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フードリンクレポート


単純作業のストレスや怪我の危険から開放。
大人気のたこ焼きを支える「マルチスライサーミニ」。

2010.9.18
全国に300以上の店舗を構え、今やたこ焼き業界最大手の「銀だこ」(株式会社ホットランド)。その「銀だこ」の全店舗に導入され、たこ焼きの全メニューに使われるネギをスライスするために使われているのが、株式会社ドリマックスの「マルチスライサーミニ」だ。従来品とは大きく異なるその機能性と安全性に、大幅な効率アップが実現したという。その効率アップの秘密について、現場、そして開発者にも話を聞いた。レポートは村田麻未。


株式会社ドリマックスの「マルチスライサーミニ」。

格段に効率アップした仕込み作業

 幅広い年齢層に根強い人気を誇る「銀だこ」。看板メニューである「たこ焼き」を始め、「ねぎたこ」、「チーズ明太子」「とろ〜りデミたま」などオリジナルメニューも充実。たい焼きなどのサイドメニューも好評だ。フランチャイズを含めた店舗展開は、全国のみならず海外へも広がっている。


「築地 銀だこ」築地本店。

 たこ焼きメニューの全品に使われている食材がネギ。平均的な店舗では一日平均で1ケース、約40本程度のネギを使用するという。ネギのスライスは、仕込みの中でも重要な作業の一つと言える。


ネギは全てのメニューに使う重要な材料。

「手で切っていた頃は、一日分のネギ約40本を用意するのに約1時間近くかかっていました。それが、このドリマックス社のマルチスライサーミニを導入してから、10〜15分で済むようになり、作業効率が格段にアップしました。」と語るのは、「銀だこ」を経営する株式会社ホットランド(以下ホットランド)の広報橋本氏。

「おまけに、作業中、指が刃に触れる機会が無くなり、手入れも簡単なため、怪我が無くなりました。ドリマックス社以外の機械を使ったこともありましたが、その時は刃が剥き出しになっていたため、ネギを最後まで切ろうとするとうっかり指が刃に触れて切れてしまったり、特殊な曲線を含むS字カーブの刃であるため、手入れの際にも危険が伴いました。でも、このドリマックス社のスライサーは、指が刃に触れることなく最後までネギが切れ、刃物自体が丸く平面なので、手入れもしやすく、スライサーによる怪我がなくなりました。」


「銀だこ」全店に設置されている「マルチスライサーミニ」。


手入れがしやすい平らな円盤状。

 そして、ネギの味にも変化があったというから驚きだ。「以前よりもネギらしい風味が増して、水っぽくならないので新鮮さが保たれるようになりました。」とのこと。


右の「ねぎだこ」(600円)にはトッピングにもネギを使用。左は「たこ焼き」(500円)。

 この秘密について、株式会社ドリマックス(以下、ドリマックス)代表取締役社長松本氏によれば、「このスライサーは、丸刃を回転させながら食材に負荷をかけずに切る、“超引き切り”と呼ばれる手法でスライスしています。1分間に6000回転する丸刃や特許技術を用いた設計により、超高速処理を実現しています。」


株式会社ドリマックス 代表取締役社長松本英司氏。


超高速回転することで超引き切りが実現する丸刃。

「その為、食材が潰されにくく切り口がきれいで、食材本来の旨みを逃さないのが特徴です。一方、他社の従来品は、曲線的なS字状の刃を使った“叩き切り”。その場合、食材の断面が潰れがちで、旨み成分が出やすく、その分新鮮な状態を保つことが難しくなります。汁が出るためネギの臭いが充満し、涙を流しながら切るというのが今までの常識でした。それに、従来の刃物は、叩き切ることで、消耗が格段に早くなってしまいます。「マルチスライサーミニ」の場合は、超高速回転する丸刃と黒い円盤が回転することで、超引き切りを実現しています。丸刃と円盤との間隔がネギの「厚み」になり、誰が使用しても常に一定の厚みを出すことが可能となるのです。安全性を確保するのは大前提。その上で効率アップや、鮮度・味の向上を図れる機能を追及しています。」


切り口鮮やかに、均一な厚みでスライスされたネギ。切り方で風味が格段に違ってくる。


長時間ネギを切り続けるストレスからの開放

 効率性アップの理由は、単に時間が短縮されるからだけに留まらない。1時間ネギを切り続けるというストレスからの開放という点も大きい。厨房内に漂うネギの匂いの中、1時間切り続けるのは楽ではない。ラーメン店などでは、この作業のためにアルバイト従業員が弱音を吐いて辞めてしまうケースもあるという。

「短時間で作業が終わり、きれいに切れているので、匂いもこれまでのように気になりません。それに、以前はうまく切れず、ネギの一部がつながって出てくることも多かったのですが、一つ一つきれいに切れるのでそれもなくなりました。現場では随分ストレスが減ったと思います。」とホットランド橋本氏。


片手で軽く押すだけでも簡単に切れていく。

 開発者でもあるドリマックス松本氏の「現場の方々の“やりたくない仕事”を少しでも減らせることができれば、と思い開発しました。そのために、誰にでも簡単に操作できるシンプルな作りにしています。」という思いが形になったスライサーなのだ。

 メンテナンスも簡単にできるようになっている。ドリマックスの松本氏によれば、「簡単に水洗いができますし、丸刃を手軽に研ぐことができるのも大きな魅力の一つです。専用の研ぎ器に入れ、簡単に研げます。従来品は刃が曲線的でしたので、砥石を使って少しずつ慎重に研いでいたため、それだけでひと苦労。慣れが必要な作業で、誰でもできる作業ではありませんでした。」


専用の研ぎ器に入れ、回すだけで研ぐことができる。


食材の無駄を抑え、誰でもできる作業にすることでコストダウン

 「このスライサーは、今や無くてはならない必需品です。」と語るのは、以前は店舗に立ち、現在は同社研修センターで社員のトレーニングに携わる森氏。「このスライサーが導入されて、作業が大変楽になり、とても嬉しかったのをよく覚えています。それに、誰でも簡単に操作できて、均一なスライスができるので、トレーニングの時間が減りました。」作業時間、トレーニング時間が減ることで、コストダウンにもつながっている。


ホットランドの研修センター「銀心」(銀座)


社員のトレーニングを担当している森氏。

 実際にこのスライサーを使ってネギを切る作業を見せてもらった。
 
 一度に2〜3本のネギを投入でき、軽く押しているだけであっという間に均等に切れていく。短くなったら、専用の器具で押し込めば、最後の最後まで切ることができ、ロスが出ない。臭いもさほど気にならず、厨房内は快適であった。


付属の専用器具(押し)で、最後の最後まで使い切ることができる。
 
 また、専用の「厚みゲージ」を使って刃と本体との間隔を変えれば、スライスの厚みを簡単に変えることができる。「銀だこ」では、たこ焼きの中に入れる具材用には3mm、トッピング用には1〜2mmと厚みを変えている。ドリマックスの松本氏によれば、「誰が使用しても常に一定の厚みを保つことができ、これは大きなメリットです。そのメリットを最大限に生かし、こうした厚みによってネギを使い分けることが可能となりました。」同じ食材であっても、厚み等の変化をつけて提供することで、商品に付加価値をつけることができ、従来は不可能であった商品の「差別化」を実現しているのだ。

 現場ではもはや手放せない存在になっている「マルチスライサーミニ」。使い終わったら、流しで簡単に水洗いでき、衛生的である。


水洗いも簡単。付属のブラシを使って残ったネギも落とす。

 15年程前、クライアントの要望を受け、すぐに手書きの設計図を書いてこのスライサーの開発をしたという松本氏。ありとあらゆるクライアントニーズに合わせた機器を開発してきた。他社で半年かけても開発できなかった機械を、わずか一週間足らずで開発した実績もあるという。その開発のスピードと柔軟性があってこそかもしれない。こうした現場の作業に即した機器を導入することで、効率アップとコストカットにつながる良い事例である。


株式会社ドリマックス

【取材・執筆】 村田 麻未(むらた あさみ) 2010年9月1日取材


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