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次に流行るお店

名だたる文豪が愛した老舗名店が、銀座に復活
「レストラン ローマイヤ」
(東京・銀座/ドイツ料理レストラン)

第171回 2007年3月30日

ローマイヤハム盛り合わせ(1500円)
 日本にロースハムを広めたことで知られるローマイヤの創業者であるアウグスト・ローマイヤ氏は、ドイツ生まれの食肉加工技術者だった。第一次大戦中に捕虜となり日本の地を踏んだローマイヤ氏は、終戦後の1921年、東京は大崎に食肉加工工場を設立。これが合資会社ローマイヤ・ソーセージ製造所、現在のローマイヤ株式会社の前身である。

 ローマイヤ氏が銀座にレストランを開いたのは1925年(大正14年)のこと。1階にハムやソーセージの直売所、地下1階に客席。谷崎潤一郎の名作「細雪」にも登場する「レストラン ローマイヤ」は、創業以来、銀座に集う人々を魅了し続けてきた。

 その後、ローマイヤ氏の子息たちにゆだねられたレストランと加工工場は長い歴史を重ねてきた。現在は品川区西五反田に本社を構えるローマイヤ株式会社は、熟練の技術を活かした製法で食肉加工業を続けている。一方、銀座のレストランはビルの改装工事のため1991年を境に休業するも、翌92年に日本橋に新店舗を開店。そして06年11月、銀座の街にレストラン ローマイヤが帰ってきた。

 新生・レストラン ローマイヤの運営を手がけるのは、レストラン経営で実績のある株式会社スターダイニングシステム。ローマイヤ株式会社の親会社である食肉卸売業、スターゼン株式会社のグループ企業だ。

入口


店内


店内

 ドイツの山荘をモチーフにした、ウッディで温かみのある店内。アンティークな調度品や暖炉が落ち着いた雰囲気を演出する。店奥にはバーカウンターも設けられている。リニューアルオープンしたのは以前の所在地とは別の場所だが、かつてのローマイヤを知らない人も、古きよき時代の格調を感じることができるだろう。

 メニューは創業者・ローマイヤ氏の故郷、ドイツの伝統料理が中心。日本でも馴染み深い「本場ドイツ製法のザワークラウト」(480円)、塩漬けの豚スネ肉を煮込んだ「アイスバイン」(2〜3人前・3800円)、豚スネ肉のロースト「シュバイネハクセ」(3980円)のほか、谷崎の小説「細雪」にも登場した「ウィンナーシュニッツェル(仔牛のカツレツ)」(1980円)など、時代を超えてなお人気のメニューが揃う。

 ドイツ料理に欠かせないソーセージやハムなどの加工肉は、言うまでもなくローマイヤ株式会社が製造している。新鮮な食材と、伝統の製法と徹底した品質管理から生み出されるローマイヤの製品を使い、提供される本格的なドイツの味。古くからのローマイヤファンはもちろん、舌の肥えた若い食通も、納得すること間違いなしだ。

 最近では創業当時の人気メニューを当時のレシピを元に復刻するという、オールドファンにはたまらない試みも展開した。ロースハムを焼いた「グリルドハム」(1780円)は、日本で初めてロースハムを製造したローマイヤならではの味わい。豚のスペアリブをローマイヤ特性のタレで焼き上げた「ポークチャップ」(1400円)、「復刻 ローマイヤ創業時のプリン」(680円)など、色あせない定番料理が復活を果たした。


ポークチャップ(1400円)


ローマイヤ風コロッケ(980円)

 ドリンクの人気メニューにも、「らしさ」が滲む。フランチスカーナーヘフェヴァイス(800円)、ビットブルガープレミアム(800円)といったドイツビール、ドイツのジン「シュナップス」(600円)、そのほかドイツワインなど、料理にベストマッチのドリンクが好まれるようだ。
 変わらぬ味が楽しめるのは最高の贅沢ではある。しかし「それを頑なに守るだけでは意味がない」と、島憲一店長は語る。
「古いレシピにだけこだわり続けるのでは進歩がないし、かと言って斬新なものを追求し続けるだけでもダメ。確かな伝統をベースに、新しい要素をいかに組み込んでいけるかというところがポイントになるでしょう」

 オールドファンだけでなく、新しい世代にもローマイヤの味を楽しんでほしい。島店長とスタッフが目指すのは、伝統と斬新さの融合。絶妙なバランスを求め、試行錯誤は続く。

 レストラン ローマイヤの自慢は料理だけではない。スタッフ同士のチームワークのよさと、彼らが創り出す明るく、気さくな雰囲気。由緒ある名を背負いながら、敷居の高さやとっつき辛さは微塵も感じられない。それでいて、料理そっちのけで大騒ぎが繰り広げられるような騒々しさとも無縁。最高の料理と、温かな雰囲気、そして、そこはかとなく漂う歴史の重みを、静かに楽しむことのできる環境が、この店にはある。

「ここで食事をすることを楽しみにしてくれるお客さんを、今以上に増やしていきたい。そして、『食を楽しむ』という、日本人にはあまり馴染みのない素晴らしい文化を発信する拠点を作りたい。それが現在の目標です」

 島店長の理想が現実になるとき、今はなきアウグスト・ローマイヤ氏の夢も結実するのかもしれない。


島店長(前列右端)とスタッフ


【レストラン ローマイヤ】
住所 東京都中央区銀座8-8-5 太陽ビル2F
電話番号 03-6215-6215
営業時間 ランチ 11:30〜14:30(L.O.14:00) 
ディナー 17:00〜23:00(L.O.22:00)
定休日
客席数 83席
客単価 5000円
経営母体 株式会社スターダイニングシステム
長浜淳之介 2007年3月19日取材

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