「炭団」は去る３月２０日にオープンした、ワタミの“焼肉居食屋”という新業態の店である。

　“居食屋”はワタミが開発した「時間、空間を楽しむ」新しいタイプの居酒屋業態であるが、そのコンセプトを引き継ぎつつ、焼肉を新しい形で楽しんでもらおうというのが、「炭団」の狙いである。ターゲットは２０代〜４０代男女。

内観


お座敷席

　ワタミは２００８年に１０００店を目標としているが、本当にブランドとして認知されている業態は、「和民」くらいといった現状からは、あと２年で今の約５６５店から倍近くまでと、店舗数を伸ばすのはなかなか難しい。そこで、「和民」に匹敵する強力な新規ブランド確立を急いでいるが、「炭団」の展開はその一環である。

　“焼肉居食屋”の形態からして、「炭団」は単に焼肉を食べる食事の場所の提供を、目指しているのではない。ドリンクメニューもフードと同じくらいの約１００種類そろえ、居酒屋としても充実した店になっている。

　また、肉も牛肉だけではなく、あらゆるニーズに対応するために、豚肉、鶏肉、ラムもメニューにそろえている。

　食の安全、安心に対する施策として、国産牛肉は個体識別番号まで明らかにした、トレーサビリティをきっちり取った、国産黒毛和牛と豪州産黒毛和牛を使っている。サラダなどに使う野菜は、ワタミ直営の農場でとれたものや、地元農家の協力で仕入れた有機野菜が主力となっている。

　手づくりのおいしさを届けるため、自社の集中仕込みセンターで機械をつかわず手作業でつくったキムチ、ナムルなどを提供。ご飯は庄内産「ひとめぼれ」を使い、１時間ごとに家庭用サイズの釜で小炊きにして、常に炊きたてを提供するこだわりを見せている。

　鮮度を重視したメニューでは、市場から当日に仕入れたものを出す、レバー刺し、センマイ刺しも特徴的だ。

無煙ロースター

　肉を炭火で焼く無煙ロースターは、ガス式のロースターを改造した特注品だという。

　　店舗デザインは神谷利徳氏率いる神谷デザイン事務所で、得意の古民家風のオリエンタルモダンの空間が構築されている。バックグラウンド・ミュージックはレゲエが採用されている。


雑賀秀二店長

　「ワタミとしては初めての業態ですが、特にコンサルタントは入れず、お肉屋さんに肉の切り方について勉強に行ったり、居酒屋のノウハウをもとに１からつくっています。肉質やタレ、炭火を置く個数などは、お客さんの意見を聞きながら、日々改善しています」と雑賀秀二店長は語る。

　「炭団」は大衆店でありながらも、牛肉は黒毛和牛を使っており、実際に試食してみると、軟らかくて臭みがなく、旨みもしっかりしていて、肉の品質自体と値段を比べてみると、非常にリーズナブルな感のする店である。焼肉店として考えても、値段以上の満足感が得られるように企画されている。

　都心立地の御茶ノ水駅前店に続いて、４月１４日に住宅地立地で東急田園都市線沿線の青葉台駅前店（横浜市青葉区）、４月２４日に郊外立地で京急本線沿線の京急杉田店を相次いでオープンしている。これら先行する立地の異なる店舗で、メニューやオペレーションを検証し、改善すべきところは改善して、年内に２０店の出店を目指す。ちなみに、次のメニュー改定は６月を予定している。

　御茶ノ水駅前店の客単価は３０００円ほどだが、今のところ目標月商の１１５０万円はクリアーできるペースだそうだ。おいしい黒毛和牛の肉を安く提供しているところと、ビジネス、カップル、ファミリーと幅広く対応できる、豊富なメニューが奏功しているようである。

ワタミは自社農場で、「短角牛」という和種の赤身でアミノ酸値が高い牛を、有機飼料で肥育しはじめており、５月中には約３５０頭にまで増える。近未来的には、自社生産の安全かつ安心な牛肉を食せる店として、ユニークな地位を占めるのではないだろうか。

　ＢＳＥ以来、縮小気味の焼肉市場ではあるが、「焼肉屋のイメージを変えたい」（雑賀店長）と、焼肉再建をスタッフは胸に秘め、サービス向上に努めている。

【焼肉居食屋「炭団」御茶ノ水駅前店】

住所	東京都千代田区神田駿河台２−１−１７
電話番号	０３−５２８３−３４６３
営業時間	１７：００〜翌３：００ 金・祝前１７：００〜翌５：００、土日祝１６：００〜翌３：００
定休日	年中無休
客席数	７２席
客単価	３０００円（想定）
目標月商	１１５０万円（想定）
経営母体	ワタミ株式会社
Web Site	http://www.watami.co.jp/

【焼肉居食屋「炭団」青葉台駅前店】

住所	神奈川県横浜市青葉区青葉台２−９−１６
電話番号	０４５−９８９−０４２７

【焼肉居食屋「炭団」京急杉田店】

住所	神奈川県横浜市磯子区杉田１−１３−３　フードプラザマルヤマ２階
電話番号	０４５−７７８−４１２９