社の買収を合意した直後。アサヒビールは、世界1位のビール会社、アンハイザー・ブッシュ・インベブ社との関係を強化させる道を選んだ。
そして、以前から扱っている「ベル・ビュー クリーク」と加えて、ベルギービール主力ブランドを手に入れ、ベルギービール全体を日本市場で活性化させようとしている。ベルギービールは約800種もあると言われる。
アクアプランネットが展開するベルジアンビアカフェ「アントワープ」などのベルギービール専門店は、まだ日本には少ない。アサヒビールの強力な販売網を使って、洋風業態に個性派ビールとして積極的に売り込んでいる。スーパードライ未扱い店への“差し込み商材”としても活用されている。
「外国ビールでは販売量を追いません。付加価値を語りながら大事に育てていきたい。多くのお客様に商品を味わっていただき、商品の魅力を体感していただきたい」とマーケティング担当の山本明太郎氏(酒類本部 マーケティング本部 ビールRTD部 主任)は語る。
ベルギービールの中で最も人気が高い「ヒューガルデン ホワイト」でさえ、認知度は2割程度と低い。樽生扱い店は全国で約700店。ベルギービールの浸透には時間がかかりそうだが、「ギネス」が定着したことを考えると、個性派ビールに可能性は大きいと思われる。地道で継続的なマーケティング活動をアサヒビールに期待したい。
4ブランドを以下に紹介する。
・世界で最も人気のホワイトビール「ヒューガルデン」
ブリュッセルから郊外へ車で1時間のところに、ヒューガルデン村がある。15世紀半ばに修道士がインドからとりよせたスパイスを使って新しいビール造りが村で始まった。しかし、最盛期には35の蒸留所があったが、20世紀には絶滅。1965年に、昔の製法を基に伝統のホワイトビールを再生させた。
原料は、小麦、コリアンダーシード、オレンジピール。酵母が残っており、少し白く濁った黄色のビール。やや酸味のある白ワインのような味わいで、魚料理などさっぱりした料理に合う。
アルコール度数4.9%。330ml瓶と、20L樽の2種。
→「ヒューガルデン ホワイト」
・修道士ビール“アビービール”の先駆け「レフ」
レフ修道院は、ベルギー南部のディナンという町に今も実在する。1152年設立で、ビール醸造を始めたのが1240年。ビール醸造はナポレオンの時代に途絶えるが、1952年に修道院は地元の醸造家にレシピを教え、伝統のビールが復活した。修道士のビール“アビィビール”は現在、ベルギー各地で作られているが、「レフ」はその先駆け。
聖杯型グラス。
修道院ならではの聖杯型の専用ビールグラスが特徴。フルーティーな香りとマイルドな味の「レフ・ブロンド」、ロースト麦芽を使ったコクのある「レフ・ブラウン」、フルーティーでスパイシーな2つの香りを併せ持つ「レフ・ラデューズ」、最も手間をかけた濃厚な「レフ・ヴィエーユ・キュヴェ」の4種。上質な赤ワインのように肉料理などガッツリした料理に合う。
アルコール度数6.5%(ブロンドとブラウン)、8%(ラデューズとヴィエーユ・キュヴェ)。各330ml瓶と、ブロンドとブラウンのみ30L樽がある。
左から、ブロンド、ブラウン、ラデューズ、ヴィエーユ・キュヴェ。
→「レフ」
・ベルギーが世界に誇るピルスナービール「ステラ・アルトワ」
1366年、ベルギーの中央、ルーベンという町で蒸留所がスタートし、1717年にオーナーが変わってアルトワと名付けられた。そして、1926年にクリスマス限定ビールとして星をイメージした「ステラ・アルトワ」が発売された。当時、ベルギーでは珍しいピルスナータイプで評判となり、ヨーロッパ各地のコンテストでメダルを獲り、ベルギーで最も有名なピルスナーとなった。飲用時品質を高めるために、世界の飲食店スタッフを対象とした注ぎ方コンテスト「ワールド・ドラフト・マスター」を1997年から毎年開催している。
心地よい苦みとキレの良さが特徴。草のようなホップのアロマも魅力的。どんな料理にも合う。
アルコール度数5.2%。330ml瓶と、30L樽の2種。
→「ステラ・アルトワ」
・チェリーの甘酸っぱいフルーツビール「ベル・ビュー クリーク」
1913年、ブリュッセル近くのシント・ピーテルス・レーウという町で始まった。1927年、空気中に漂う野生の酵母を使い発酵させるランビックビールの有名なカフェ「ベル・ビュー」を買収したことで、醸造所名が付けられた。クリークとはチェリーのこと。この土地ならではの野生酵母を使ったランビックにチェリーを加えて熟成させた。
チェリーレッドの透き通った鮮やかな色にクリーミーな泡立ち。甘酸っぱい爽やかな飲み口。食前酒として人気。
アルコール度数5.1%。10L樽のみ。
→「ベル・ビュー クリーク」