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サワー発祥のもつ焼の名店がのれんの承継目指し新店展開
「五反田 もつ焼き ばん」(東京・五反田/もつ焼)

第149回 2006年9月1日

「ばん」のれん
 五反田駅東口の駅前に7月7日にオープンした「もつ焼き ばん」は、かつて1958年より中目黒にあり、2004年末に再開発によって惜しまれつつ、半世紀近くの歴史を閉じた、もつ焼の名店「ばん」の系譜を引く店だ。

「ばん」ののれんはその後、創業者・小杉正氏の弟にあたる、小杉潔氏が目黒区の祐天寺で05年3月に復活させて、熱心なファンを喜ばせた。



 そして、今年7月に「ばん」ののれんを掲げた新店が、五反田に登場したのである。五反田の店は、ポイントツーフードマネジメントという会社が母体になっているが、同社のの社長である松本勝氏は、小杉正氏の義理の息子にあたる。そうした絆で、五反田「ばん」は、小杉兄弟の技術指導を受け、伝統のもつ焼の味を伝えている。

 首都圏で「ピザーラ」7店、「牛角」7店、「土間土間」1店、「ニューズデリ」1店と、FC店を16店展開している。また、直営でイタリアンの店「シュエシュエ」を青山、渋谷、二子玉川と3店展開するなど、グループで外食での実績を積み重ねてきた。

 今回の「ばん」の出店では、もつ焼ブームを背景に、すでに高齢となった小杉兄弟の技術承継や、多くのファンに愛されてきた「ばん」の味を守っていくことも、視野に入れている。


もつ各種メニュー


もつ焼き

「先代の考え方を受け継いで、安くておいしいものを食べてもらって、気持ちよく酔える居心地のいい店を目指しています。肉をさばくカットのやり方、串の刺し方はとても難しいのですが、指導を受けながら技術を向上させていっています」とポイントツーフードマネジメント・レストランオペレーション事業部の松本進ブランドマネージャー。

 メニューは基本的に祐天寺の店と変わらないが、五反田の店では幅を持たせるために、「唐揚げ」など幾つかの揚げ物を加えている。もつ焼1本100円からのメニューは、サラリーマンが毎日でも気軽に寄れる値段設定である。

 食材のもつは、小杉兄弟が開発した品川の食肉市場の仕入れ先から、毎朝新鮮な肉を調達しており、「レバ刺し」には定評がある。「おっぱい」、「コブクロ」のような他店ではなかなか食べられない部位も出すので、それらを楽しみに来店する食通もいる。

とんび豆腐(450円)

 また、「とんび豆腐」(450円)は、豚の尾の肉と、豆腐を煮込んだ激辛のメニューで、「ばん」の名物として好評である。   

 ところで中目黒「ばん」は、「サワー」発祥の店として知られており、当時焼酎を炭酸で割ったドリンクは「炭酎(タンチュウ)」と呼んでいたが、新たに海外のカクテルをヒントに、「サワー」と命名したところ、人気となって全国にこの名称が広がった。


「レモンサワー」(中身200円、炭酸100円、レモン100円)


“「サワー」発祥の地”

 五反田「ばん」では、当時のスタイルで元祖サワーを楽しむことができる。顧客は200円で焼酎、100円で炭酸を別途注文し、自分で焼酎を炭酸で割って飲む。「レモンサワー」にしたい時には、100円でレモンを注文し、搾り器で自分でレモン汁を搾って入れる。

 内装は、かつての中目黒「ばん」の雰囲気を再現した、懐かしい感じに仕上がっているが、店内に掲げられている味わいのあるもつ焼屋の絵は、中目黒の「ばん」にゆかりの深い常連が、往年の店の風景を活写したものである。

 アルバイトに団塊世代を中心にした、50代、60代を積極的に登用しているのも同店の特徴で、社会経験豊富なアクティブシニア層に雇用機会を提供し、活気と深みのある店を目指している。


カウンター上木版画(常連さん制作)


カウンター席


テーブル席

 宣伝は駅前でチラシを配ることくらいで、大々的な展開はしていないが、すでに地元で働くサラリーマン中心に、平日は1.5回転ほどの顧客を集めている。土曜日はやや弱く、23歳くらいの若手サラリーマンや大学生がコアの顧客となっている。「ばん」の看板を見て、中目黒や祐天寺の店を知っている人が、1日に1組くらいは入ってくるという。このあたりは伝統と知名度がある、のれんの強みがあり、じわじわと人気が高まって地元に定着していく店となっていくのだろう。


外観
【五反田 もつ焼き ばん】
住所 東京都品川区東五反田1−12−9 イルヴァーレ五反田ビル1F
電話番号 03−3473−8080
営業時間 17:00〜23:00
定休日 日曜・祝日
客席数 カウンター18席 テーブル16席
客単価 2000円
経営母体 株式会社ポイントツーフードマネジメント
長浜淳之介 2006年7月25日取材

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