広告

RSSフィード

フードリンクレポート


ニッカはハイボールの先を提案、
ウイスキー本来の魅力を訴求。

2009.11.5
ハイボールブームに沸く外食市場で、アサヒビールが販売するウイスキー「ブラックニッカ クリアブレンド」を使った”ブラハイ”のポスターも目にする。このハイボールをフックに、アサヒビールは若者を含め、ウイスキー本来の味わいや文化を知ってもらう活動を始めている。


レトロな”ブラハイ”ポスター。

「ブラックニッカ クリアブレンド」はパッケージを刷新後、28ヶ月連続プラス

 アサヒビールの国産ウイスキーの販売量は1〜9月で7%増と、ハイボールブームの後押しもあり実績を伸ばしている。特に、ニッカブランドの中で販売量の最も多い「ブラックニッカ クリアブレンド」は10%も伸ばしている。

「ブラックニッカ クリアブレンド」は、ノンピート麦芽を使用することで、スモーキーフレーバーがなくスッキリとした飲み心地に仕上げたウイスキー。1997年の発売後、その飲みやすさから好調に売り上げを伸ばしている。10周年にあたる2007年8月に一部パッケージがリニューアルされた。「ひげのおじさん」のイラストを小さくし、スタイリッシュなデザインに生まれ変わるとともに、明るい琥珀色の液体が目立つようになった。これを機にコンビニを中心に人気となり、リニューアル以降、今年の10月まで販売数量は28ヶ月連続で前年プラス。ハイボールブームの前から伸び続けていたといえる。

「シングルモルトブームで高価格帯のウイスキーにも関心が高まっていますが、景気が低迷していることもあり、ウイスキーは手頃な価格の商品が伸びています。その代表的な商品が「ブラックニッカ クリアブレンド」です。ハイボールにもピッタリの商品ですし、低価格でも品質の良いものとして「ブラックニッカ クリアブレンド」が選ばれているようです」と、アサヒビールの山根卓也氏(酒類本部 マーケティング本部 洋酒焼酎部 副課長)は分析する。


アサヒビールの山根卓也氏。

 飲食店においては「酎ハイを飲んでいた方がハイボールを選ばれるということが多いのでしょうね。1杯目は、まずは美味しい生ビールを飲んで、その後ハイボールにするという飲み方のお客様も多いようです」と山根氏。スーパードライのアサヒビールらしい。


「ブラックニッカ クリアブレンド」と「ウィルキンソン タンサン」で”ブラハイ”

 「ブラックニッカ クリアブレンド」のハイボールを”ブラハイ”と名付け、飲食店向けポスターなどで訴求している。そして、同社の強みは、グループ会社であるアサヒ飲料が製造するガス圧力が強い炭酸水「ウィルキンソン タンサン」。バーテンダーの間で”最強炭酸”として人気だ。サントリーの角ハイボールが専用ディスペンサーを作ったのとは異なり、「ブラックニッカ クリアブレンド」とウィルキンソンをあわせて普及させようとしている。家庭用向けとして、ウィルキンソンタンサンの缶を付ける店頭キャンペーンも行う予定だ。

 現在、”ブラハイ”の扱い店は約6千店。今後は、同社の樽生を扱う約28万店の内、1割の扱いを目指している。「ブラックニッカ クリアブレンド」は、700mlサイズで店頭実勢価格が900円前後となっており、競合ブランドと比べて価格の安さも導入を促進させる要因となるだろう。一方、中価格帯となる「スーパーニッカ」についても食が中心の飲食店に、ハイボールや水割りでの提供を勧めている。


楽しい”ブラハイ”ポスター。


ジャズ、読書、そして水割り瓶

 アサヒビールが狙うのが、ハイボールを契機にウイスキーを知った人々にウイスキー本来の味わいを知ってもらい、ウイスキーを飲む習慣を身につけてもらうこと。

 まずは、ウイスキーと親和性が高い“ジャズ”や“読書”をテーマにウイスキーを飲むシチュエーションの提案を始めた。昨年には、ジャズレーベル「ブルーノート」とコラボCDを提案。さらには銀座でニッカウヰスキーが飲めるバーを紹介する小冊子を作り、銀座4丁目交差点近くの楽器店の店頭にて配布した。また、今年10月には、東京・青山の「ニッカ ブレンダーズ・バー」にて、バーで気軽にウイスキーを飲みながら読書を楽しむことを「バー読(どく)」と称して提案している。


ジャズレーベル「ブルーノート」とコラボCDと、銀座でニッカウヰスキーが飲めるバーを紹介する小冊子。


ウイスキーを飲みながら読書を楽しむことを「バー読(どく)」。

 さらに、同社のウイスキーの水割り瓶が隠れたヒットになっている。数量が前年の20%増で伸びている。「ブラックニッカ クリアブレンド&ウォーター」(300ml瓶、アルコール10%)と、「スーパーニッカ&ウォーター」(300ml瓶、同12%)。ともにウイスキーの仕込み水で割った本格的な水割り。

 飲食店では冷やした水割り瓶と氷入りグラスが提供され、お客が自分のペースでウイスキー水割りを楽しむことができる。手軽さと安定した濃さが支持されている。しかも、メニュー価格は500円前後。水割り2杯分でこの価格とリーズナブル。

 ハイボール扱い店にこの水割り瓶の推奨も始めた。ハイボールに親しむ若者が、水割りに手を出してくれるのか、気になる。

 
「ブラックニッカ クリアブレンド&ウォーター」(左)と、「スーパーニッカ&ウォーター」。

「ウイスキーのコアユーザーの飲み方はほとんどがロックです。ウイスキー本来の味わいを楽しんでいただける飲み方ですし、若い方にはウイスキーはロックがカッコイイというイメージもあるかもしれないですね。でも、ハイボール、水割り、ロックなどいろいろな飲み方ができるのが、ウイスキーの魅力の1つです。ジャズ、読書など肩肘はらずカッコ良くウイスキーを飲むシチュエーションを若い方々に提案していきたいですね」と、山根氏。

 ハイボールを契機に、若者をウイスキー文化へ向かわせる動きが始まっている。


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2009年10月28日取材


Page Top