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次に流行るお店

100%天然物を提供する唯一無二のジビエ専門店
「またぎ」
(東京・西麻布/ジビエ料理)

第284回 2009年9月15日

6月に入った阿達和正料理長はイタリアン出身。
「またぎ」は、2007年9月1日、神奈川県葉山町より移転してオープンした、本格的ジビエ料理の店。

 葉山で15年ほど営業してきたが、店主の大島衛氏によれば「当時からお客さんの7割ほどは東京から来られている人だった。東京の人は戻る時間を気にして、10時頃には帰ってしまうので、もう少しゆっくりしてもらうには、自分から東京に出て行こうと思った」というのが移転の理由である。

 場所は、都バス六本木6丁目停留所より西麻布方面に少し行って、路地を左手に折れたところにある。


入口。


店内。中央に縦長の大きな火鉢が設えてある。


個室にも火鉢が。

 メインの顧客の利便を考えた、移転であったことがわかる。

 店名の“またぎ”は狩猟者という意味だが、大島氏自ら鉄砲を撃ち猟をする。まさにまたぎの経営する店である。店内には動物の剥製、狩猟中の大島氏の写真などが飾られており、ジビエをいただくムードを高めている。


エントランス付近のディスプレイ。


狩猟する大島衛オーナーの写真が飾られている。


剥製が展示されている。

 料理は焼肉が中心。夏は鹿、冬は猪、熊、野鳥が狩猟の季節であるが、自ら撃ったり、狩猟仲間から仕入れたりした獣肉は、直ちに解体して自宅と店の冷凍庫にて−60℃以下で保存するから、実は年中提供できる肉が多い。

「ジビエというと、猟のシーズンでもある冬のものといったイメージが強くて、ウチも11月から3月までの冬の期間と、夏場では売り上げが全然違います。しかし、いちばん鹿が餌を豊富に取って太っている“夏鹿”と言われる、夏の鹿の旨さは格別なんです。ストックがあるから夏にスタミナを付けたい人は、猪だって食べられます。そこをアピールしていきたいですね」と、大島氏は ジビエに対する正しい知識が、「またぎ」を通して広まることを願っている。

 客単価は、夏は6000〜7000円、冬は1万2000円ほど。冬には鍋料理もよく出る。席数は30席で4人掛けの個室が2つある。顧客は場所柄、会社の役員やマスコミ関係者も多い。


炭を起こす。


網を置いて肉を焼く。

 素材は美味しい肉を提供するために、産地を厳選しており、鹿は北海道のエゾシカ、猪は長野産か静岡産、熊は北海道のヒグマしか使わない。鴨は長野産のマガモが90%で、カルガモ、コガモといった同じ陸鴨の仲間を使うこともある。キジ、タシギ、ヤマシギなどの野鳥は長野産、神奈川産、静岡産を使っている。


焼肉 シシロース(3680円)。

 今も葉山の近くの横須賀市内に住む大島氏は、毎朝三浦半島の佐島漁港の魚屋に寄って、その朝獲れた魚を仕入れて、その足で西麻布の店まで出勤する。なので、天然の獲れ立ての旬の魚がいつも味わえるのが、「またぎ」のもう一つの魅力だ。養殖魚は一切使わない。

 もちろん、海が時化てる時は漁船が出ないので魚は仕入れられないし、大漁ばかりでなく不漁の時もあるが、同店の刺身には鮮度の高い魚に特徴的な歯ごたえがあり、魚臭さが一切ない。この魚の味を目当てに来る常連も、増えているという。

 今の季節はイトヨリ、サワラ、タチウオ、サバあたりが旨い。

「ウチで出すのは100%天然物。春は山菜、夏は川魚、秋はキノコ、冬は肉で、山の恵みを東京の人に届けていきます」。


金目のあぶり(時価)。炭で炙ってポン酢で食べる。

 例えば、春に雪をかき分けて発芽し、成長してきたクレソンにはハウスで育てられた野菜にない深い味わいがある。春先に出す「クレソンのサラダ」は、注文した人が必ずと言っていいほどお代わりをするほどの人気メニューだ。

 山菜、キノコは専属の採り子がいて、毎日山に入って採れ立てを店に直送してくる。

 川魚はヤマメ、イワナ、イトウ、ニジマス、オショロコマなど北海道産のみを使い、放流している本州以南のものは使わないと徹底している。

 店の休みは日曜だが、大島氏は猟に出掛けるので不休なのだそうだ。

 お酒はワインが中心で、ワインのみ持参するのも可としている。1本3150円の持ち込み料を取る。冬は日本酒の骨酒も人気だ。

 今年6月には、新スタッフとしてイタリアンのシェフ出身の阿達和正料理長が加入した。大島氏の鉄砲の弟子である。大島氏の築きあげてきた和のテイストに、今後阿達氏の洋の素養がどう同店の味に新風を吹き込んでいくか、これからが楽しみだ。

 100%天然物にこだわる、唯一無二のジビエ専門店「またぎ」。野性味あふれるこのような店が誰にもつくれるわけではないが、ここまで徹底すれば根強いファンもついてくる。季節感のない人工の街、東京だからこそこのような店が求められる。

 夏場の集客が高まってくれば、無敵の店になるだろう。


【またぎ】
住所 東京都港区西麻布3-1-15 RFビル1F
電話番号 03-3796-3388
営業時間 18:00〜23:00
定休日 日曜
客席数 30席
客単価 1万円
目標月商
開店日 2007年9月1日
経営母体 大島衛
※取材当時の情報です。変更されている可能性がありますので訪問される場合は、店舗にご確認下さい。
長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ)   2009年8月26日取材

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