次に流行るお店
シンプルだがやみつきになる、「本物のホルモン」
「盛岡五郎」
(東京・新宿/ホルモン鍋)
第177回 2007年5月25日
ホルモン鍋(味噌鍋950円)、コラーゲンボール入り
新宿3丁目、大小の飲食店が立ち並ぶ一角。年季の入ったビルの、少々幅の狭い階段を上がった先に突然現れるのが、巨大な業務用冷蔵庫の扉。この無骨な扉の向こう側にあるのが、3月18日にオープンした「ホルモン鍋 盛岡五郎」だ。
店内は昭和の居酒屋をほうふつとさせるスタイル。座席数は26席あり、テーブル席は臨席との間に程よい間隔が設けられ、ゆったりした印象がある。店内のあちこちにはレトロなブリキ看板やポスターを模したモノトーンの壁絵が飾られ、古きよき時代のざっくばらんな雰囲気を演出する。
入口
テーブル席
カウンター
メニュー表
運営母体となるのは(株)五郎。「日本再生酒場」「新宿ホルモン」などの経営で知られる「い志井グループ」のフランチャイジーとして、素材、ノウハウなどの提供を受ける。い志井グループと言えば厳選された新鮮な内臓肉を使用したメニューが売り物だが、盛岡五郎もその例に漏れず、上質のホルモンをふんだんに使った料理が中心。メニューはダンボール紙に張られた2枚のみと、その構成は至ってシンプルで少数精鋭だ。奇をてらうことなく、素材の良さと気の利いたひと手間で勝負する。
「目標は、50年間同じメニューをお出しし続けることです。『あの料理が食べたいから盛岡五郎に行く』というお客様が増えてくだされば嬉しいですね」
店長を務める副田誠氏の言葉からも、メニューの方向性への自信がうかがえる。
看板メニューは店名にも冠せられた「ホルモン鍋(各950円)」だ。味は味噌、塩、カレーの3種類から選ぶことができる。ホルモン鍋は博多名物として耳にすることが多いが、盛岡五郎が参考にしたのは岩手・盛岡風のホルモン鍋。(株)五郎の遠藤清社長が盛岡で出会ったホルモン鍋の味わいに感銘を受けたのがきっかけという。興味深いのがトッピングの「コラーゲンボール(1個75円)」。コラーゲンを固めた煮こごりのようなボールを鍋に入れるのだが、美肌効果が期待できるということもあって、女性客からは絶大な支持を受けているようだ。シメでいただく雑炊用の米は、炊いたあとに乾燥させた「乾燥米(320円)」を使用。雑炊を作る際に米の余分な水分が出ないため、サラサラの食感を堪能できるそうだ。
い志井グループの真骨頂、新鮮な内臓肉の刺身も豊富に揃う。「牛胃袋刺し(430円)」は、牛のセンマイを丹念に下処理した一品。
「センマイには薄皮があるのでどうしても臭みが出ます。従来は辛味噌などで臭みを消しながら食べることが多いかと思いますが、うちではこの薄皮をきれいに処理しますので臭みが出ません。ですから素材の持つ味を活かしつつ、さっぱりとした塩味で召し上がっていただけます」
ホルモン鍋
コラーゲンボール(1個75円)
牛胃袋刺し(430円)
五郎サラダ(525円)
徹底した品質管理と、ひと手間・ひと工夫を加えた調理法が、シンプルだが味わい深いメニュー構成を支えている。
フードメニュー同様、ドリンクメニューもシンプル。銘柄は多くないが、ビール、日本酒、焼酎、ワインのほか、紹興酒、梅酒と、年齢層や性別を問わず対応できそうな幅広い品揃えを心がけている。「健康焼酎」と銘打った「ウコン杯(525円)」「自家製こぶ酎(490円)」や、特殊な冷蔵庫で冷却することで、瓶からグラスに注いだとたんにシャーベット状になる「すっきり梅酒(650円)」など、ここにも来客者にとって嬉しいひとひねりが加えられている。
すっきり梅酒(650円)
来店前には予約しておいたほうがベター。副田店長いわく、「狭くて急な階段を登っていただいて、『満席です』では申し訳ないですから」とのこと。特にコースメニューは設けていないが、「お任せ」でのオーダーも可能だ。鍋の種類だけ伝えれば、人数や食事の進み具合を見て品数を調整してくれる。全体的にリーズナブルなので、会計時に驚くようなことはなさそう。「逆に、『こんなに安いの?』と驚かれるお客様はいらっしゃいますけどね」と、店長は苦笑する。
食事の最後には、お茶とかりんとうを提供するという心憎いサービスも。派手さはない。しかし、ちょっとした気配りとスタッフの笑顔と元気が心に沁みる。
「看板も出していませんし、入り口は冷蔵庫の扉。ちょっと怪しい雰囲気ですが、一度店内に入っていただければ、必ず楽しんでいただけるはずです。『怪しい、不安』から『楽しい、おいしい』へ、このギャップを感じていただければ嬉しいです」と店長。
極上のホルモンと、充実の時間を味わいたければ、意を決して巨大な冷蔵庫の扉を開いてみるべきだろう。
副田店長
【ホルモン鍋 盛岡五郎】
住所 | 東京都新宿区新宿3-7-7 十字屋ビル2階 |
電話番号 | 03-3356-1656(要予約) |
営業時間 | 月〜土 18:00〜翌3:00 日祝 17:00〜24:00 |
定休日 | なし |
客席数 | 26席 |
客単価 | 3000円 |
経営母体 | 株式会社五郎 |
長浜淳之介 2007年5月16日取材