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フードリンクレポート


神奈川県受動喫煙防止条例施行への取り組み、
日本たばこ産業協会の働きかけによる新たな提案。

2009.10.29
神奈川県では受動喫煙防止条例が成立し2010年4月から施行とその時期も間近に迫ってきた。本件への関心が日々高まる中、先日行われた「第38回 喫茶・スナック・レストラン展」(2009年10月20〜22日開催/主催・神奈川県喫茶飲食生活衛生同業組合)ではレストランの中での分煙に関する新しい提案がなされた。


JTが設計のア・ファクトリー、空調のダイキンエアテクノと共同で提案。

 イベントの主催は神奈川県喫茶飲食生活衛生同業組合。理事長を務める八亀忠勝氏は自身でもコーヒー店を営んでいるという。条例の施行に先駆けまずは自身の店を禁煙にしてみたところ売上げは半減したという。「一杯飲んで3本吸う、これが喫茶店の大正ロマンでもありその姿が減ってしまう」と文化的な側面でも懸念は隠せない。小規模の店舗では分煙工事は予算的にもスペース的にも難しく全面禁煙を選ぶかしかないという店舗も多くでるのではないかという。難しい側面を抱えながらも幅広く取り組みを検討していこうと、今回この展示会で関連ブースの設置に至った。又、財団法人神奈川県生活衛生営業指導センター(同理事長も八亀忠勝氏)では店前用シールを作成、同会場で神奈川県喫茶飲食生活衛生同業組合に加入する店舗への配布が行われた。


神奈川県喫茶飲食生活衛生同業組合理事長 八亀忠勝氏。



神奈川県生活衛生営業指導センターが作成する店前用シール①


神奈川県生活衛生営業指導センターが作成する店前用シール②

 分煙についての提案をするのは株式会社ア・ファクトリーとダイキンエアテクノ会社。2社共同のブースは同会場の入口前に構えられ来場者への意識喚起を促す。出展の火付け役となった日本たばこ産業協会(以下「JT」と表記)の平野芳典氏はこのコラボレーションについてこう語る。


JTブース。

 喫煙空間を改善していこうという市場は少し前までそれ程認識されていなかったようだ。つまり大手商業施設やナショナルチェーンの飲食店など資本力のあるところだけが、どちらかというとオーダーメイド的に喫煙場所を作ってきたという印象。今回初めて条例により強制力がでて、中小の事業主も取り組む必要性にせまられている。その中でJTは日頃から喫煙者の声を多く拾っており、一般的な空調設備とたばこの煙は相性が非常に悪いことが分かっていた。喫煙ルームではエアコンは効きづらくなりランニングコストがあがるという現実。「喫煙空間を快適にしていくための市場の主役は実は空調メーカーさんではないか」というひとつの仮説に基づき空調設備メーカーへ働きかけたのだ。健康増進法の努力義務より一歩踏み込んだ分煙条例の施行により、この市場が今後とても大きくなることは容易に予想できる。その気付きをJTの働きかけにより各社が得たとも言える。

 株式会社ア・ファクトリーは商業施設・店舗デザインなどの設計・施工をメインに手掛け、現在成田国際空港内の喫煙ブースの改修工事に関わっている。3年間で30箇所のリニューアルに取り組む最中、丁度その15箇所目が終わったところで今回の話を受けた。実績もあったため飲食店の分煙についてJTからの話に強く関心をもって受け止めたという。全体の空気の流れについては空調設備の専門であるダイキンエアテクノ株式会社に話を持ち掛け双方で取り組む流れとなった。


2社のコラボブース(左がア・ファクトリー大内氏 右がダイキンエアテクノ岩元氏)。

 埼玉県のア・ファクトリーの工場では実際に実験用の部屋を作り、空調設備の位置とたばこの煙の流れについて様々な実験を始めている。ポイントになる3つの提案を紹介する。


天井付の空調設備の位置を見直す。

提案① 天井付の空調設備の位置を見直す。
 今まで天井についた空調設備が多くみられた。煙の流れは通常下から上に向かい、上からの空調と根本的に相性が悪かった。空調設備の設置位置を部屋の下側へ見直し、それによって全体の空気の流れが改善される。


省エネ。

提案② 省エネ
 省エネにつながる仕組みづくりの大きなポイントとして、煙をかきまわさず換気量を減らすという点。更に人の多さにより換気量は常に一定ではなく変わってくる。喫煙人数に合わせこまめに調整することが必要となり手元で対応し易い方法を提案している。結果使用エネルギーを適量におさえることができる。時代に即した取り組みとなっている。


前室で外乱の影響を抑える。

提案③ より快適な環境へ
 3点目は一歩踏み込んだ提案となっている。出入りの多い喫煙室ではドアの開け閉めの度に外気の影響を大きく受ける。これを防ぐために入口を入った所に部屋をひとつ設ける。外と中の空気の行き来が少なくなり、双方の環境がより快適に保たれることになる。


 条例の施行まで半年を切った。関係者の関心や取り組みは一部では増しつつある。しかし一方で、当日もこのブースへの立ち寄りはたばこ業界及び県の条例実行委員の関係者がほとんどで、期待していた飲食店経営者は少なかったようだ。様々な問題はある中でいよいよ現実的なところにまで時期はせまっている。今後の動向にも引き続き注目していきたい。


神奈川県喫茶飲食生活衛生同業組合(第38回 喫茶・スナック・レストラン展 主催)
日本たばこ産業株式会社
株式会社 ア・ファクトリー
ダイキンエアテクノ株式会社


【取材・執筆】 国井 直子(くにい なおこ) 2009年10月20日取材


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